豪ドル、豪ドル/米ドル、地政学的緊張、米PPI - アジア太平洋地域の市場寄り付き
アジア太平洋地域の市場概況
センチメントに敏感に反応する豪ドルだが、地政学的な緊張が高まっているにもかかわらず、15日は対米ドルでなんとか上昇した。ポーランドにロシアのミサイルが着弾した可能性については、意図的なものか、あるいは撃墜された後の不注意によるものなのか、相反する報道が飛び交った。米情報機関の高官がAP通信に語ったところによると、このミサイルで2人が死亡したという。これは、ロシアのウクライナ侵攻に端を発する紛争がエスカレートするとの懸念を強めた。
このような状況下、15日の米国株式市場でS&P 500種株価指数は、10月の米生産者物価指数（PPI）が予想を下回ったことを好感した買いが先行したが、その後は上値が重くなった。10月のPPIは前月比0.2％増と、予想（同0.4％増）を下回り、9月からは横ばいだった。この数値は、先週発表された10月の米消費者物価指数（CPI）の軟化に続き、物価上昇の勢いが弱まっていることを示すもう一つの指標となった。
トレーダーは2023年の利上げ予想を早々に後退させ、ハイテク株の比率が高いナスダック100指数は先週、2020年9月以来となる最大の上昇幅を記録した。意外でもなく、市場はPPIにもCPIと同じような反応を示し、米ドル安、株高、リスクに敏感な豪ドル高につながった。
11月16日のアジア太平洋地域の市場 - 地政学的緊張が不安要素
残念ながら、地政学的な緊張が相場上昇の一部を解消することになったが、それでも豪ドルは力強く上昇し、9月中旬以来の高値で取引を終えた。ロシアの懸念は、16日のアジア太平洋地域の市場においても警戒感をもたらすかもしれない。
同時に、ミサイルに対する市場の反応は、新しい情報が入り続けるうちに、簡単に逆転する可能性もある。当記事執筆時点でポーランドは、今回の着弾について詳細な声明を発表していないが、北大西洋条約機構（NATO）に加盟しているポーランドが北大西洋条約第4条の発動を検討していると伝えられている。第4条は、加盟国の領土保全、政治的独立または安全が脅かされているといずれかの加盟国が認めた時、加盟国はいつでも協議すると定めている。ポーランドはまた、ロシア製ミサイルがウクライナに近い国境地帯に着弾したと発表した。
16日発表の経済指標は、オーストラリアの賃金価格指数以外、特に重要なものはなさそうだ。豪の第3四半期の賃金価格指数が予想を上回る結果となれば、豪中銀のタカ派的姿勢を後押しし、豪ドルを下支える可能性がある。しかし、豪ドル/米ドルにとっては、17日に発表される米雇用統計の方が大きく影響するかもしれない。
豪ドル テクニカル分析
日足チャートで豪ドル/米ドルは、4月を始点とする重要な下降トレンドラインを終値で上回った。現時点では確証に欠けるが、さらに上方で引けた場合、より広範な形で強気に反転する可能性がある。この場合、焦点は200日単純移動平均線になる。200日単純移動平均線を突破できなければ、相場は下向きとなるかもしれない。下降局面では、0.6540のフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準が焦点となりそうだ。
豪ドル/米ドル 日足チャート
資料：TradingView
--- DailyFX.com シニアストラテジスト ダニエル・ドゥブロスキー著
ドゥブロスキー氏に連絡するには、Twitter で @ddubrovskyFX までお願いいたします。
