中央銀行の政策金利の利上げ動向に関する概要:
- コモディティ通貨(鉱物資源を主に輸出している国の通貨)の各国中央銀行は、次回会合で少なくとも0.5%の利上げを実施すると予測されている
- BOC(カナダ中銀)はFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げのペースに合わせて、7月に0.75%の利上げを実施すると予測されている
- 個人トレーダーのポジションにおいて、豪ドル/米ドルのレートは弱気バイアス、ニュージーランドドル/米ドルのレートは中立、米ドル/カナダドルのレートは弱気バイアスがかかっている可能性がある
コモディティ価格の下落は、政策金利の利上げにはあまり重要ではない
この記事では、BOC(カナダ中銀)、RBA(豪中銀)、RBNZ(ニュージーランド中銀)の金利マーケットについて検証していきます。ここ数週間で銅、石油、小麦などのコモディティ価格が下落したにもかかわらず、主要な中央銀行は今後数カ月間で、金利を急速に引き上げるのではないかと予測されています。BOC、RBA、RBNZ は、7月に政策金利を少なくとも0.5%引き上げる可能性があります。
中央銀行の動向について詳しくは、DailyFX 中央銀行カレンダーをご覧ください。



BOC が0.75%の政策金利利上げをおこなう可能性は?
生活費の急激な上昇を抑えるためのBOCによる強力な措置にもかかわらず、カナダでは物価上昇圧力が高まり続けています。BOCの6月政策声明では「2%のインフレ目標を達成するために必要であれば、より強力な措置を用意する」と述べられています。そのため、7月中旬の政策会合ではより積極的な金融引き締めが予定されていると金利マーケットでは予測されています。
BOCの予想金利(2022/6/21)(表1)

BOCが今月初めに発表した0.5%の利上げを受けて、金利マーケットでは金融引き締めのペースが加速すると予測されています。7月会合による利上げ確率は、ここ数週間で急上昇しており、0.25%の利上げ確率は281%です(0.25%の利上げ確率は100%、0.5%の利上げ確率は100%、0.5%の利上げ確率は81%)。現在、BOCの金利は1.50%ですが、来月には政策金利が2.25%へ上昇するペースになると予想されています。
IGクライアントセンチメント指数:米ドル/カナダドル レート予測(2022/6/21)(チャート1)

米ドル/カナダドルにおける個人トレーダーのデータでは、トレーダーの31.52%がネットロングとなり、ショートとロングの比率は2.17対1です。ネットロングのトレーダー数は前日比11.08%減、先週比32.32%減、ネットショートのトレーダー数は前日比8.09%増、先週比64.83%増となりました。
通常、群集心理に対して逆張り的な見方をするので、ネットショートのトレーダーが多いことは、米ドル/カナダドルが引き続き上昇する可能性を示唆しています。
トレーダーは前日と先週よりもさらにネットショートであるため、現在のセンチメントと最近の変化により、米ドル/カナダドルは強気の逆張りトレードのバイアスが高まっていると言えます。
RBA議事録により、さらなる政策金利の利上げを予測
RBAは5月に突然、0.25%の利上げを実施し、6月初めには0.5%の利上げを実施しており、6月のRBA議事録では今後の積極的な利上げペースについて強く示唆しています。フィリップ・ロウRBA総裁は、オーストラリア経済は今後数カ月、景気後退への懸念が抑えられており、労働市場が非常に好調であるため、7月にも0.5%の利上げが予想されると述べています。



RBAの予想金利(2022/6/21)(表2)

オーストラリアのOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)によると、7月の利上げ確率は175%です(0.25%の利上げ確率は100%、0.5%の利上げ確率は75%)。しかし、RBAの利上げ確率の急激な変化は2022年末に顕著に現れています。4月には、RBAの政策金利設定は年末までに2.00%へ上昇すると予想されていましたが、現在では、2022年末には3.566%まで上昇すると予想されています。
IGクライアントセンチメント指数:豪ドル/米ドル レート予測(2022/6/21)(チャート2)

豪ドル/米ドルにおける個人トレーダーのデータでは、トレーダーの70.15%がネットロングであり、ロングとショートの比率は2.35対1です。ネットロングのトレーダー数は前日比7.55%増、先週比7.89%増、ネットショートのトレーダー数は前日比4.75%減、先週比11.15%減となりました。
通常、群集心理に対して逆張り的な見方をするので、ネットロングのトレーダーが多いことは、豪ドル/米ドルが引き続き下落する可能性を示唆しています。
トレーダーは前日と先週よりもさらに、ネットロングであるため、現在のセンチメントと最近の変化により、豪ドル/米ドルは弱気の逆張りトレードのバイアスが高まっていると言えます。



RBNZの金融引き締めはまだ終わっていない。利上げのペースはどうなる?
RBNZは2022年前半から利上げを実施しており、経済指標が悪化し続ける中でも、より積極的な金融引き締めが進むと予想されています。RBNZの金融政策はインフレだけでなく、住宅価格にも関係していることは考慮しておきましょう。2023年2月までに予定されているすべての会合で利上げを実施するだけでなく、利上げのペースも加速すると予想されています。
RBNZの予想金利(2022/6/21)(表3)

RBNZ が7月に0.25%利上げする確率は213%(0.25%の利上げ確率は100%、0.5%の確率は100%、0.75の利上げ確率は18%)となり、8月に0.25%利上げする確率は270%(0.25%の利上げ確率は100%、0.5%の利上げ確率は100%、0.75%の利上げ確率は70%)です。現在の予想では、9月に入る前にRBNZの政策金利が2.00%から3.25%に上昇することが示唆されています。
IGクライアントセンチメント指数:ニュージーランドドル/米ドル レート予測(2022/6/21)(チャート3)

ニュージーランドドル/米ドルにおける個人トレーダーのデータでは、トレーダーの69.81%がネットロングであり、ロングとショートの比率は2.31対1です。ネットロングのトレーダー数は前日と変わらず、先週比は16.84%増、ネットショートのトレーダー数は前日比 7.46%増、先週比23.81%減となりました。
通常、群集心理に対して逆張り的な見方をするので、ネットロングのトレーダーが多いことは、ニュージーランドドル/米ドルが引き続き下落する可能性を示唆しています。
ポジションは前日よりネットロングが減少していますが、先週よりネットロングが増加しています。現在のセンチメントと最近の変化により、ニュージーランドドル/米ドルのトレードのバイアスはさらに混在していると言えます。
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--- CFA(協会認定証券アナリスト)シニアストラテジスト クリストファー・ヴェッキオ著