決算発表シーズンは、株式トレーダーが投資している銘柄の見識を深められると共に、潜在的な株価の動きを予測できる絶好の機会です。本記事では、決算発表シーズンとは何か、知っておきたい決算発表日および決算報告書で注目すべきポイントを紹介します。
決算発表シーズンとは何か、なぜ重要なのか？
決算発表シーズンは、会計四半期ごとに通常数週間にわたって、多くの上場企業が最新の決算情報を発表する期間を指しています。決算報告書には、売上高、純利益、一株当たり利益（EPS）、今後の見通しなど数多くのデータが記載されており、企業の現況や今後の見通しを知ることができます。これらの情報は、SEC.GOVや様々な金融関連の出版物、各企業のウェブサイトなどに掲載されます。
決算発表シーズンが重要なのは、マーケット参加者が注目している企業の情報だけではなく、より広範な指数を含めて把握できるからです。例えば、アップル（AAPL）が好決算を発表すれば、投資家は ナスダック100の先物に強気になるかもしれません。これは後述する指標銘柄としての考え方になります。
また、決算発表と同時におこなわれるのが決算説明会です。これは企業とアナリスト、報道関係者、投資家との間でおこなわれる会合で、決算報告書の結果について議論し、多くの場合において企業経営陣に質問する場が設けられています。すべての企業が決算説明会を開催しているわけではありませんが、報告書を精査することで、トレーダーはより多くの情報にアクセスすることができ、そこから投資についての判断材料を得ることができます。
決算発表シーズンと報告書の発表時期とは？
通常の決算発表シーズンは、各四半期末（12月、3月、6月、9月）の数週間後になります。つまり、決算発表シーズンは1-2月（第4四半期決算）、4-5月（第1四半期決算）、7-8月（第2四半期決算）、10-11月（第3四半期決算）あたりに始まります。通常は米国の主要銀行が決算を発表する頃に、決算発表シーズンは非公式にスタートを切る流れになっています。
上記のスタート時期から決算発表の数が増えてきますが、ウォルマート（WMT）が決算発表をおこなう頃に決算発表シーズンの非公式な終わりを迎えるのが一般的です。
企業の決算報告書で見るべき3つのポイントとは？
決算報告書にはいくつかのポイントがあります。まずは最も大きな「指標銘柄」のパフォーマンスに注意を払うことが大切です。さらに特定銘柄の業績が後退した重要なポイントや特定銘柄のウェイトに応じて、対象銘柄の業績発表に関連する指数にどのような影響があるかを把握する必要があります。
（1）指標銘柄のパフォーマンス
企業の業績を分析する際には、マクロ経済の動向を測る尺度となる「指標銘柄」に注目することが重要です。指標銘柄の地位は時間の経過とともに変化することがありますが、一般的には最大手の老舗企業が指標銘柄とされています。
以下、指標銘柄の例です。
- フェデックス（FDX）：世界中の消費者や企業のために商品を配送。
- キャタピラー（CAT）：世界最大の重機メーカーである同社は、中国を中心とした建設業、製造業、農業への影響が大きく、指標銘柄として注目されている。
- 3M（MMM）：製造業の健全性を示す指標銘柄。
- アップル（AAPL）：世界最大級の企業。主要なサプライヤー、特に半導体関連メーカーには重要度が高い。
（2）業績の後退
一般的には2四半期連続で企業利益が前年同期比で減少すると業績が後退したとみなされます。長期的に見ると業績は株式マーケットにおけるリターンの重要な要因になりますが、業績の後退が必ずしも景気後退と一致するわけではありません。
下のチャートを見ると米国で過去６回発生した業績後退において景気後退と重なったのは2回だけだったことがわかります。青色の円は景気後退をともなわず業績の後退が発生した時期、赤色の円は業績の後退と景気後退の両方が発生した時期を示しています。
（3）業績と株価指数のウェイト
トレーダーが決算時期にトレードをおこなう際には、特定の銘柄が指数の中に占めるウェイトに応じて、指数全体に大きく影響を与える可能性があることを理解しておく必要があります。例えば、ダウ平均をトレードする場合、指数におけるウェイトが9.49％であるボーイングの決算発表は指数に大きな影響を与えますが、VISAは4.41％であるため、それほど影響を与えないと想定できます（下表参照）。このように、指標銘柄には細心の注意を払い、それが株価指数全体にどのような影響を与えるかを見極めることが大切です。
決算発表シーズン中のトレード：重要なポイント
決算発表シーズンを利用したトレードの方法 で詳細なガイドをご用意していますが、以下４つの重要事項は覚えておきましょう。
（1）「予測された」結果を把握する
企業の株価は、アナリスト予測をどれだけ上回ったか、または下回ったか、という幅で決まることが多いため、売上高や一株当たり利益（EPS）の予測数値を認識しておくことが重要です。
（2）サプライズ発表を見逃さない
決算発表に合わせてサプライズ発表がされた場合は、企業の株価に影響を与える可能性があります。例えば、自社株買いや会社のガイダンスなどがあげられます。
（3）銘柄間の波及効果を意識する
一例を挙げると、保有ポートフォリオに半導体メーカーの株式（EGダイアログ・セミコンダクター）を組み入れている場合、アップルの業績がこの株式に大きな影響を与える可能性があります。このような影響を考慮して関連銘柄を評価することは、セクターの見通しを明らかにし、投資対象のセクター切り替え（セクターローテーション）のきっかけになることもあるため、入念におこなう必要があります。
（4）予想される動きへの影響はボラティリティを考慮する
決算イベント後における株式の「予想される動き」を推測するのは非常に難しいものです。しかし、ボラティリティを念頭に置くことで、結果を見誤ることなく大きな動きに備えることができるのです。
決算発表シーズン：投資家や株式トレーダーにとって重要なこととは？
決算発表シーズンは、トレーダー自身の経験に大きな影響を与えます。事前に計画を立てるために、各社の決算発表の時期を常に把握しておくことが大切です。また、指標銘柄や潜在的な業績の後退、株価指数のウェイトなどが値動きにどのように影響を与えるかを認識しておきましょう。さらに各銘柄に期待されている決算数値を把握すると共に、分析や戦略的な目的における潜在的なボラティリティの大きさに留意し、特定銘柄のパフォーマンスが他の銘柄（または指数全体）に与える影響を理解しておくことが求められます。
これらのポイントをおさえることで、決算発表シーズンをより堅実に乗り切ることができるでしょう。
決算発表シーズンに関するよくある質問（FAQ）
決算発表シーズンが世界経済に与える影響は？
決算発表シーズンが世界経済に与える影響は、各セクターの業績やさまざまなファンダメンタルズなど数多くの要因によって左右されます。指標銘柄が予想を上回る展開をすれば好調な企業環境を反映している可能性がありますが、株式マーケットは複雑に経済と相互作用しているため両者の関係は必ずしも予測できるものではありません。
決算発表シーズンは金融不況の影響をどのように受けますか？
金融不況は決算発表シーズンに大きな影響を与える場合があります。景気の低迷や長引く不況による製品やサービスへの需要減退は、当然のことながら複数のセクターの収益が予想を下回ることになります。しかし、生活必需品やヘルスケアなどの ディフェンシブ銘柄は、このような状況下の低迷局面をうまく切り抜けて魅力的な銘柄となる可能性があります。
決算発表シーズンは米国と英国で同じ日程ですか？
英国や欧州企業の大部分が、米国企業の約2～3週間後に業績発表をする傾向があります。
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