第2四半期のビットコイン(BTC/USD)概要
ビットコインは、2023年第1四半期に形成された上昇の勢いを維持できず、継続的な不確実性と規制上の問題が価格を圧迫した。ただし、ビットコインは依然として、2023年において顕著にパフォーマンスがよい金融商品の1つであり、執筆時点で約60%の上昇を記録している。「ビットコインの今後の見通し 2023年第1四半期」を参考にすると、同様のリスクと潜在的な要因が少しずつ変化しながら依然として影響している。この記事では、第3四半期に世界最大の仮想通貨に影響を与える可能性がある主要な要因について、詳しく解説していく。
ビットコインの規制上の問題とは
2023年に向けて、仮想通貨を好む投資家や仮想通貨に関連する企業は、特に米国における規制の明確化を望んでいた。しかし、SEC(米国証券取引委員会)が業界最大の取引所であるバイナンスとコインベースを立て続けに提訴したことで、これらの期待は第2四半期が終わりに近づくにつれて薄れつつあるようだ。SECは、未登録の有価証券と判断したトークンの上場方法と取引方法について提訴しており、2つの取引所において同様の部分や異なる内容もある。さらに、「運用とステーキングサービス」に関連した法的違反も提訴されている。そして、バイナンスは「ウォッシュトレード」や、国内外の事業体間で顧客資金を分別管理しなかったとしても告発されている。
今回の提訴をめぐって、SECと米国政府は一部から批判と疑いの目を向けられており、「政治的な魔女狩り」の可能性があるとの見方も出ている。キャシー・ウッド氏などの著名な市場参加者やビットコイン投資家は、米国が仮想通貨の規制をめぐる争いから取り残されるのではないかとの懸念を表明しており、コインベースのCEOであるブライアン・アームストロング氏も同様の考えを示している。
ビットコインはSECに提訴されたにもかかわらず回復力を維持しており、24時間足らずで反発した。提訴後のバイナンスとコインベースの取引所からの資金流出は顕著であり、ステーブルコインの保有高は1週間で約20%減少した。しかし、ビットコインとイーサリアムは、それぞれ約5.7%と約7.1%と緩やかな流出を記録している。
出所:グラスノード



FRBとビットコインの流動性が低い環境との関係性
ビットコインは、これまで極端なボラティリティと十分な流動性がある時期に最もよいパフォーマンスを見せてきたが、第2四半期の大半においては見られなかった。FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げサイクルを続けるにつれて、流動性は自然に低下し、ビットコインとその他の仮想通貨は取引が抑制された。
その例が、3月に起きた米国の銀行セクターの危機である。FRBは経営難に陥った銀行やシステム全体を支援するために、4,000億ドル近くを投入した。この過剰な流動性は、ビットコイン価格が20,000米ドルを突破したのと同時に発生しており、金融緩和と仮想通貨の関係性を強めている。
グラスノードのデータと分析(以下のグラフを参照)によると、ビットコインの「流動性の高い供給」では、そのサイクルを通じて顕著な減少を記録しており、現在は294万BTCの最低値付近にあり、2022年1月以来、62万BTCの減少である。これは、活発に取引されるトークンが大幅に減少し、その結果、流動性が低下し供給が制限されたことを示唆している。この傾向が第3四半期まで続くと、第2四半期後半にみられたように、横ばいの価格とマーケットの優柔不断な動きにつながる可能性がある。

出所:グラスノード
地政学リスクと景気後退への懸念
第3四半期において、ビットコインに影響を与える可能性がある全体的な問題に関しては、景気後退への懸念が中心であり、一部の国におけるスタグフレーションへの懸念もリスクをもたらしている。さらに、米国の逆イールドは依然として懸念されており、現在のサイクルと2008年に起きた世界金融危機以前のサイクルとの類似性が高まっている。多くのアナリストは、米国の消費者心理はまもなく冷え込むと見ており、2023年後半にはインフレよりも景気後退が差し迫った脅威になるだろう。しかし、最近のデータと個人的な見解では、インフレが金融マーケットにより大きな影響を与える可能性がある。
米中関係がさらに激化する中で、地政学リスクも大きな要因となる可能性もある。欧州では、ロシア・ウクライナ戦争が長期化すればするほど、各地に波及し、全体のセンチメントを圧迫する恐れがある。
ブラックロックがビットコインETFを申請
2022年に大規模な事件が発生した後、仮想通貨業界にとって規制は、真の解決策となるとの見方もあった。しかし、多くの市場参加者が米国政府の対応は過剰で偏っていると考えているため、米国の規制当局への信頼は低下し始めている。世界各国が規制の枠組みを修正・調整し始めており、米国は業界のリーダーであるどころか、後れを取る危険性がある。米国の規制当局が批判の嵐にさらされている理由は、仮想通貨に関して否定的な発言が続いているため、そして、ビットコインETFの申請を何度も却下しているためである。
SECが仮想通貨のETF(上場投資信託)を却下してきた経緯があるのにもかかわらず、ブラックロックは、グレイスケール・ビットコイン・トラストと同様のカストディアン(保管機関)を使用することで、iシェアーズ・ビットコイン・フィデューシャリーETFを申請している。ブラックロックは、自社のETFを成功に導いてきた地位と実績があれば、SECを納得させられると考えているのだろう。グレイスケール・ビットコイン・トラストは約10年前から存在しているが、信託であるため、クローズドエンド型ファンド(純資産価額にもとづいた価格での換金が保証されていないファンド)のように取引されることになる。そのため実質的には、実際に保有しているビットコインの原資産価値とは異なる価格で取引できることを意味する。しかし、ブラックロックのETFは、信託の費用と負債が支払われる前のビットコイン価格のパフォーマンスを反映することが目的である。コインベース・カストディ・トラストカンパニーはブラックロックが保有するビットコインの主要なカストディアンとなるが、ブラックロックはSECとコインベースにおける今後の訴訟には動じないだろう。
ブラックロックがビットコインETFを申請した後、ビットコイン価格は反発している。他の投資会社2社も同様の認可を申請しており、直近ではニューヨークの資産運用ファンドであるウィズダムツリーも申請した。ブラックロックの申請が認可されれば、新たな仮想通貨関連のETFの需要増加に向けた話題になる可能性があるため、再び強気の見方を示す必要があるだろう。
ビットコイン保有者のポジション構築は今後も続く見通し
今後は、驚異的なペースで世界最大の仮想通貨のポジションを構築し続けている、長期のビットコイン保有者にも注目すべきである。現在の蓄積率は毎月42万2,000BTCであり、多くの投資家が魅力的と感じる価格で供給が継続されているため、長期保有者がポジションを構築していることを示している。グラスノードの調査にもとづくと、この行動は過去にもみられており、今後さらにこのパターンが6〜12ヶ月間続くことを示唆している。ただし、価格の急な動きや上昇を求めている投資家にとってはよい兆候ではなく、長期的な保ち合いになる可能性がある。
第3四半期には多くの問題が発生し、仮想通貨に大きな影響を与える可能性がある。マーケット全体と同様に、ビットコインは微妙なポジションにあり、センチメントの変化に敏感である。だが、経済の不確実性が高まる中で、ボラティリティと出来高が低下していることは、今後数ヶ月間は注目すべき取引機会につながる可能性もあるだろう。
トレードに役立つメール配信サービス
DailyFXからタイムリーで国内外のマーケット情報を受け取ることができます。