ETFとは、さまざまな資産を一つのパッケージとしてトレードできる人気の投資商品です。本記事では、ETFの種類やETFのトレードにおけるメリットについて説明していきます。
ETF(上場投資信託)とは?
上場投資信託(ETF)は、さまざまな資産で構成される投資商品で、株式から債券、コモディティなどを一つのパッケージにしたものです。株式マーケットでトレードされ、株式と同じように簡単に売買することができます。
例えば、ETFでは日経平均やダウ平均、香港ハンセン指数など日本を含む世界の株式市場を丸ごと手軽に買うことができます。投資信託にもそういったものはありますが、ETFは株式マーケットに上場しているという違いがあります。
株式と投資信託の特徴を併せもつのがETF
株式と投資信託の特徴を併せもつのがETFという金融商品です。ETFは株式の「取引所が開いている時間帯であれば、いつでもトレードできる」という特徴を持っています。加えて、投資信託の「比較的少額の資金で複数の銘柄に分散投資することができる」という特徴も持っているのです。要するに、ETFはリアルタイムでトレードすることができ、かつ少額の資金で複数の銘柄に分散投資もできる金融商品ということになります。
ETFは当初、株式に投資するETFしか存在しませんでしたが、その後、債券に投資するETFが誕生することになりました。現在ではETFを使い、様々な投資対象を手軽にリアルタイムでトレードできるようになっています。
ETF市場は成長し続けている
世界で最初にETFが誕生したのは、今から約30年前の1990年3月17日であり、カナダ・トロント株価指数に連動するETFでした。そして、米国で初めてETFが上場された1993年はETFの銘柄がわずか3本のみ、資産残高約10億米ドルという非常に小さな規模になっていたのです。
しかしながら、それからETF市場は成長し続けています。投資信託や年金基金の運用資産額には遠くおよびませんが、近年、ETFへの投資は爆発的な人気を博しています。例えば、スタティスタ社のデータによると、2019年に世界のETFに投資されている資金は、前年の4.6兆ドルから増加して、約6.1兆ドルに達しています。
下図のチャートでは、今世紀におけるヘッジファンドと比較した増加基調を示しています。

ETF(上場投資信託)の特徴
年々成長を続けるETF市場ですが、それはETFの特徴によるものが大きくなっています。例えば、通常の株式と同じように取引所にて、リアルタイムでトレードすることができたり、目標とする指数・指標に連動する投資成果を目指す投資信託であることから、いわゆるパッシブ運用をおこなうため、相対的に信託報酬などの運用コストが低かったりします。
以下でETFの主な特徴について解説します。
分散投資ができる
ETFは手軽に分散投資をすることができるという特徴があります。なぜなら、ETFへの投資は比較的少額で指数を買うのと同じ効果が期待できるからです。例えば、自分で東証株価指数(TOPIX)に連動する株式投資をおこなおうとすると、数十億円単位のまとまった資金が必要になりますが、ETFであれば約20万円から投資することができます。つまりETFを活用すれば、約20万円でTOPIXを構成している約2,200銘柄への分散投資と同じ効果が期待できるということです。
数十億円単位のまとまった資金を用意するのはほとんどの個人投資家では無理ですが、ETFであれば個人投資家でも十分投資可能です。したがって、ETFを使えば少額しか用意できない個人投資家でも手軽に分散投資をすることができます。
値動きがわかりやすい
ETFには値動きがわかりやすいという特徴もあります。というのも、ETFは指数の動きに連動するように運用されているため、値動きがわかりやすくなるのです。例えば、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)であれば、テレビのニュース番組などで毎日価格が報道されており、簡単に情報を得られることから値動きを把握しやすくなります。
加えて、ETFは証券取引所に上場しているため、ウェブサイト等でいつでも現時点での価格や構成銘柄、そのウェイトなどの情報を確認することが可能です。そのため、指数に連動するETFは手軽に価格に関する情報を手に入れることができ、ベテランの投資家でなくとも多くの場合で値動きを比較的簡単につかむことができます。
リアルタイムに取引可能
ETFは株式マーケットでトレードされており、株式と同じように簡単にトレードすることができます。つまり、取引所が開いている時間帯であれば、いつでもETFをトレードすることが可能です。普通(非上場)の投資信託は、1日1回その日の終値で基準価額が算出され、その基準価額を使っての1日1回のトレードしかできません。しかし、ETFであれば株式と同じように指値注文や成行注文などの注文方法を使うことができ、相場を見ながらリアルタイムでトレードすることもできます。つまり、自分のトレードスタイルに合わせて柔軟にトレードすることが可能です。
