FXの取引をしたことがある、またはFXを学んだことがあるという方は「スワップポイント」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
FXはドルや円などの通貨を交換して差益を狙う以外に、スワップポイントを利用して利益を狙う方法もあります。
ほぼ毎日利益をコツコツと積み上げることができるスワップポイントは、FXの魅力の一つです。
本記事では、そもそもスワップポイントとは何かから、計算方法や注意点などについて、FX初心者の方でも分かるようにやさしく解説していきます。
FXのスワップポイントとは
スワップポイントとは、通貨のスポットポジションを一晩保有することで発生する金利のことです。各通貨にはインターバンクの夜間金利が設定されています。 FXはペアで取引されるため、取引には2つの異なる通貨だけでなく、2つの異なる金利が関わってきます。
スワップポイントとは、米国東部時間の午後5時(日本時間の午前7時)以降に「一晩」保有したポジションに対して、トレーダーの口座に請求または適用される金利を指します。
スワップポイントの意味がわかったところで、FXでのスワップポイントの仕組みについて説明します。



スワップポイントの仕組みとは
FXのポジションを建てると、そのポジションで2つの通貨の金利差を稼いだり払ったりすることになります。これはスワップポイントと呼ばれています。建てているポジションのロング通貨の金利が、ショート通貨の金利よりも高い場合、利益を獲得します。同様に、ロング通貨の金利がショート通貨の金利よりも低い場合、ポジションに損失が発生します。
中央銀行のレートは、DailyFXのマーケットページのページ下部付近に掲載されています。
例として、次のようなロングトレードで考えてみましょう。 EUR/USDのロングトレードをしていて EURの金利がUSDの金利を下回った場合、その差額を支払うことになります。
保有ポジションの持ち越しをおこなう予定のトレーダーは、スワップポイントを注視することが重要です。通常の市場環境では、FXのスワップポイントは安定している傾向がありますが、信用リスクの高まりによりインターバンク市場にストレスがかかると、スワップポイントが日によって大きく変動することがあります。
キャリートレードのような金利差に着目した戦略は、高金利の通貨と低金利の通貨でロングポジションを取り、金利の低い通貨ではショートポジションをとることでプラスのスワップポイントを利用しようとするものです。
スワップポイントは米国東部時間の午後5時(日本時間の午前7時)にオープンしているポジションにのみ適用されるため、トレーダーは米国東部時間の午後5時(日本時間の午前7時)より前にポジションをクローズすることで、マイナスのスワップポイントを支払うリスクを回避することができます。
金利が変動すると、スワップポイントも大きく変動します。中央銀行カレンダーをチェックして常に最新の情報を入手することをおすすめします。
スワップポイントのメリット
スワップポイントのメリットは、ほぼ毎日コツコツと利益を積み上げられることになります。要するに、金利差がプラスであればポジションを保有している限り、何もしなくても利益をほぼ毎日得ることができるのです。
例えば、株取引では利益は買った値段よりも価格が上昇したタイミングで売らないと得られませんし、配当にしても半年ごとや1年ごとといった頻度でしか支払われません。一方、FXのスワップポイントは取引する必要がなく、継続的に利益が貯まっていきます。
また、新たにポジションを追加した場合には、追加したポジションの分だけスワップポイントが追加され、ポジションの一部を決済した場合は、残りの保有しているポジションの分だけスワップポイントをもらい続けることができるという柔軟性もあります。
金利差がプラスであればポジションを保有しているだけでほぼ毎日利益を積み上げられるスワップポイントは、FX初心者の方でも始めやすい戦略と言えるでしょう。
スワップポイントの計算方法
スワップポイントを推定するためには、以下の3つが必要です。
- ポジションサイズ
- 通貨ペア
- 各通貨の金利
この計算にしたがえば、スワップポイントの大まかな目安が分かるでしょう。しかし、中央銀行の金利は目標金利であり、スワップポイントはスプレッドが発生する市況に応じて取引可能な市場であるため、実際の金利とは多少のズレが生じます。
1日のロールオーバー額の推定方法の例を見てみましょう(AUD/USD 0. 72):
- ポジションサイズは10,000ロット
- AUD/USD通貨ペアのロングポジション
- AUD:年利1.5%、USD:年利2.5%
- 毎年、10,000 AUD×1.5% = 150 AUDを獲得できます。一日のスワップポイントは150 AUD/365 =0.4109 AUD
- 7,200 USD×2.5% = 180 USDを毎年支払います。180/365ドル = 0.4932 USD
- 獲得した0.41095 AUDの利息をドルに換算します。0.41095×0.72 = 0.2960 USD
