需給引き締まりとの思惑から、原油&天然ガス価格が上昇している。このような中、将来の供給量を左右するリグ稼働数が公表されたが、今後の原油及び天然ガス価格の見通しとは



サマリー
- 需給引き締まりが原油&天然ガス価格をサポート
- 採掘装置の稼働数が減少
- 原油&天然ガス価格の見通し
需給引き締まりが価格をサポート
WTI原油価格が上昇している。代替エネルギーである天然ガス価格も上昇している。国際エネルギー機関(IEA)の月報にて、8月の需要が堅調である見通しを示したことや、石油輸出国機構(OPEC)の月報にて、今四半期に石油市場が大幅な供給不足に陥る見通しを示す等、原油の需給が引き締まるとの観測が高まっている。天然ガスは、オーストラリアでの液化天然ガス施設での労働者ストライキの懸念が高まっており、供給リスクが意識され、価格が上昇している。
原油需給に対する思惑が原油価格をサポートする中、Baker Hughes社から原油や天然ガスを採掘するための装置(米国リグ)の稼働数が公表された。リグ稼働数が増加している時は、将来の原油や天然ガスの供給増となり、需給が緩むとの観測から価格の低下要因となりうる。一方、リグ稼働数が減少している時は、将来の原油や天然ガスの供給増となり、需給引き締まりとの観測から価格の上昇要因となる。前週と比べて、原油のリグ稼働数は横ばい、天然ガスのリグ稼働数は減少した。年初来、原油及び天然ガスのリグ稼働数は、緩やかな減少傾向にあり、原油及び天然ガスの供給が今後減少し、価格が上昇する可能性がある。

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。
原油価格見通し
WTI原油価格は、一時4月12日高値83.49ドル(1バレル当たり)を突破したものの、その後反落し、現在は83ドル前後で推移している。テクニカル面では、RSI及びMACDにて上昇の勢いが衰えつつあることを示唆する「弱気の乖離(ダイバージェンス)」が示現している。一方、20日指数移動平均線が200日指数移動平均線を上抜ける「ゴールデンクロス」が成立している。加えて、50日指数移動平均線が200日指数移動平均線を上抜ける寸前であり、テクニカル面では強気シグナルが点灯している。
更に、原油の需給が引き締まりつつある中、重荷であったFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ終了が視野に入り、昨年11月から今年6月にかけての原油価格の値動きに基づくフィボナッチリトレースメント78.6%水準87.98ドルへの上昇が視野に入る。
一方、海外市場参加者が休暇シーズンに入り、原油価格の値動きが激しくなる可能性がある。原油価格が下落した場合、20日指数移動平均線(現在80.36ドル)でサポートされることを見込む。
WTI原油価格日足チャート

変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 13% | 0% | 4% |
週次 | 7% | -5% | -1% |
資料:Trading View
天然ガス価格見通し
天然ガス価格(NG1)は、一時6月後半以降のレンジ相場の上限2.757―2.793ドル(MMBtu当たり)を上方ブレイクしたものの、その後反落した。しかしながら、レンジ上限で下げ止まり、2.757―2.793ドルがサポート転換したことが確認できる。また、RSIは50を超え、強気モメンタムを維持している。MACDラインもシグナルラインを上抜け、強気の「ゴールデンクロス」が成立している。天然ガスの需給引き締まりに加え、代替エネルギーである原油価格の上昇を見込む中、3月高値3.03レベルへの上昇が視野に入る。
一方、休暇シーズンに伴い市場参加者が少なくなり、天然ガス価格が値動きが激しくなる可能性がある。天然ガス価格が下落した場合、引き続き2.757―2.793ドルでサポートされるかに注目。
天然ガス価格(NG1)日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著