※2023年6月5日17時50分更新
豪ドル見通し: 強気



先週のオーストラリアドルは、週半ばに6カ月ぶりの安値を付けたが、週末にかけて大きく上昇した。今回も米ドルの動向に注目が集まったが、今週6日に開催されるオーストリア準備銀行(RBA、中央銀行)の理事会という国内要因が相場を動かすかもしれない。
米債務上限問題が先週金曜に解決されたことで、市場全体に安心感が広がっている。リスク資産は全般的に上昇し、世界経済成長の動きに連動しやすい豪ドルもその流れに加わった。
30日に発表されたオーストラリアの4月建築許可件数は前月比8.1%減少し、予想(同2%増)、前月(同1.0%増)をともに下回る軟調な結果となった。とはいえ、金融システムにおけるインフレ圧力への警戒感は高まっている。
オーストラリア統計局(ABS)は、四半期の消費者物価指数(CPI)でカバーする62-73%を対象とした月次CPIを公表している。RBAの物価目標である2-3%は、四半期ごとの数値に連動している。
月次CPIの信頼性は、昨年導入されて以来、疑問視されてきたが、それでもRBAは今年初めに利上げサイクルを停止した際に、月次CPIを引用した。RBAが明日6日の理事会で金融政策を決定する際に、再び月次CPIを引き合いに出す可能性はある。
4月の豪CPIは前年同月比6.8%上昇し、予想(同6.4%上昇)、前月(同6.3%上昇)をともに上回った。
RBAのジレンマをさらに深刻化しているのが、先週金曜に行われたフェアワーク委員会による年間賃金の見直しである。この見直しは、すべての現代化された労使裁定において最低賃金を5.75%引き上げるというもので、5%の上昇という一般的な引き上げ率を上回るものだった。この決定は2023年7月1日から適用される。
この結果には公平性が感じられるが、実際、消費者は商品やサービスを購入する際の支払い能力が高まり、物価・賃金スパイラルの進行につながりかねない。
また、豪州の4月民間部門信用は前月比0.6%増と、予想(同0.3%増)を上回り、RBAがタカ派的な金融政策決定に動くが可能性を高めた。
RBAのフィリップ・ロウ総裁は先週、上院の経済法制委員会に出席し、賃金がこれまでのようなペースで上昇している中でCPIを引き下げるのは困難だと指摘した。
金利市場では、6日に利上げを実施する可能性は低いと見られているが、引き締めとなる可能性は高まっているように思われる。
その他、金利面では、先週初めに短期金利の指標となる米2年債利回りは105ベーシスポイント(bp)まで上昇し、米ドルに有利となったが、その後、豪ドル/米ドルが上昇したのと同時に70bp程度にまで縮小している。
金利差は引き続き、豪ドル/米ドルを動かす主因となる可能性があり、RBAが予想外の決定を下した場合は、価格に何らかの動きがあるだろう。
豪ドル/米ドル、豪米2年および10年債スプレッド
資料:TradingView
豪ドル/米ドルは先週、6カ月ぶりの安値0.6458を付ける過程で、3カ月間続いた0.6565-0.6818のレンジをブレイクした。
1日には、強気のチャートパターンである陽の包み足(抱き線)が形成され、強気の反転となる可能性が示された。
サポートは、0.6574と0.6565のブレイクポイント、または直近の安値0.6458となるかもしれない。
さらなる下降局面では、過去の安値0.6387とその近辺に位置するフィボナッチ水準0.6381がサポートとなる可能性がある。0.6381は、安値0.6170から高値0.7158までの動きをベースとしたフィボナッチ・リトレースメント78.6%の水準である。
上値では、ブレイクポイント0.6675と過去の高値0.6710がレジスタンスとなりそうだ。さらなる上昇局面では、0.6780-0.6820付近がより重要なレジスタンスゾーンとなる可能性がある。このゾーンにはいくつかの過去の高値とブレイクポイントが含まれる。
豪ドル/米ドル チャート
資料:TradingView



--- DailyFX.com ストラテジスト ダニエル・マッカーシー著
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