※2023年6月26日18時19分更新
英ポンド見通し:対米ドル・ユーロ・豪ドルでの値動き
- 英ポンド/米ドルは、英中銀が先週、予想外に50ベーシスポイント引き上げた後も、硬いレジスタンスを下回る水準で推移している
- 投機的な英ポンドのロングポジションは、新型コロナ感染症拡大前の水準まで急増している
- 英ポンド/米ドル、英ポンド/豪ドル、ユーロ/英ポンドの見通しとは?



英ポンドの見通しとは?:対米ドル・豪ドル・ユーロ
先週のイングランド銀行(BOE、中央銀行)によるサプライズ利上げに対し、英ポンドの反応は薄かった。これは、英ポンドの上昇がいくつかの通貨に対して一服する可能性を示唆している。
BOEは政策金利を50bp引き上げ(大方の予想は25bpの引き上げ)、2008年以来の高水準となる5%とし、市場を驚かせた。50bpの利上げは2月以来で、BOEは外的なコストショックによって生じた国内物価と賃金の二次的効果は、発生した時よりも解消するのに時間がかかる公算が大きいと指摘した。先週発表された経済指標によると、5月の英消費者物価指数は前年同月比8.7%上昇した。伸び率は前月比横ばいで、鈍化しなかったのは3カ月ぶり。インフレ懸念が高まっており、BOEが引き締めに動くとの観測が強まっている。
英ポンドの投機的なロングポジション
資料:ブルームバーグ、マイクロソフトエクセルで作成
先週の利上げ実施前の動きを確認すると、BOEは4月に利上げを見送り、5月に25bp引き上げていた。市場は現在、政策金利が年内に6.25%でピークに達する可能性を50%と見ている。エコノミックサプライズ指数に反映されているように、2月中旬以降、英国の経済指標が堅調に推移していることから、今年度の英国の経済成長率見通しは上方修正された。しかし、積極的な引き締めは景気後退のリスクを高め、来年の成長見通しを悪化させる恐れがあるため、買われ過ぎ状態の英ポンドを軟化させる可能性は否定できない。
ポンド/米ドル 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView、下記注意書き参照
ポンド/米ドル:弱気バイアスの可能性が高い
週足チャートでは弱気のダイバージェンス(価格は上昇しているがモメンタムは失速)が発生しており、英ポンド/米ドルは今のところ、上昇の勢いが衰えていることを示している。英ポンドの投機的なロングポジションは新型コロナ感染症拡大前の水準に戻っており、2022年半ばからの上昇トレンドとほぼ一致している200週移動平均線(現在1.2900付近)を試す展開となっている。
英ポンド/米ドル 週足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ポンド/米ドルは、短期的には弱気なバイアスを維持する可能性があるが、6月上旬からの小型上昇トレンドラインを含む1.2625-1.2675付近に収束したサポートが支えとなり、下げ幅は限定的となりそうだ。このサポートは89期間移動平均線、240分足チャート上の一目均衡表の雲下端とも重なっている。このサポートを下方ブレイクした場合のみ、1.2500に向けてさらに下落する可能性がある。
ポンド/米ドル 240分足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
トレンドの観点からは、色分けされた日足のローソク足チャートが示すように、英ポンド/米ドルの幅広いトレンドは上昇を維持している。日足よりも時間枠の長い中期的な観点から見ると、今月5月に1年ぶりの高値まで上昇したことで、2022年後半から続く高値圏での高値と安値の切り上げパターンの維持が確認された。これにより、中期的に上昇する可能性が出てきた(5月8日付記事「英中銀の金利発表控え、英ポンド堅調:英ポンド/ドルの上昇余地とは?」参照)。
ポンド/豪ドル 週足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
英ポンド/豪ドル:上値は限定的
英ポンド/豪ドルの6月中旬からの反発は勢いに欠け、特に1.9200付近にある水平トレンドラインという堅いレジスタンスを考えると、新たな上昇相場の始まりではない可能性を示唆している。しかし、当面の底値である1.8450が崩れない限り、英ポンド/豪ドルは横ばいから上向きで推移する公算が大きいことに変わりはない。1.8450を下方ブレイクすれば、4月初旬の安値1.8250に向けて下落する可能性がある。
ユーロ/英ポンド 日足チャート
チャート作成:マニッシュ・ジャラディ、資料:TradingView
ユーロ/英ポンド:重要なサポートを上回って推移
ユーロ/英ポンドが重要な下値である昨年12月の安値0.8545を試す中、下落の勢いは弱まっているように見える。このような展開となる可能性は、6月19日付記事「ユーロ見通し:ECB利上げ、売られ過ぎ背景に上昇。対米ドル・豪ドル・英ポンドでの値動き」で取り上げた。目先はもみ合いまたは小反発の可能性がある。当面のレジスタンスは先週の高値0.8635で、これを上方ブレイクすれば、当面の下落圧力は和らいだことが確認できるだろう。
このチャートでは、青いローソク足は強気が優勢な局面、赤いローソク足は弱気が優勢な局面を示しています。黒いローソク足はもみ合い局面を表していますが、時にはトレンドの終焉を形成することもあります。
注:ローソクの色は予測ではなく、単にその時のトレンドを示しています。実際、ローソクの色は次のローソクの際に変化することがあります。200期間移動平均線付近やサポート/レジスタンス付近、もみ合い/不安定な値動きの際は、本来のトレンドとは異なる、騙しのパターンが発生する可能性もあります。筆者は情報の正確さを保証しかねます。また、過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。本情報のご利用は、自己責任にてお願いします。
--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
ジャラディ氏に連絡するには、Twitterで @JaradiManish までお願いいたします。