中国人民銀行は、景気支援のためにサプライズ利下げに踏み切った。中国景気は依然として低迷しているものの、政策効果が表れるにつれ、中国と結びつきの強いオーストラリア経済をサポートする可能性があるが、豪ドルの対ドル、対円での値動きは?



サマリー
- 中国人民銀、6月に続きサプライズ利下げを実施
- 中国の重要経済指標が公表、緩慢な景気回復を確認
- 豪ドルの対ドル、対円での見通し
人民銀、利下げに踏み切る
オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)が1日に開催した金融政策決定会合の議事録が公表された。同会合では、政策金利の据え置きが決定されたが、議事録からは更なる利上げは経済データ次第とし、更なる利上げは強く示唆されなかった。
また、オーストラリアと経済的に結びつきの強い中国で、人民銀行(中央銀行)による1年物MLF(中期貸出ファシリティ)金利の引き下げが決定されたほか、重要経済指標発表された。金融市場では、1年物MLFの据え置きが予想されていたが、不動産市場を中心に低迷する中国経済テコ入れのため、2.65%から2.50%へサプライズ利下げが実施された。6月にも利下げを実施しており、人民銀行、中国政府により景気サポートスタンスが明確になっている。中国景気は低迷を続けているものの、中国当局からの景気サポートスタンスが明確になる中、政策効果が表れるにつれ、中国と経済的に結びつきの強いオーストラリア経済、そして豪ドルをサポートする可能性がある。重要経済指標は、小売売上高をはじめ、前月より一段と中国景気が低迷していることが示された。
15日発表中国経済指標

豪ドル/米ドルの個人トレーダーセンチメント
IGCSによると、豪ドル/米ドルを取引する個人トレーダーの約83%がネットロング(豪ドルを買い持ち米ドルを売り持ち)にしている。IGCSは逆張り指標として機能する傾向があることを勘案すると、ほとんどのトレーダーが豪ドルに対して強気バイアスを維持していることから、豪ドル安米ドル高が進展する可能性がある。しかしながら、ネットロングは昨日と比較して減少している一方、先週と比較すると増加しており、まちまちである。これらを勘案すると、個人トレーダーのセンチメントは豪ドル/米ドルに対して中立である。
IG顧客センチメント:AUD/USD




資料:IG顧客センチメントより抜粋
豪ドル/米ドルの見通し
RSIは50を下回り弱気モメンタムを示している。また、MACDラインは下向きかつ、シグナルラインを下回っており、豪ドル安米ドル高トレンドの勢いが衰えていない。現在、豪ドル/米ドルは、5月終わりから6月末にかけての安値0.650―0.646ゾーンで推移しており、下方ブレイクした場合、豪ドル安米ドル高圧力が一段と強まることを見込む。その場合、昨年11月10日安値0.639レベルへの下落が視野に入る。
一方、中国当局の景気テコ入れ姿勢が鮮明になる中、豪ドル高米ドル安が進展した場合、3月10日安値0.656レベルがレジスタンス転換したかに注目。上方ブレイクした場合、豪ドル安米ドル高トレンド終了の可能性が出てくる。
豪ドル/米ドル日足チャート

資料:Trading Viewより作成
豪ドル/円の個人トレーダーセンチメント
IGCSによると、豪ドル/円を取引する個人トレーダーの約47%がネットロング(豪ドルを買い持ち円を売り持ち、強気)にしている。IGCSは逆張り指標として機能する傾向があることを勘案すると、半分以上のトレーダーがネットショート、豪ドルに対して弱気バイアスであることから、豪ドル高円安を示唆している。しかしながら、ネットショートは昨日と比較して増加している一方、先週と比較すると減少しており、まちまちである。これらを勘案すると、個人トレーダーのセンチメントは豪ドル/円に対して中立である。
IG顧客センチメント:AUD/JPY




資料:IG顧客センチメントより抜粋
豪ドル円の見通し
RSIは概ね中立の50であるものの、6月19日を起点として下向きのレジスタンスラインに上値が抑えられており、豪ドル安円高トレンドが進展している。一方、MACDラインがシグナルラインを上抜ける「ゴールデンクロス」が成立しており、豪ドル安円高トレンドの勢いが衰えつつある。中国当局の景気サポート姿勢が鮮明になる中、レジスタンスラインを上抜けると、豪ドル安円高トレンド終了の可能性が高まる。
レジスタンス上抜けに失敗した場合、豪ドル安円高トレンドが継続、3月から6月のAUDJPYの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント38.2%水準93.172円への下落が視野に入る。
豪ドル円日足チャート

資料:Trading View



新たなレポートの配信等はtwitterアカウント@DailyFXJapanで確認できます。
--- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著