
マーケットが混乱している時、トレーダーは嵐を乗り切るためにセーフヘイブン(安全な避難先)であるディフェンシブ銘柄に注目するでしょう。それはディフェンシブ銘柄がポートフォリオの分散化とリスク軽減を可能にするからです。
本記事では、ディフェンシブ銘柄の活用について以下の重要なテーマに沿って説明します。
- ディフェンシブ銘柄とは何か?
- 代表的なディフェンシブ銘柄
- ディフェンシブ銘柄を保有するメリットとデメリット
- ディフェンシブ銘柄の注意点
- ディフェンシブ銘柄をトレードする際のポイント
- 注目すべきその他のディフェンシブ銘柄



ディフェンシブ銘柄(安全資産株)について解説
世界の株式マーケットが大きく下落したり急騰や急落を繰り返すような不安定な展開が続いたりした際などに、トレーダーから物色されやすいのが防御的な意味合いの強いディフェンシブ銘柄です。この項目ではディフェンシブ銘柄に投資するための基本的な知識として、ディフェンシブ銘柄とは何か、ディフェンシブ銘柄と景気循環株の違いなどについて解説させていただきます。
初心者が気になる安全資産株とディフェンシブ銘柄の違い
安全資産株とディフェンシブ銘柄は、同じ非景気循環株の動きを指す同義語です。株の経験が浅い方は、急に言われてもピンとこないかもしれません。とはいえ、安全資産とは預金、国債、元本保証付きの保険商品や年金など、相場変動などによる元本割れのリスクが無く、基本的には元本が保証されている資産であることを覚えておけばイメージがしやすいはずです。株は元本が保証される金融商品ではありませんが、安全資産株(ディフェンシブ銘柄)は元本が目減りするリスクが低いという大きな特徴があります。
非景気循環株(ディフェンシブ銘柄)とは?
非景気循環株(ディフェンシブ銘柄、ディフェンシブ・ストック)とは、マーケットが混乱している時でも価値の維持や上昇が期待できる銘柄になります。つまり、経済の見通しが不透明な時でもディフェンシブ銘柄を保有するのであれば、リスクを低く抑えることが可能です。
投資家やトレーダーは、金融危機や経済不況などの影響でマーケットが低迷した時の損失を最小限に抑えるためなどの目的でディフェンシブ銘柄に注目しますが、「安全資産」とみなされる銘柄はマーケット環境の変化に応じてある程度変わります。
また、ディフェンシブ銘柄の役割はポートフォリオを分散させること、あるいは単に下落するマーケット環境に打ち勝つものであることを心に留めておいてください。
景気循環株とは?
景気循環株は景気敏感株やシクリカル銘柄とも呼ばれる、景気の動向によって業績が左右される銘柄のことです。マーケットが低迷し景気後退におちいると、景気循環株の株価は下落する傾向があります。逆に経済が好調な時は、これらの企業の収益が増すことで株価は上昇する傾向があります。
景気循環株は製造業や素材の銘柄が多く、例えばBMWやダウ・ケミカルといった自動車会社や化学メーカーが挙げられます。景気敏感株の値動きは分かりやすく、景気が好調なら株価は上昇、景気が後退するなら株価も下落しやすくなります。
まずは、景気循環株が景気に左右されやすいと銘柄であるということを覚えておきましょう。
非景気循環株(ディフェンシブ銘柄)と景気循環株の違い
非景気循環株(ディフェンシブ銘柄)とは前述した通り、株式マーケットの状況に関わらず投資家に安定したリターンをもたらす銘柄のことです。通常、景気後退期にマーケットの動きを上回り、景気拡大期にはマーケットの動きを下回ります。ディフェンシブ銘柄は大きく分けると以下のような3つのカテゴリーに分類できます。
- 公益事業
- 生活必需品
- ヘルスケア
水道や石油、電力などの公益事業は消費者にとって必要不可欠なものであるため、経済が低迷している時にはこれらの企業が好まれます。また、衛生、食品・飲料などの習慣性がある消費財も経済状況に関わらず購入されるため、ディフェンシブ銘柄とみなされます。さらにヘルスケアも、金融、経済、社会がどのような状況であっても変わらずに購入される商品です。
一方、景気循環株はマーケットの状況にリターンが大きく左右される銘柄です。景気後退期にはマーケットの動きを下回り、景気拡大期にはマーケットの動きを上回る傾向があります。景気循環株は大きく分けると以下のような2つのカテゴリーに分類可能です。
