世界の株式市場は、特定のグループ、つまり「株式市場のセクター」に分類することができます。膨大な数の銘柄をこのように整理することで、トレーダーはトレードの際に資産をより管理しやすい形で確認することができます。
株式セクターのパフォーマンスはセクターごとに大きく異なる場合があります。経済の時流に左右されるセクターもあれば、景気後退期に優れたパフォーマンスを示すセクターもあります。さまざまな株式セクターの特徴を知ることで、トレーダーは株式の評価方法など、より高度な株式分析ができるようになります。
本記事では、各セクターを経済全体と比較して分析すると共に、トレードをおこなう上で参考となる情報を提供します。補完的なガイドとして、株式市場が経済に与える影響をお読みください。この記事では、そのガイド内で語られている内容についても一部言及しています。
米国株式セクターは、世界産業分類基準（GICS）にもとづいて11に分類されています。
米国株式セクター分類1：資本財・サービス
資本財セクターは、製造業や建設業で使用される機械や設備の製造および、それらに関連するサービスを提供する企業で構成されています。
一般的に、株式市場のセクターは経済に様々な形でつながりを持っており、特に資本財銘柄は経済の浮き沈みに敏感です。このように経済全体と同じような動きを示す銘柄は、パフォーマンスが景気循環における経済状況と密接に関連していることから、景気循環株と呼ばれています。
経済が成長すると、総需要の増加に対応するために工場の生産能力を高め、結果として収益が増加します。また、景気が落ち込めば、企業や消費者の消費が減ります。支出（需要）が減ると、その波及効果で資本財セクター企業の売上高が落ち込み、収益も減少します。
したがって、資本財株やその他の景気循環株をトレードする際には、経済の現状とその方向性についてしっかりと理解しておくことが重要です。トレーダーは、経済全体のパフォーマンスの指標として株価指数を頻繁に活用します。主な株価指数は、当社の主要株価指数のページでご覧いただけます。 指数には、S&P 500、FTSE100、DAX 30、ASX 200、ハンセン指数などが含まれます。
代表的な資本財銘柄：
- ゼネラル・エレクトリック（GE）
- キャタピラー（CAT）
- ウーバー・テクノロジーズ（UBER）
- ユナイテッド航空（UAL）
米国株式セクター分類2：素材
素材や原材料には、原油、金、紙、石などがあります。このセクターで最も一般的なのは、金属や鉄鉱石などのような鉱業生産物です。よって、原材料の探査、開発、加工に携わる企業がこのセクターに含まれます。
多くの企業が、最終製品の製造に必要な原材料の供給をこの分野の企業に依存しています。例えば、家具メーカーは、物理的に木の伐採、集材、輸送をおこなう企業に依存しており、これらの木が最終的に素材として活用できる木材に製材されます。
一般的に、素材は自然界に存在しており、そのほとんどが有限であると言われています。また、再利用可能なものもありますが、どの段階においても供給に制約があります。
代表的な素材銘柄：
- デュポン
- BHPビリトン
- アルセロール・ミッタル
- リオ・ティント
米国株式セクター分類3：エネルギー
エネルギーセクターは、経済で必要とされるエネルギーの生産や配給において、直接または間接的に関与する銘柄で構成されています。これらの企業は、石油・ガスの掘削・生産、パイプライン・インフラ、電力・天然ガスの公益事業、鉱山、再生可能エネルギー、化学製品の分野で、1つ以上の事業を展開しています。
この業種に含まれる企業は、非再生可能エネルギーと再生可能エネルギーのいずれかに分類されており、近年は後者への関心が高まっています。
エネルギー株は、基礎となるコモディティ価格にもとづいて変動する傾向 があります。この関係は、基礎となるコモディティ価格によって、生産者がどの程度の価格で販売できるかが決定されるため、理にかなっているのです。
下図は、エクソンモービル株が 原油価格 とどれだけ密接に連動していたかを示しています。
この図からわかるように、エネルギーセクターの株式をトレードする際には、基礎となるコモディティ価格にも注目する必要があるのです。
コモディティページにアクセスして、最もトレードされているコモディティと、マーケットを動かす要因をご覧ください。
代表的なエネルギーセクター銘柄：
- エクソンモービル
- BP
- ロイヤル・ダッチ・シェル
- シェブロン
米国株式セクター分類4：生活必需品
生活必需品セクターには、消費者にとって必要不可欠な製品を提供するすべての銘柄が含まれます。例えば、パン、米、コーンミールなど主食となるものに加えて、アルコールやタバコなどの品目にも範囲が及びます。
このセクターは6つの産業グループに分けられます。
- 食品
- 食品および生活必需品の小売り
- 飲料
- 家庭用品
- パーソナルケア用品
- タバコ