ただし、1日に何度もトレードする場合には、その分売買委託手数料等がかさんでしまうことになるため注意が必要になります。
保有コストが低い
ETFに投資する際には「売買コスト」と「保有コスト」の2種類のコストがかかります。
「売買コスト」とは株式と同じで売買委託手数料のことです。最近では売買コストが低下してきており、手軽に投資できるようになってきてはいますが、トレード回数が多くなりがちな短期トレードをおこなう場合は注意が必要になります。
「保有コスト」とは主に信託報酬のことです。ETFは一般的に普通(非上場)の投資信託に比べて信託報酬が安いと言われています。ETFは販売会社への手数料やそのファンドにかかる事務費用(運用報告書の印刷費等)が安価であることから管理コストが安くなっているのです。そのため、ETFはコスト効率が高い金融商品であると言えるでしょう。保有コストは長期的に見ると、投資のパフォーマンスに大きな影響を与えるため、長期投資では非常に重要な項目になります。
ETFにはどのような種類があるか
ETFの種類には、特定の指数に連動するように設計されたETFから、特殊なコモディティを対象とした商品まで様々なものがあります。大まかに言えば、ETFの種類は以下のように定義できます。
- 社債、国債、地方債を組み入れた債券ETF
- 金や原油などの主要商品に投資するコモディティETF
- USDやCADなどの通貨に投資する通貨ETF
- バイオテクノロジーや小売など特定のセクターと連動するセクターETF
- 株式を空売りして、弱気トレンドから利益の獲得を目指すインバース型ETF
例えば、ヘルスケア・セレクト・セクターSPDRファンド(XLV)は、様々なヘルスケア企業を組み入れたヘルスケアセクターのETFです。以下のチャートは、このETFの会社別構成比率を示したものです。

ETFに投資するメリットとは
ETFはマーケットの取引時間内であればいつでも売買できること、幅広い資産の中から選択できること、税制面での優遇措置があることなど、さまざまなメリットがあります。ここでは主なメリットをまとめてみました。
- 利便性:ETFは様々なセクターの資産にアクセスできます。また、投資信託はマーケットの閉場後に決済されるのに対し、ETFはマーケットの取引時間内であればいつでも売買することができます。
- コスト: 委託手数料や経費率は適用されますが、販売手数料はありません。
- 分散化: 分散ポートフォリオにおいて、より効果的にリスク管理できる可能性があります
- 税効率:ETFはキャピタルゲインを分配しないことが多いため、投資家によっては長期保有することで株式の長期投資よりも有利な税制を受けることができます。
- 多用途性: 株式と同じようにトレードされるため、指値注文や逆指値注文などのさまざまな注文が可能で、投資信託では選択できない信用取引もおこなうことができます。
とはいえ、特定のマーケットでトレードする際に、ETFが最適な手段であるかどうかは検討する必要があります。例えば、EWA ETFでは、オーストラリアへのエクスポージャーが高い企業、すなわちオーストラリアの消費者や経済に効果的にアクセスできることを意味しています。しかしながら、投資家はAUD/USD の通貨ペアを通じて、オーストラリア経済のパフォーマンスをトレードすることもできます。FXは平日5日間24時間トレードが可能で、流動性が高いメリットもあります。
ETFに投資するデメリットとは
ETFには多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。
まず、ETFは非上場の投資信託と比べて銘柄数が少ないです。国内で販売されている投資信託は約6,000銘柄ありますが、ETFは約300銘柄となっています。しかし、ETFは国内や海外の株や債券だけでなく、金や原油など幅広い商品に投資することができるため、余程こだわりがある方以外は銘柄が少なくて困るということはないかもしれません。
また、ETFの純資産総額が小さくなると上場廃止リスクが高くなります。つまり、ETFの純資産総額が小さかったり、減り続けていたりすると上場廃止となり、運用が途中で止まってしまう可能性があるということです。そのため、純資産総額が大きいETFを選ぶことが、上場廃止で運用が止まってしまうことを避けるために重要になります
最も人気のあるETFは何か
2022年10月の月間のデータで出来高が最も多かったETFは、株式マーケットの香港ハンセン指数に連動する「トラッカー・ファンド・オブ・ホンコン」(02800)です。第二位は米国のS&P500指数に連動する「SPDR S&P500ETF」(SPY)となっています。第三位は同じく米国のナスダック100指数に連動する「インベスコ QQQ 信託シリーズ」(QQQ)であり、米国の株式指数に連動するETFの人気の高さが目立ちました。
