カナダドルは投資家のリスク回避姿勢が強まる中、8月に対ドルで下落した。9月も引き続きカナダドルの下落基調が続いている。カナダ中銀の金融政策決定会合を通過した中、カナダドル相場はFRBの金融政策の影響を受けると見込むが、カナダドルの対円、対ドルでの今後の見通しとは



サマリー
8月&9月のカナダドル相場
8月は、ジャクソンホール会議を控えたFRBの金融政策を巡る不透明感、中国景気の低迷、中国不動産市場に対する懸念を背景に、投資家のリスクセンチメントが悪化し、リスクオン通貨であるカナダドルは対ドルで2.4%下落した。

資料:Trading Economics。対米ドルパフォーマンス。DXYは米ドルインデックス。
ジャクソンホール会議では、パウエルFRB議長は今後の金融政策についてデータ次第である旨を強調し、利上げの有無についての明確なヒントを示さなかった。
中国では、中央銀行である人民銀行による利下げや、不動産市場の活性化策などが表明されているものの、中国当局から大規模な経済対策、金融緩和策は打ち出されていない。そのため、中国景気の回復による原油価格の上昇に伴うカナダドルの上昇は見込みづらい。
もっとも、9月に入り、カナダの主要産品である原油価格は上昇しているものの、カナダドルは引き続き下落している。アップルの主力製品である「iPhone」に対する中国による規制や米国金利の上昇を受けて、米ドルが幅広い通貨に対して上昇していることが背景である。

資料:Trading Economics。対米ドルパフォーマンス。DXYは米ドルインデックス。
9月6日にカナダ中央銀行は金融政策決定会合を開催した。景気やインフレ減速などを背景に政策金利を据え置いた。ただし、今後の政策金利見通しについては、粘り強いインフレや賃金の高止まりを背景として、追加利上げの可能性を残しており、金融市場では、年内据え置きが優勢であるものの、あと1回の利上げ、との予想もあり、予想が分かれている。

資料:BloombergよりDailyFXが作成
カナダ中銀の金融政策決定会合を通過した中、今後1か月のカナダドル相場の行方は米ドルの動向が重要である。カナダの主要産品である原油価格の動向も重要であるものの、8月以降、原油価格が上昇してもカナダドルが下落しており、米国の金融政策、そして米ドルの動向がカナダドルの鍵を握っていることを示している。



FRB(米連邦準備制度理事会)は、20日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催するが、FRBの金融政策に対する不透明感が高まっている。FRBの利上げサイクル終了との見方が強まった際には、米国金利低下に伴い、米ドル安カナダドル高が進展することを見込む。一方、FRBによる更なる利上げや、高い政策金利を長期間維持するとの思惑が高まった場合、米国金利上昇に伴い、米ドル高カナダドル安が進展しよう。
米ドル/カナダドルの個人トレーダーセンチメント
IG顧客センチメント(IGCS)によると、USDCADを取引する個人トレーダーの約24.3%がネットロング(米ドルを買い持ち・カナダドルを売り持ち、米ドルに強気)にしている。半分以上の持ち高はネットショート(米ドルに弱気・カナダドルに強気)に傾いているため、IGCSは、逆張り指標として機能する傾向があることから、米ドル/カナダドルは上昇(米ドル高カナダドル安)する可能性を示唆している。
また、昨日、先週と比べてネットショート(米ドルに弱気、カナダドルに強気)のトレーダーの割合が増えている。このことを考えると、米ドル/カナダドルは上昇(米ドル高カナダドル安)する可能性がある。
IGCS:USD/CAD




米ドル/カナダドルの見通し
USDCADは、週足チャートで、9期間指数移動平均線が20期間指数移動平均線を上抜け、米ドル高カナダドル安圧力の強まりを示す「ゴールデンクロス」が示現している。
MACDラインもシグナルラインを上抜け、米ドル高カナダドル安トレンドを示唆する「ゴールデンクロス」が成立しており、米ドル高カナダドル安圧力が強まっている。
個人トレーダーセンチメントに加え、テクニカル面では、カナダドルに弱気シグナルが点灯している。
更に、原油高が進行しており、米国雇用市場も堅調に推移する中、米国のインフレが再燃する可能性がある。そのような中、FRBは利上げサイクルが終了したことを強く示唆せず、更なる追加利上げの可能性を残すと見込む。更なる利上げの可能性が残る中、米国金利は高止まりし、米ドル高基調の継続に伴い、米ドル高カナダドル安継続を見込む。
USDCADは、2023年3月6日の週から7月10日の週にかけての値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント78.6%水準1.369レベルを終値ベースでブレイクした後、2023年3月6日週の高値1.38621レベルへ米ドル高カナダドル安の進展が視野に入る。
一方、カナダドル高が進展した局面では、フィボナッチリトレースメント61.8%水準1.3568レベルでサポートされるかに注目。サポートされた場合、米ドル高カナダドル安地合いが強いことを投資家に印象付けよう。
USDCAD週足チャート

資料:Trading View
カナダドル円の見通し
CADJPYは、週足チャートで、カナダドル円の上昇継続を示唆する「上昇ペナント」パターン内で推移している。「上昇ペナント」は、相場が大きな上昇の動きをした後、短い保ち合いの期間があり、その後、パターンの上限をブレイクしたのち、以前と同じ上昇方向への動きが継続する。
現在108.28レベルにあるパターンの上限を終値ベースで上抜けると、カナダドル高円安トレンドの再開が視野に入る。その場合、9月12日週高値110.523レベルへのカナダドル円の上昇を見込む。
ただし、カナダドル円は、カナダ固有のニュースに加え、ドル円の影響を強く受ける。FOMCにて、FRBの利上げ停止との思惑が強まった場合や、日本当局による為替介入の警戒感が高まった際は、ドル安円高に伴いカナダドル円が下落しよう。
また、カナダの主要産品である原油価格が下落した場合もカナダドル円の下落圧力になろう。その場合、「上昇ペナント」パターンの下限(現在105.73レベル)でサポートされるかに注目。サポートされた場合、カナダドル高円安地合いが強いことを投資家に印象付けよう。その後、カナダドル円は、パターン上限に向かって再度上昇、更に上限をブレイクし、カナダドル高円安トレンド再開の可能性が残る。
CADJPY週足チャート

資料:Trading View



新たなレポートの配信等はtwitterアカウント@DailyFXJapanで確認できます。
--- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著