- 支払い額から獲得額を引きます。0.2960 - 0.4932 = -0.1972 USD(マイナスのスワップポイント)
- スワップポイントの推定値は、単純にロング通貨の金利からショート通貨の金利を差し引いたものになります。



上記の例では、トレーダーは、そのポジションを夜間に保有していたことで、損失を支払ったことになります。反対に、日々の利息を稼ぐことを目的としたFX戦略があります。それがキャリートレード戦略です。ここでは、取引でプラスのスワップポイントを獲得する例を紹介します。
トレーダーは、AUDが高くなると予想し、買おうことを検討し、米ドルではなくユーロで取引することにし、ここでは、10,000をショートポジションで建てました(EUR/AUD 1.6)
- ポジションサイズは10,000ロット
- EUR/AUD通貨ペアのショート
- AUD:年利1.5%、EUR:年利0%
- 毎年、10,000 AUD×1.6% = 16,000 AUD×1.5% = 240 AUDを獲得できます。一日のスワップポイントは240 AUD/365 = 0.65 AUD
- 10,000 X 0% = 0 EURのため毎年の支払いはありません。
- 獲得した0.65 AUDの利息をユーロに換算します。0.65÷1.6 = 0.41 EUR
- 支払い額から獲得額を引きます。0.41 - 0 = 0.41 EUR(プラスのスワップポイント)
スワップポイントが決定する時間とは
スワップポイントは米国東部時間の午後5時(日本時間の午前7時)に決定します。PM 4:59に保有したポジションは、PM 5:00にスワップポイントの対象となります。PM 5:01にオープンしたポジションは、翌日のPM 5:00にスワップポイントの対象となります。
アメリカから取引している場合、スワップポイントの付与は午後5時におこなわれます。
イギリスから取引している場合、スワップポイントの付与はGMTの午後10時におこなわれます。
オーストラリアから取引している場合、スワップポイントの付与は午前9時におこなわれます。
週末の計算方法
世界中のほとんどの銀行は土日が休みのため、土日のスワップポイントはありませんが、銀行は土日に対しても利息を適用します。それを考慮して、FXでは水曜日に3日分のスワップポイントを計上しています。上記のAUD/USDの例では、水曜日の米国東部時間の午後5時(日本時間の午前7時)にその取引をおこなった場合、-.1972×3 = 0.59のコストが発生します。
祝日の計算方法
祝日にはスワップポイントはありませんが、通常は祝日の2営業日前に追加日数分のスワップポイントが発生します。一般的に、祝日のスワップポイントは、ペアのどちらかの通貨が主な祝日にあたったときに起こります。そのため、アメリカの銀行が休みになるアメリカの独立記念日(7月4日)には、米国東部時間の7月1日の午後5時(日本時間の午前7時)にスワップポイントの1日分がすべての 米ドルペアに追加されます。スワップポイントが適用される日が週末であれば、その翌週の水曜日に延期され、4~5日分の利息が発生することになります。
スワップポイントの注意点
スワップポイントを狙った投資は魅力的ではありますが、課税のタイミングや為替変動リスク、マイナススワップなどに注意が必要になります。というのも、これらの注意点を認識していないと、スワップポイントで利益を出すどころか、逆に損失を出してしまうことも考えられるからです。
以下でスワップポイントの3つの注意点を解説します。
スワップポイントで得た利益も課税対象
スワップポイントで得た利益は為替差益で得た利益と同様に、雑所得として申告分離課税(税率20.315%)の対象となります。ただし、FX業者によって税金がかかるタイミングが違うため注意してください。
スワップポイントの課税のタイミングは「ポジション未決済でも課税される」ケースと「ポジション決済時にまとめて課税される」ケースがあります。スワップポイントが毎日口座に反映される場合はポジション未決済でも、スワップポイントが決済時に口座に反映される場合はポジション決済時にまとめて課税されることになるのです。
ポジション未決済でも課税されるケースでは、決済していなくてもスワップポイントを実現損益として自由に使うことができるというメリットがあり、ポジション決済時にまとめて課税されるケースには、決済するまで確定申告をしなくても良いというメリットがあります。
※FXの税金についての詳細は国税庁のWebサイトをご覧いただくか、税務署や税理士等の専門家にお問い合わせください。
為替変動リスクが高い場合もある
スワップポイントが魅力的な高金利通貨ですが、高金利通貨は為替の変動リスクが比較的高い場合もあります。というのも、トルコリラやメキシコペソ、南アフリカランドなどの新興国の通貨は、流動性が低い上に政情不安や地政学的リスクなどが高い傾向があるからです。
トルコやメキシコ、南アフリカなどの国々は今後の成長が期待できる国々ですが、米国や日本などの主要国のように社会や経済が成熟しているわけではありません。例えば、トルコではエルドアン大統領に権力が集中していたり、メキシコは経済の対米依存度が極めて高かったりというような問題を抱えています。