生活必需品は「非循環株」や「ディフェンシブ株」と呼ばれ、安全資産のような株とみなされています。景気の良し悪しに関わらず、人々は生活するための基本的な必需品を必要としているからです。そのため、生活必需品は通常安定した配当と業績を特徴としますが、事業全体の低成長に悩まされる傾向があります。生活必需品銘柄は非循環的な性質を持っているため、景気後退期に景気循環に敏感な銘柄が下落した後に、この銘柄が求められる場合が多いのです。
生活必需品は、競合他社との差別化がほぼされておらず、類似した製品を販売しているため、競争が激しい業界です。したがって、これらの企業にとっては、経費を最小限におさえ、常に新しい革新的な技術を求めてコストをおさえることが不可欠です。
代表的な生活必需品銘柄：
- ペプシコ
- コルゲート・パルモリーブ
- フィリップ・モリス・インターナショナル
- クローガー
米国株式セクター分類5：一般消費財・サービス
一般消費財・サービス銘柄とは、「生活必需品以外」とみなされる製品の販売やサービスを提供する企業のことです。このセクターには、アマゾンやナイキのように、所得の高い消費者にアピールする高品質な商品やサービスを提供する企業が含まれます。
景気が良いときには、一般消費財・サービス銘柄が好調に推移する傾向があります。完全雇用に近い経済状況になれば、財とサービスに対する総需要が高まり、必需品を購入した後の余剰資金が増えるためです。
トレーダーや投資家は、中産階級が急速に成長している国や、景気サイクルの回復期に入った国で、一般消費財・サービス銘柄を選好することがよくあります。
代表的な一般消費財・サービス銘柄：
- メイシーズ
- アマゾン
- ナイキ
- フォード・モーター
米国株式セクター分類6：ヘルスケア
株式市場のヘルスケア・セクターは、医療サービスや医療保険を提供する企業、医療機器や医薬品を製造する企業で構成されています。
このセクターは、技術や研究の進歩により、救命治療や医薬品の提供に貢献しています。景気の状況にかかわらず、患者は必要な薬を求めるため、このセクターの医薬品銘柄は非循環的な傾向があります。
また、このセクターは人口動態にもある程度左右されます。大規模集団である「ベビーブーム」世代が仕事を引退して高齢者となり、より多くの医療を必要としているとすれば、ヘルスケア・セクターの財やサービスに対する需要が高まり、その結果として、同セクターの収益が増加することを意味しているのです。
しかし、そこにはいくつかの落とし穴があります。新薬の導入を目指す製薬会社は、研究開発費に数百万ドルもの投資をおこないますが、規制当局から承認を得られなかった場合には、すべてが無駄になってしまうのです。その結果、楽観的な予測がパニックへと変化し、株価が非常に大きく変動することがあります。
代表的なヘルスケア銘柄：
- ファイザー
- ノバルティス
- ジョンソン・エンド・ジョンソン
- インディビア
米国株式セクター分類7：金融
金融セクターは、個人と企業に金融サービスを提供する企業で構成されています。近年、フィンテックの発展により新規参入企業が増えているため、このセクターは大きな広がりをみせています。銀行、投資会社、保険会社などがここに含まれます。
金融セクターは、経済全体にとって極めて重要であり、その健全性は通常、経済全体の強さの現れでもあります。それは、個人や企業が、新たな住宅購入のための住宅ローンや事業拡大における商業用ローンなどの資金調達において、銀行を頼りにしているからです。消費が増加すれば、経済の活力の源である消費者信頼感が高まります。同様に、個人は自分の資産を損失から守るために保険会社を頼っています。
金融セクターは、経済が回復局面にある時は良好なパフォーマンスを示す傾向があり、経済が最大の能力に近い状態で機能しているときには、パフォーマンスはさらに向上します。
ただし、景気後退が長引くと、金融セクターは最も大きな打撃を受けるセクターの一つです。 中央銀行が借入と消費を促すために利下げをおこなうと、それによって銀行の貸付金に対する利益率が押し下げられて収益が減少し、配当金が減る（またはゼロになる）ことになります。
投資会社では、顧客が投資した資金に損失が生じた場合、資金流出や早期償還が発生し、会社の収益に影響が及びます。
代表的な金融セクター銘柄：
- ゴールドマン・サックス
- シティバンク
- アメリカン・インターナショナル・グループ（AIG）
- バークシャー・ハサウェイ
米国株式セクター分類8：情報技術
情報技術セクターは「テクノロジー・セクター」とも呼ばれ、テクノロジー製品・サービスを研究、開発、販売する企業が含まれます。
テクノロジー銘柄は、その成長率の高さからプレミアム価格でトレードされる傾向があります。そのため、高い評価を受けることが多く、経営陣は配当を実施せず余剰資金の再投資を好む傾向にあります。
テクノロジー銘柄で構成された株価指数：
- 米国テクノロジー100銘柄（ナスダック100指数） - テクノロジー銘柄が指数全体の約50％を占める
- 米国Fang（FAANG指数） - フェイスブック（Facebook）、アマゾン（Amazoｎ）、アップル（Apple）、ネットフリックス（Netflix）、アルファベット（Alphabet）。アルファベットはグーグル（Google）のことを意味します。