- 素材産業
- 設備投資関連銘
景気が良いと製品がたくさん売れるため、素材産業や設備投資関連銘は大きな利益を稼ぐことができます。
代表的なディフェンシブ銘柄(安全資産株)
変動が激しく不安定な状況下において最適なディフェンシブ銘柄は、前述で分類したディフェンシブ銘柄が該当します。以下、個々のカテゴリーにおける代表的なディフェンシブ銘柄を紹介します。
公益事業株
公益事業株(公益株)とは、電気やガス、水道などの日常生活に必要不可欠なインフラを提供する企業の株式のことです。日本では水道は公営の自治体がほとんどで、株式のイメージがないかもしれません。しかし、世界では水道を公営から民営に切り替えている国もあり、水道会社の株式も投資の対象となっています。米国株で言えば、ヨーク・ウォーターが水道事業会社です。
- ネクステラ・エナジー
- サザン・カンパニー
- ヨーク・ウォーター
- ニュージャージー・リソース
- キャボット・オイル・アンド・ガス
生活必需品株
生活必需品株とは衛生、食品・飲料などの日々の生活に欠かせないものを取り扱う企業の株式のことです。米国株では世界最大の一般消費財メーカーであるプロクター・アンド・ギャンブルが有名です。圧倒的なブランド力が特徴的な企業であり、P&Gという略称を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。その他にも、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が長期保有しているコカ・コーラや会員制の倉庫型ショップであるコストコ・ホールセールなど日本でもよく知られている企業が多くあります。
- プロクター・アンド・ギャンブル
- コルゲート・パルモリーブ
- コカ・コーラ
- ウォルマート
- フィリップ・モリス・インターナショナル
- コストコ・ホールセール
ヘルスケア株
ヘルスケア株とは、誰もが人生のどこかで必要とする医療を取り扱う企業の株式のことです。日本や米国の医療費は右肩上がりで上昇しており、多くのヘルスケア関連企業が収益と株価を着実に成長させてきました。米国株では医薬品大手のジョンソン・エンド・ジョンソンなど日本で有名な企業が多くあります。その他には、バイオンテックと共同で新型コロナウイルスワクチンを開発したファイザーなども有名です。
- ジョンソン・エンド・ジョンソン
- ファイザー
- メルク・アンド・カンパニー
- ユナイテッド・ヘルス・グループ
ディフェンシブ銘柄(安全資産株)を保有するメリットとデメリット
ディフェンシブ銘柄(安全資産株)を保有するメリット
ディフェンシブ銘柄は景気に影響を与えるようなニュースに強く反応することが少ない傾向があります。一方、景気循環株は強く反応することが多いです。つまり、ディフェンシブ銘柄は下落幅が限定的であり、価格が安定しやすいというメリットがあります。
加えて、配当利回りが高い銘柄が多いことも大きな魅力と言えます。ディフェンシブ銘柄にはすでに成熟した安定企業や大企業が多くなっています。一般的に企業は成熟期に入ると利益が伸びにくくなるため、株主を引き止めておくためにも配当金を増やす傾向があり、高い配当利回りにつながりやすいのです。
そのため、ディフェンシブ銘柄には価格が安定しやすい、配当利回りが高いといったメリットがあります。
ディフェンシブ銘柄(安全資産株)を保有するデメリット
ディフェンシブ銘柄はメリットだけでなくデメリットもあります。まず、ディフェンシブ銘柄はキャピタルゲインを得ることが難しい傾向があります。キャピタルゲインとは保有している資産を売却することによって得られる売買差益のことです。ディフェンシブ銘柄は株価の変動が小さいため、得られるキャピタルゲインも少なくなることがよくあります。
また、ディフェンシブ銘柄であっても株価が暴落してしまうこともあります。例えば、東日本大震災が起こった際には東京電力は3日連続でストップ安となり、結果として暴落してしまいました。ディフェンシブ銘柄であっても絶対に大きな下落が起こらないという保証はないということを覚えておきましょう。