そのため、スワップポイントを狙った投資で高金利通貨を扱う場合は、為替レートの急変動が起こる可能性を頭に入れておきましょう。
金利差を逆に支払わなければならない場合もある
スワップポイントは必ずプラスになるわけではなく、マイナスになれば金利差を支払わなければなりません。つまり、金利の高い通貨を売って、金利の低い通貨を買った場合は口座の資金がどんどん減っていってしまうことになるのです。
例えば、金利が非常に高いトルコリラやメキシコペソなどの通貨を売って、金利の低い日本円やスイスフランを買うと、スワップポイントは大幅なマイナスになります。
その日のうちにポジションを決済するスキャルピングやデイトレードではあまり問題になりませんが、スイングトレードやポジショントレード(長期投資)をする際にはスワップポイントがマイナスの場合、日々口座資金が減っていくことになるため、注意が必要です。
レバレッジのかけすぎに気を付ける
スワップポイントを狙って中長期で運用する場合は、レバレッジのかけすぎに気を付けるようにしましょう。なぜかと言うと、FXでは強制ロスカットがあるため、一定の損失を出してしまうと自分の意思とは関係なく、強制的にポジションが決済されてしまうからです。
高いレバレッジでの取引は、急な価格変動に巻き込まれた際に強制ロスカットされるリスクが高くなります。強制ロスカットが執行されれば、それまで受け取っていたスワップポイントを上回る損失を発生させてしまうだけでなく、預けた資金の大半を失うことになります。
そのため、スワップポイントを長期間にわたり積み上げていきたいときは、ロスカットにならないよう低レバレッジでの運用を心がけましょう
スワップポイントを上手に使うための3つのコツとは
FXのスワップポイントの仕組みはとてもシンプルであり、基本的にはポジションを保有しているだけでよいものですが、スワップポイントを上手に使うためのコツもあります。ここではFX初心者でも簡単におこなうことができる、リスクを抑えてスワップポイントを中長期的な戦略に組み込む際に役立つ3つのコツを紹介します。
分散投資を行う
スワップポイントを狙った投資をする際は、複数の通貨ペアに分散投資をするとよいでしょう。なぜなら、投資対象を一つに絞っていると、その一つがダメになってしまった場合、全ての投資が失敗してしまうことになるからです。
資産運用には「卵を一つのかごに盛るな」という格言があります。卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした場合には、全部の卵が割れてしまうかもしれないが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、そのうちの一つのカゴを落としてカゴの卵が割れてダメになったとしても、他のカゴの卵は影響を受けずにすむということです。
したがって、スワップポイントの高い通貨ペアを複数保有しておき、リスクを分散させておくことおすすめします。
証拠金の確認を怠らない
スワップポイントは何もしなくても利益をほぼ毎日得ることができますが、証拠金(保証金)は定期的に確認するようにしてください。というのも、為替レートの急変動によって、保有しているポジションが強制ロスカットされてしまうことがあるからです。
高金利で人気のあるトルコリラやメキシコペソなどの新興国通貨は為替の変動リスクが比較的高く、急な暴落でロスカットをされる可能性が主要国の通貨より高くなります。強制ロスカットには損失の拡大を防ぐことができるという面もありますが、ポジションは意思に関わらず強制的に決済されてしまいます。
スイングトレードやポジショントレードでスワップポイントを狙うのであれば、定期的に証拠金を確認して余裕を持った証拠金を用意するようにしておくことをおすすめします。
スプレッドの幅が狭い通貨ペアを選ぶ
スワップポイントを狙った投資では、ポジションを長く保有して利益を積み上げることが基本であるため、取引回数は少なくなる傾向があります。とはいえ、できればスプレッドの幅が狭い通貨ペアを選ぶ方がよいでしょう。なぜなら、FXの取引においてスプレッドは一つの手数料であり、手数料は安い方が当然ながら良いからです。
特に、高いスワップポイントを得ることができる高金利の国の通貨ペアは、マイナー通貨ペアとも呼ばれ元々スプレッドが広くなっています。例えば、トルコリラ円やメキシコペソ円などはドル円やユーロ円など主要国の通貨ペアと比べてスプレッドが広いです。
「スプレッドが広くて想定より利益が少なかった」といった状態にならないよう、事前にスプレッドの幅を調べておくとよいでしょう。
まとめ
ここまで「FXのスワップポイントとは何か、計算方法や注意点」などについて解説させていただきました。
為替レートの変動をとらえて利益を出す為替差益狙いと比べて、スワップポイントを狙う運用はゆっくりと着実に資産を増やすような運用だと言えるでしょう。しかしながら、前述した通り、リスクも存在していることから、注意しなければ大きな損失を出してしまうことも考えられます。
せっかく得たスワップポイントが台無しにならないよう、リスク分散や証拠金の管理などを心掛けて運用していきましょう。