米債市場の動きとその影響力の大きさ
【サマリー】
- 英中銀による長期国債購入の発表を受け米長期金利が低下
- 昨日は「英中銀の国債購入→米金利の低下→米ドル安/米株高」の展開に
- 昨日発生した一連の動きは米債市場の影響力の大きさを物語る
- ドル円の上昇局面と下落局面で注目しておきたいチャートポイントは?
・英中銀の国債購入で米長期金利が低下
イングランド銀行(英中央銀行/BoE)は28日、一時的に長期国債を無制限に購入することを発表した。
BoEの発表を受け、米債市場では節目の4%へ到達した長期金利(10年債利回り)が急低下し、一時3.7%の水準を割り込む局面が見られた(下の日足チャートを参照)。
一方、米金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りも4.3%台から4.08%まで低下する展開が見られた。
米長期金利のチャート
Trading View日足(今年6月以降)
トレードの基礎知識
マクロ経済ファンダメンタルズ
推薦者: Junichi Ishikawa
・米債市場の影響力の大きさを再確認 今後注視すべきことは?
米長期金利の低下を受け、米国の主要な株価指数は大幅反発の展開となった。
一方、外為市場では米ドル売りの圧力が高まり、2002年5月以来となる114.77レベルまで上昇する局面が見られたドルインデックス(DXY)は112.56レベルまで急落する展開となった。
これら一連の動きをチャートで確認すると、米長期金利の低下に連動し米ドル相場(ドルインデックス)の下落幅が拡大していることがわかる。対照的に米長期金利と米国株(S&P500指数)は、逆相関の関係にあることがわかる。
昨日の一連の動きは、現在の米債市場(米長期金利)の影響力(=外為市場と米国株式に及ぼす影響力)がいかに大きいのか、を物語っている。
ゆえに今後注視すべきことは、米長期金利のトレンド転換にあろう。
米連邦準備制度理事会(FRB)が抱くインフレリスクへの警戒レベルの高さと次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で連続の大幅利上げ(0.75ポイント利上げ)の可能性が意識されている状況を考えるならば、米長期金利は調整の低下局面を挟みながらも上昇トレンドを維持するか、もしくは高止まりする可能性がある。
米長期金利の上昇局面では、昨日到達した4%の水準を突破するかどうか?この点が焦点となろう。一方、低下の局面(短期的な調整の局面)では3.5%前後で反発するかどうか?この点を確認したい(上の日足チャートを参照)。
米長期金利、米国株(S&P500)、ドルインデックスのチャート
Trading View 5分足(昨日NY時間以降)
ドル円の焦点とチャートポイント
・上昇局面での焦点は144.90の突破とサポート転換
米金利と高い相関関係を維持するドル円(USDJPY)だが、昨日の米金利低下を受けても144円台で堅調地合いが続いている。昨日の動きは、日米金融政策スタンスの差を意識した「米ドル買い/円売り」の根強さをあらためて示した。
トレンドフォローの原則に従うならば、ドル円は引き続き「145円台の攻防」が焦点となろう。
145円台へ上昇するシグナルとして、目先はレジスタンスポイントとして意識されている144.90レベルの突破と、それを達成した後に144.90レベルがサポートポイントへ転換するかどうか?この点に注目したい。
特に後者のサポート転換が確認される場合、ドル円は本格的に145円台の攻防、つまり円買い介入の攻防へシフトすることが予想される。
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -5% | 3% | 2% |
週次 | 3% | 9% | 8% |
・下落局面では21日EMAと141.70レベルの攻防に注目
一方、米金利の低下に追随しドル円(USDJPY)が反落する場合は、先週の23日に相場をサポートした21日EMA(142.60レベル)の攻防に注目したい。
米金利の低下幅が拡大する局面では、21日EMAの下方ブレイクおよび9月以降サポートポイントとして意識されている141.70前後で反転するかどうか?この点が次の焦点となろう。
ドル円が141.70レベルでドル円の反転が確認される場合は、この水準が高値圏での重要サポートポイントとして意識され続ける可能性が高まろう。
一方、ドル円が141.70レベルをも下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準140.48レベルまでの下落を想定したい。
ドル円のチャート
Trading View 日足(今年8月以降)