


※2023年6月21日15時27分更新
祝日で短縮された今週の米主要株価指数は、軟調な滑り出しとなった。20日の米国株式市場でダウ工業株30種平均は前週末比0.72%安、S&P 500種株価指数は同0.47%安、ナスダック指数は同0.16%安で取引を終えた。しかし、特にナスダック指数が日中に急速に下げ幅を縮小したことは、買い方の強さを反映しているのかもしれない。原油価格の下落を受け、エネルギーセクター(前週末比2.3%安)が下げたことが指数全体の足を引っ張った。一方、米電気自動車(EV)メーカー大手テスラが5.3%上昇したことで、一般消費財セクターは上昇した。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長はきょう21日に下院金融委員会で、翌22日には上院銀行委員会でそれぞれ半期に一度の議会証言を行う。パウエル議長は、他のFRB当局者同様、タカ派的な姿勢を維持する可能性が高いが、市場参加者は最近のFRBのガイダンスを素直に受け入れていないため、自身の金利見通しを市場に納得させねばならないという難しい舵取りが求められる。
きょう21日発表の英国の消費者物価指数(CPI)も注目されている。5月の総合指数は前年同月比8.4%上昇と、前月(同8.7%上昇)からわずかに低下すると見られているが、コア指数は前年同月比6.8%上昇で4月からは横ばいと、インフレ率は依然として高止まりになると予想されている。頑固なインフレが明らかになれば、これまで異常な高さにとどまるインフレに不快感を示してきたイングランド銀行(BOE、中央銀行)は、明日22日開催の会合でタカ派的なトーンを強めることになりそうだ。
株式市場に対する投資家の心理状態を数値化したVIX指数は最近、上値が重く、2020年2月以来の低水準で推移している。指数は月初の水準から17%低下した後、日足チャートでは目先のレンジ相場に追い込まれ、MACD(マックディー)は横ばいとなっている。値固めに向けて動いているように見えるが、持続的な上昇を実現するための原動力はまだ不足している。季節性を考慮すると、VIX指数は一般的に7月下旬から10月上旬にかけて上げ幅が大きくなる傾向がある。短期的には、18.00を再び上回る動きがあれば、重要な20.00の水準を再び試す可能性が非常に高いと見ている。
VIX指数
資料:IGチャート
アジア市場寄り付き
21日のアジア株式相場は、日経平均株価が0.23%高、豪ASXは0.16%安、香港ハンセン株価指数は0.29%安(記事執筆時点)と、静かな滑り出しとなりそうだ。中国人民銀行(PBOC、中央銀行)は利下げを実施したが、市場参加者はさらなる利下げを期待しているため、20日の中国株に大きな動きはなかった。
ナスダック・ゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数は20日、4.9%急落し、香港ハンセン指数は重要な心理学的水準20,000から値を下げている。中国の電子商取引大手アリババの首脳陣交代は、アリババ自身にとっては中国政府による厳しい規制を免れ、最近は事業進展の努力があったものの、中国企業が依然として厳しい環境に置かれていることを証明するものだった。経済指標では、韓国の輸出が2022年8月以来9カ月ぶりに増加に転じた(前年同月比5.3%増)が、半導体や石油製品の輸出は引き続き低迷しており、明るい材料はまだ少ないかもしれない。
日経平均株価
資料:IGチャート
きょう21日の日経平均株価は、相対力指数(RSI)がさほど落ち込むことなく、買われ過ぎから中立の領域に戻り、ある程度の強さを保っている。MACDは弱気のクロスを維持しているが、以前、弱気のクロスを試した際(2023年6月1日、2023年6月9日)は偽りの弱気クロスだったことが証明されており、これを確かなガイドとして見るには説得力に欠ける。当面の注目点は、過去2カ月間、指数を安定的に支えてきた20日移動平均線(MA)かもしれない。大局的な上昇トレンドは維持されているため、リトレースメントが発生した場合、32,000の水準で安値が切り上がる可能性がある。
銅価格
資料:IGチャート
フォーカス:銅価格は、8,600ドル/トンのレジスタンス合流点を再び試す
銅価格は最近、中国の住宅規制緩和などにポジティブに反応し、今年5月下旬の水準から10%近く回復している。FRBは来月で引き締めサイクルの最終段階に入るとの見方が引き続き大勢を占める中、今後数カ月間に中国政府はさらなる景気刺激策を打ち出すとの見方が後押しとなり、銅需要の見通しは懸念されるほど悪くないとの期待が高まっている。
3週連続の上昇により、銅価格は8,600ドル/トンの重要なレジスタンス合流点を再び試すところまで戻ってきた。RSIが50を超え、MACDもプラス圏に戻ろうとしていることから、目先の強気バイアスは維持されているようだが、強気派としては、日足チャートの一目均衡表の雲上端を突破し、8,600ドル/トンを超えた水準を安定的に維持したいところである。
8,600ドル/トンの水準を回復すれば、スムーズに3月の高値9,100ドル/トンを再び試す動きとなりそうだ。一方、下降局面では、8,270ドル/トン付近の上昇トレンドラインが当面のサポートとなる可能性がある。



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