中銀ウィークが終了。日銀のYCC修正というサプライズがあったものの、主要中央銀行の金融緩和/利上げ停止が視野入る結果であった。ヘッジファンドの原油・天然ガス価格の見通しに変化が見られる。WTI原油価格、天然ガス価格の見通しは?



サマリー
- 主要中銀の金融緩和/利上げ停止が視野
- ヘッジファンドは原油・天然ガスに対して見通しを強気に転じつつある
- WTI原油、天然ガス価格の見通し
中銀ウィークが終了
日米欧の中央銀行が金融政策決定会合を開催する中銀ウィークが終了した。日本銀行はYCC修正を決定した一方、当面の金融緩和環境維持を示唆する結果であった。FRB(米連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)は(近い将来の)利上げ停止を示唆した。日米欧の中央銀行が金融緩和/利上げ停止が視野に入っていることは、原油価格にとってプラスである。中央銀行の金融緩和は、世界景気の減速懸念を和らげ、原油需要が増加するとの思惑が働き、原油価格にプラスに働く傾向がある。
このような中、先物市場の一大プレイヤーであるヘッジファンドは、弱気であった原油や天然ガスに対する見通しを変化させつつある。
原油・天然ガス先物市場におけるヘッジファンドの動向
各国中央銀行の金融引き締め終了が近いとの見方が強まったことから、資源価格の動向に大きな影響を持つヘッジファンド等(投機筋)は、WTI原油先物のショートポジション(原油先物の売り持ち)を削減し、ネットロングポジション(ロング―ショート)を増やしている(原油価格の上昇要因)。ショートポジションを削減していることは、原油価格の先行きに対して弱気から中立、もしくは強気に転じているヘッジファンドが増加していることを示唆している。ただし、ネットロングポジションの水準は過去と比べて低く、原油価格の先行きに一段と強気に転じるにつれ、一段とネットロングポジションを積み上げ、原油価格が上昇する可能性がある。
天然ガス先物市場においても、ヘッジファンドは見通しを弱気から転換しつつある。依然として、ネットショートポジション(ロング―ショート)で天然ガス価格の先行きに弱気であるものの、ショートポジション(天然ガス先物売り持ち)の削減が進み、ネットショートの水準が縮小している。これは、一部のヘッジファンド等が天然ガス価格の先行きに対して、弱気から中立、強気に転じていることを示唆している。しかしながら、依然として大幅なネットショートであり、一段と天然ガス価格の先行きに強気に転じ、ネットショートポジションを削減するにつれ、天然ガス価格が上昇する可能性がある。

資料:BloombergよりDailyFXが作成。
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -4% | -8% | -7% |
週次 | -8% | 0% | -3% |
原油価格見通し
WTI原油価格は、6月後半に67ドル台まで下落後反転し、4月以来初めて80ドル台(1バレル当たり)に上昇した。MACDラインは上向きかつ、シグナルラインを上回っており、原油価格上昇の勢いは衰えていない。
テクニカル面での強気シグナルに加え、
- 日米欧の中央銀行による金融緩和/利上げ終了が近い
- 原油の一大消費国である中国の景気刺激策の期待感が高まっている
- ロシアやサウジが原油減産や価格安定に向けた協調姿勢を示している
を背景に、原油先物価格の一段高が視野に入る。昨年12月以降のレジスタンスである83.49ドルを上抜けると、原油価格の上昇圧力が一段と強まることを見込む。
WTI原油価格日足チャート

資料:Trading View
天然ガス価格見通し
中立パターンである「対称三角形(シンメトリカルトライアングル)」パターンを形成している。当面はパターン内で推移する可能性があり、テクニカル面では中立である。しかしながら、主要中央銀行の金融引き締め終了が近付く中、シンメトリカルトライアングルパターンの上方トレンドラインを上抜け、4月以降の緩やかな上昇トレンドの再開を見込む。トレンドラインを上方ブレイクした場合、3月高値3.03ドルが視野に入る。
一方、天然ガス価格がシンメトリカルトライアングルパターンの下方トレンドラインを下抜けた場合、6月21日安値2.448レベルへの下落が視野に入る。
天然ガス価格(NG1)日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著