中国不動産大手、中国恒大集団が米国で破産申請を行った。中国では不動産セクターの苦境が鮮明になっているが、グローバルな金融市場に影響が波及する可能性がある。このような中、投資家心理を示すボラティリティ指数(VIX指数)及びS&P500指数の見通しとは



サマリー
- 中国恒大集団が破産申請
- 同じく不動産大手碧桂園も経営問題が表面化しており、中国不動産市場の苦境が鮮明
- 投資家心理の悪化、VIX指数上昇の可能性
- VIX指数と逆の動きをする傾向のあるS&P500の今後の見通し
チャイナショック?
中国の不動産開発会社、中国恒大集団が米国で破産申請を行った。米連邦破産法15条(チャプター15)の適用である。中国恒大集団は、巨額の債務を抱えてデフォルト(債務不履行)に陥っていた。中国では、同じく不動産大手碧桂園(カントリー・ガーデン)も経営問題が表面化している。碧桂園は、ドル建て社債の利払いが遅延しており、来月初旬までに支払いができなかった場合、デフォルトになる。中国不動産大手の経営危機が相次いで表面する中、中国恒大集団・碧桂園で問題がとどまるのか、それとも他の不動産セクターの企業に問題が飛び火していくかが、グローバルな金融市場にとって重要であろう。大手格付け会社S&P社は、碧桂園の苦境は中国の脆弱な不動産市場にとってストレステストであり、連鎖を引き起こす可能性に言及している。
中国では、主要70都市の新築住宅価格が16日に公表されたが、前月比では全体の70%にあたる49都市が前月比で価格が下落しており、不動産市況の苦境が鮮明になっている。6月と比べ、前月比で下落した都市が11都市増加した。中国当局は、低迷する景気・不動産セクターのテコ入れのための政策を打ち出している。中国の中央銀行に相当する人民銀行(PBOC)は、15日に1年物の中期貸出制度金利(MLF)を市場予想に反して引き下げた。17日には、中国国務院が国内の消費拡大と民間部門の支援を約束した。しかしながら、具体的な詳細については言及せず、大規模な景気刺激策、不動産市場の支援策は依然として打ち出されていない。そのため、不動産市場が急回復することは見込みづらく、今後も中国不動産企業の経営問題が明らかになる可能性があり、グローバルな金融市場への影響を注視する必要がある。グローバルな金融市場への影響、投資家心理を示す指標に米国S&P500指数オプションから算出されるボラティリティ指数(VIX指数)がある。
VIX指数の見通し
VIX指数の上昇は、投資家の不安心理が高まっていることを意味する。8月に入り、米国株(S&P500指数)が軟調に推移する中、VIX指数は17.9ポイントまで上昇、投資家の不安心理が高まっている。しかしながら、現在のVIX指数の水準は依然として低い水準であり、3月の金融不安時は26.5ポイントまで上昇、一段と投資家の不安心理が高まっていた。投資家心理が改善した場合はVIX指数が再度低下する可能性があるものの、中国不動産大手の更なる破産の可能性が高まった場合、グローバルな金融市場に動揺が走り、投資家心理が一段と悪化する可能性がある。また、現在はFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に対する不透明感が高まっている。来週は金融市場を揺るがすことの多いジャクソンホール会議(主要中銀トップが集まる会議)の開催を控えており、VIX指数が一段と上昇する展開を想定しておく必要があろう。

資料:BloombergよりDailyFXが作成。
S&P500指数の見通し
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 2% | 2% | 2% |
週次 | 11% | -14% | -1% |
VIX指数とS&P500は逆の動きをする傾向があり、VIX指数が上昇、投資家心理が悪化する局面では、S&P500指数は下落する可能性が高い。一方、FRBの利上げ終了観測が高まる等、VIX指数が低下した場合、S&P500指数が上昇することが見込まれる。
S&P500指数は、FRBの金融政策不透明感、米国債の需給悪化等を背景とした米国債利回りの上昇を受けて下落している。7月10日安値4,390レベルを下方ブレイクし、5月中旬以降の連続した高値・安値の切り上がりが途絶え、上昇トレンドの終了が明確になっている(ダウ理論)。MACDラインは下向きかつシグナルラインを下回っており、S&P500の下落の勢いは衰えていない。テクニカル面では、S&P500指数の弱気シグナルが点灯している。
更にジャクソンホール会議を控え、中国不動産セクターを巡る不確実性が高まる中、S&P500指数の更なる下落が視野に入る。3月中旬から7月末までのS&P500指数の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント38.2%水準4,302レベルへ下落する可能性がある。
S&P500日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著