インターネットの拡大、電子商取引の導入、データ保護法の範囲拡大に伴い、ハイテク企業はユーザーデータの使用、分析、拡散の方法について監視の対象となっています。これは昨今、このセクターが直面している最大の課題の一つです。
このセクターは、さらに4つのサブセクションに分けられます。
- 半導体
- ソフトウェア
- ネットワーク・インターネット
- ハードウェア
代表的なテクノロジー株：
- エヌビディア
- セールスフォース
- マイクロソフト
- アップル
米国株式セクター分類9：電気通信・サービス
電気通信セクターは、言葉、音声、声、画像などのデータを世界中に伝送する企業で構成されています。これらの企業はグローバルな通信ネットワークを実現しています。また、技術の進歩により、どんどん安価になっています。
モバイル・サービスは、従来からの事業であった固定回線のインフラに比較すると最新の進歩を遂げており、通信は、音声のみから画像や文字、データの転送へと移行しています。
電気通信サービスは、経済の重要な部分を構成しています。この業界は、投資家が保有ポートフォリオにバリュー株やグロース株を選択できるレベルにまで成長しています。グロース投資家は、ワイヤレスサービスを提供する中小企業にバリューを見出すかもしれません。その一方で、機器や関連サービスを扱う大企業は、より保守的でインカム重視の選択肢を提供する傾向があります。
代表的な通信関連銘柄：
- ベライゾン
- AT&T
- T-モバイル
- ボーダフォン・グループ
米国株式セクター分類10：公益事業
公益事業セクターは、天然ガス、上下水道、電気、ダムなどの基本的な設備を提供する企業で構成されています。
公益企業は必要不可欠なサービスを提供しているため、その多くは厳しい規制の対象となっています。
例えば、公益企業は単に収益を上げるために料金を上げることを禁止されています。その結果、このセクターは通常、安定した配当を提供し、株価の変動が少なくなっています。
基本的な設備は選択の余地がないため、投資家は景気後退期であってもこれらの財やサービスに対する需要が常にあると考えています。景気が悪化すると、他の景気循環銘柄の変動が大きくなるので、投資家は資本を保全するためにこのセクターを選好することがあります。
代表的な公益事業銘柄：
- NRGエナジー
- センターポイント・エナジー
- ネクステラ・エナジー
- デューク・エナジー
米国株式セクター分類11：不動産
一般的に不動産セクターは、不動産売買や不動産を保有して収入を得る企業で構成されています。このセクターは、住宅用、商業用、産業用の各サブセクターに分類されます。
住宅用不動産では、住居・住宅として使用される物件の売買がおこなわれます。その形態は、戸建、アパート、コンドミニアム、計画的ユニット開発など様々です。
商業用不動産では、ショッピングモール、小売店、ホテル、オフィススペースなどビジネス目的で使用される不動産に投資されます。
産業用不動産では、倉庫、工場、プラントなど製造や生産に使用される不動産を扱います。
投資家が不動産セクターのポジションを得るには、主に4つの手段があります。
- 物理的に物件/不動産を購入する
- 不動産に直接投資する上場企業の株式購入
- 不動産投資信託（REIT）への投資・売買
- 不動産セクターの株価指数
不動産会社は景気循環的な性質を持っており、景気後退期には低迷する傾向があります。というのも、景気後退時には、人員削減や縮小などの懸念が高まり、20～30年の住宅ローンを組む覚悟ができない人が増えるからです。
株式セクターに関するよくある質問（FAQ）
最もパフォーマンスの高い株式セクターは何ですか？
多くの人が、他のセクターを常にアウトパフォームする魔法のセクターを見つけたいと思ってこの質問をします。実際には、それぞれの株式セクターには、パフォーマンスが好調の時期もあれば、悪化する時期もあり、よりバランスのとれた、あるいは分散されたアプローチが必要となります。また、株式は正の相関を示すことがあり、これは上昇トレンドでは素晴らしいことですが、下落相場では悲惨なことになります。一般的な分散投資では、例えばFXやコモディティ市場のように、異なる資産クラスのポジションを構築します。FXと株式の比較 と コモディティと株式の比較 をご覧ください。
景気後退期に良好に推移するのは、どこのセクターですか？
歴史的に見れば、景気後退局面で最も良好に推移するセクターは、一般消費財・サービス、公益事業、さらにはヘルスケア・セクターの一部などの非循環型のセクターです。経済成長率や消費者心理が低下することや、マイナスになった場合においても、人々は食品、飲料、暖房、必要不可欠な医療、電気などの必需品を必要としているため、これらのセクターは堅調に推移する傾向があります
株式市場のセクターに投資するにはどうすればいいのでしょうか？
特定の株式セクターへのポジションを求めるトレーダーは、セクター内の個々の銘柄をトレードするか、あるいはシンプルに業種全体をフォローする上場投資信託（ETF）をトレードするかを選択できます。どちらのアプローチにもメリットとデメリットがありますので、十分な情報を得た上で判断してください。