※2023年9月19日17時22分更新
原油、WTI、ブレント、サウジアラビア、中国、サウジアラムコ、FRB、石油在庫、逆ざや - トーキングポイント



中国経済の見通しや中央銀行の金融引き締め政策に懸念があるにもかかわらず、ニューヨーク原油先物相場は18日、10カ月ぶりの高値を更新した。とはいえ、基本的な市場構造は今のところ変わっていないようだ。ブレント原油先物は1バレル=94.95ドル、ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油先物は1バレル=91.36ドルを付ける場面があった。
カナダのカルガリーで18日に開催された第24回世界石油会議で、サウジアラビアのアブドルアジズ・ビン・サルマン・エネルギー相は、今後の中国の需要について、「これは根本的な問題であり、まだ判断がつかない」との見解を示した。
世界第2位の経済大国である中国は、パンデミック(世界的大流行)から脱却し、景気回復に躍起になっているが、思うように回復が進展していないのが実情だ。サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコと米エネルギー情報局(IEA)は最近になって、世界の石油需要予測を引き下げた。
高インフレを抑制するため、多くの主要中央銀行は金融引き締め政策をとっており、これが現在の原油価格の値動きにも影響している。引き締め政策により、世界経済の成長が鈍化し、石油需要が下振れするとの懸念がくすぶっている。
先週、欧州中央銀行(ECB)は政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げて4.00%とし、経済成長見通しを引き下げた。
米連邦準備制度理事会(FRB)は20日に米連邦公開市場委員会(FOMC)会合を開くが、先週金曜の金融政策決定会合での日銀の決定同様、金利は据え置かれると予想されている。
一方、同じく20日に開催される金融政策委員会(MPC)でイングランド銀行(BOE、中央銀行)は、政策金利を25bp引き上げて5.50%にすると見られている。中央銀行が市場に与える影響について知りたい方は、下のバナーをクリックしてください。



こうした状況にもかかわらず、原油価格は上昇し続けている。原油市場の需給の動きを示す指標として市場参加者がよく活用しているのが、逆ざや(バックワーデーション)と順ざや(コンタンゴ)である。
バックワーデーションは、決済に最も近い期近の先物取引が、その後に決済される先物取引よりも割高な場合に発生する。これは、待ち時間が発生するよりも、即時の受け渡しを希望し、そのために高い金額を支払ってもよいという市場の意思を浮き彫りにしている。
トレーダーの間では、これを満期日の異なる先物契約間の「タイムスプレッド」と呼ぶこともある。
どの限月に注目するかは人それぞれだが、最も満期日の近い期近物2つを見ると、このところバックワーデーションが加速している。この状態が続けば、原油価格は上昇しているにもかかわらず、需要の堅調ぶりが示されることになる。
きょう19日に発表される米石油協会(API)と明日20日のEIAの石油在庫統計が、市場の需給状況についてさらなる手掛かりを与えてくれるかもしれない。
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WTI原油先物とバックワーデーション
資料:TradingView
--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・マッカーシー著
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