他にも、米ドル建てリキッド・ハイイールド指数に連動する「iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債ETF」や新興市場の株式と連動する「iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット ETF」(EEM)、NYSE ARCA金鉱株指数のパフォーマンスに連動する「VanEck Vectors Gold Miners ETF(GDX)などが人気です。
基本的には自分が知識や興味のある分野のETFをトレードすべきですが、まずは人気のある米国の株式指数に連動するETFから始めてみるのも一つの手かもしれません。
ETFの買い方
ETFとは何か、そして人気のあるETFにはどのようなものがあるのかを理解したところで、次は具体的なETFへの投資方法について説明します。とはいえ、難しい手順が必要になるわけではなく、FXや株のトレード経験があれば迷うことは少ないはずです。
投資を実行するには、以下のような手順をおこなう必要があります。
1. 証券会社の口座を開設する
ETFに投資するためには、当然ながら証券会社の口座を開設することが必須になります。証券会社では個別株式のように指値注文や成行注文、信用取引などを使い、自分のトレードスタイルに合わせて様々なETFをトレードすることが可能です。また、東証に上場しているETFは、全ての証券会社で購入することができます。特定のETFを手数料無料でトレードできる証券会社もあるため、自分が主にトレードするETFを決めている場合は証券会社ごとの手数料を調べてみるのもよいでしょう。
長期保有するケースでは売買委託手数料に加えて各ETFの年間経費率を調べ、そのETFを保有するためにどの程度のコストが発生するかを必ず確認してください。
2. ポートフォリオを計画する
ポートフォリオを構築する際には、分散させることが重要です。要するに、多くのETFは他のETFと似たような保有銘柄を組み入れているため、自分のポートフォリオが様々な資産クラスをカバーし、その中でより広い範囲の資産を持つようにすることが重要なのです。
例えば、既存のグロース株にフォーカスしたETFを保有する一方で、リスクのバランスをとるために、小型株ETFやセクターまたは地域ごとに異なるエクスポージャーを持つETFを保有することが考えられます。金や原油に連動するETFを選択肢に入れてもよいでしょう。人気度を測るために出来高を見たり、最近のパフォーマンスを知ったりするために各ETFのパフォーマンス履歴を調べることも重要です。
ただし、過去の実績は将来の成果を示すものではないということには注意してください。
3. 注文する
トレードするETFが決まったら、実際に注文してみましょう。前述した通り、ETFは株式と同様に取引所が開いている時間帯であればリアルタイムでトレードすることが可能です。東証が開いている時間帯は、平日の9:00~11:30(前場)と12:30~15:00(後場)になります。つまり、東証に上場しているETFの場合、この時間帯であればリアルタイムでトレードすることが可能です。
注文の手順も株式と同じように、ティッカーシンボルや価格、株数などを確認しながら注文を進め、成行注文や指値注文、逆指値注文などを使って注文をおこないます。
もし取引ツールの操作方法が分からない場合は事前にデモ口座などを使って確認しておくと、実際に注文をする時にスムーズにおこなうことができるためおすすめです。
まとめ
ETFのトレードは徹底的に調査をおこないバランスのとれたポートフォリオの一部として実行すれば、魅力的な投資オプションとなり得ます。そのために以下の重要ポイントを押さえておきましょう。
- ETFの種類を知る 債券ETFからコモディティETFまで、それぞれの商品を構成する資産を把握することで、バランスのとれたポートフォリオを構築することができます。
- 投資やポートフォリオの目標を明確にする 税務上の効率性や利便性など、なぜこの商品を個別資産と比較して使用するのかを確認する必要があります。
- マーケットを調査する 最も人気のあるETFは何か、そしてその理由は?他のトレーダーがトレードしたETFの実績を調べると、自分のポートフォリオを構築するためのヒントになるかもしれません。
調査を終えたら、次は口座を開設して注文するのみです



トレードのヒントを活用してより優秀なトレーダーに
前述のように、ETFはさまざまな資産で構成されています。DailyFXはそれらの資産のうち、FX、指数、コモディティを中心に多くの資産をカバーしています。
- 株式ETFを支える株式についての詳細は 株式の種類 で解説しています。
- コモディティと株式の比較 について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
- FXに興味をお持ちの場合は、FXトレーダーになるにはをご覧ください。
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