ディフェンシブ銘柄(安全資産株)でもマザーズやJASDAQは注意
ディフェンシブ銘柄であっても、マザーズやJASDAQに上場している企業の株には注意が必要になります。というのも、マザーズやJASDAQに上場しているベンチャー企業や新興企業の株価は景気によって大きく動いてしまうことがあるからです。ベンチャー企業や新興企業は大手企業のように財務的な安定感がないことが多く、それに応じて株価も大きく動くことが多くなってしまいます。そのため、株価の安定を重視してディフェンシブ銘柄に投資する場合は、東証一部に上場している大企業で業績が安定している銘柄を選ぶのがおすすめです。
ディフェンシブ銘柄(安全資産株)をトレードする際のポイント
ディフェンシブ銘柄は経済の低迷を乗り切るための防衛手段として用いられますが、たとえ ディフェンシブ銘柄といえどもプラスのリターンを得られない可能性があります。
景気低迷時にはディフェンシブ銘柄が株式マーケット全体よりも高いパフォーマンスを示すことは多いのですが、これが利益につながるわけではありませんディフェンシブ銘柄を見極めてトレードする際にはいくつかの要素を考慮する必要があるのです。
ベータ値
トレーダーは投資前に銘柄のベータ値を考慮する必要があります。ベータ値とは、個々の株式とマーケット全体における相関関係を指しています。ベータ値が1の場合は、株価とマーケットが強く相関していることを示しています。ベータ値が1より大きい場合はマーケットよりも変動しやすいことを示し、ベータ値が低い(0に近い)場合はマーケット状況との関連性が低いことを示しています。これによりトレーダーはボラティリティの上昇をヘッジすることができます。
配当
一般的な経験則から言えば、配当利回りが高い(6%超)銘柄はディフェンシブ銘柄として最適であると考えられます。このような企業はマーケットが不安定な時期にも価値を維持しているものです。配当は固定収入源になりますが、配当再投資プランによって企業に再投資されるケースもあります。
PER(株価収益率)
ディフェンシブ銘柄はPERが割安なことで知られています。PERとは、企業の1株当たり利益に対する株価の比率のことです。この比率で企業を評価することで、株価が割安か割高かを判断することができるのです。PERが低い銘柄は、過去の動きに比べて割安かパフォーマンスが優れていると考えられるため、ディフェンシブ銘柄の理想的な候補になります。
大手優良企業
例外はありますが、株式マーケットで定評のある企業もディフェンシブ銘柄として優れた候補になりえるものです。人々は確立されたブランドに固執する傾向があり、たとえ株価が下落している時でも企業に信頼を置いているものです。一般的にこのタイプの株は景気後退時において中・小型株よりも価値が低下しない傾向があります。
特定の要因が他の要因よりも優位に立つことはありません。ディフェンシブ銘柄を選択する前に徹底したリサーチと分析をおこなう必要があります。上記すべての要因を精査してポートフォリオのリスク許容度に最も適した銘柄を見つけ出してください。



注目すべきその他の安全資産(ディフェンシブ銘柄)とは
安全資産は、株式マーケットだけに限りません。景気後退局面で安全性を確保するためにFXや金など他のマーケットに目を向けることもできます。安全な通貨に関するガイドをご覧になるか、以下の安全資産に関する情報を参照してください。
まとめ
株式の銘柄の分類方法は多くありますが、ディフェンシブ銘柄と景気循環株は基本的かつ代表的な銘柄の分け方です。そのため、株へ投資する際にはぜひマスターしておくとよいでしょう。
ディフェンシブ銘柄をあなたのポートフォリオに入れることで、景気下降局面でも資産の減少を抑えることが期待できます。ただし、ディフェンシブ銘柄であっても絶対に大きな下落が起こらないというわけではありません。1つのディフェンシブ銘柄に集中投資するのではなく、複数の銘柄に分散投資するなどしてリスクを軽減させることをおすすめします。
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