トレーダーにとって決算発表シーズンは、自らの株式投資について見識を深めるだけでなく、短期的なボラティリティの恩恵を受けられる絶好の機会でもあります。しかし、このトレード機会を最大限に活用するためには、トレードを始める前に考慮すべき重要なポイントがあります。本記事では、決算発表をトレードに活用する際の3つのステップについて紹介します。
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トレードに決算発表を活用するための3ステップ
決算発表シーズンの前準備として、注目する企業を選び、マーケットを徹底的に調査してからトレードを開始します。
(1)注目する企業の選定
最初に、決算期間中にトレードする銘柄の選定をおこないます。よく知っている銘柄やすでにトレードしたことのある銘柄など、少数の企業に絞って対象企業の決算発表日を調べてみるのがよいでしょう。業界を先導する大型株については、決算結果が他の業界にまで影響を与えるため、トレードするかどうかに関わらず調査する価値があります。
トレーダーが銘柄を選定する際には、決算内容とその後の株価の反応が必ずしも単純な関係にあるわけではないことを理解しておく必要があります。収益が予想を上回れば一般的には強気ですが、それがすぐ株価上昇につながるとは限らず、その逆もまた然りです。ウォルマートの2018年第3四半期の好決算がマーケット参加者の心を躍らせることができなかったことは一例と言えるでしょう。

好調な四半期決算は期待値と比較した前期の結果を上回りました。実際に株価は将来の収益が現在の株価に織り込まれている先行指標であるため、アナリストは、企業の将来の見通しにかなり強い関心を向けていることが多いのです。
そう考えると、前四半期の業績が好調だとしても、将来の見通しが悪い銘柄を投資家が敬遠するのは合理的と言えるでしょう。過去の実績にかかわらず、将来の期待値が低いと現在の株価のバリュエーションが大きく下がることがあり、決算発表シーズンになるとそれがよくわかります。
当社の銘柄選択の方法ガイドを活用して、自分の株式ポートフォリオに適した企業を選択してみてください。
(2)リサーチする
株式リサーチを適切におこなうには、自分が選んだ銘柄の業績予想を確認してアナリストの予想と比較する必要があります。また、決算発表に対するマーケットの反応を知るために、過去の数字を見ることも重要です。
決算発表シーズンは、一般的に単一の銘柄について語られることが多いのですが、シーズンを通して重要な学びを得ることができます。
情報は企業ごとに提供されますが、共通のテーマが存在する場合があります。新型コロナウイルス、地政学的緊張、規制をめぐる不確実性、景気循環などの阻害要因は、頻繁に言及されるとセクター全体に不安の波を形成します。
トレーダーは、このような逆風が吹いているセクターや銘柄がどのような影響を与えるかを調査する必要があります。例えば、新型コロナウイルスの発生では多くの業界が苦しみましたが、2020年3月、ギリシャを拠点とするタンカー船会社、トップ・シップス(TOPS)では、清掃用品や紙製品などの製品需要が急増したことで、その出荷量が増加しました。その結果、出来高が増え、ボラティリティが高まりました。

また、ブレグジット(英国のEU離脱)という「逆風」の影響として、ブレグジット後の秩序が確立され事業環境が安定するまで、企業は設備投資を先送りにするといったことも起こっています。同様に、米中貿易戦争の中、米国では貿易関連の逆風について頻繁に言及されたことで、半導体から生活必需品まで様々なセクターを弱体化させています。それは上のチャートでもわかるように、S&P 500指数の構成銘柄では決算発表で「関税」に関する言及が急増したのです。
TOPSの例が示すように、これらの問題だけで銘柄がマイナスのリターンに追い込まれることはないかもしれませんが、マーケット全体に表面化することで問題が浸透し、見通しやバリュエーションに広範な下方圧力を与えることがあります。したがって、トレーダーは企業に共通する不満を把握する必要があります。これは、事例証拠が積み上がり、指数全般に対する具体的な脅威となった場合、より広範なマクロ経済戦略に役立つ可能性があるからです。



3. トレード戦略を立て、実行する
決算発表シーズンに向けたトレード戦略の策定には、エントリーとエグジットの方法、利益目標、トレードに費やす時間、リスク管理計画を含める必要があります。決算報告書をもとにしたトレードは、難しくリスクも大きいものだからです。また、発表前後にトレードすることが、自分のリスク許容度に合わない人もいます。そのため、ポジションを構築する場合は、適切にヘッジをおこない、ストップを設定する必要があります。ただし、ボラティリティによって特殊な状況が作り出され、いくつか特定の戦略にとってはチャンスとなることもあります。
決算発表に向けて戦略を立てる際、トレーダーは四半期決算が年4回しかないという重要性から、現在推移している株価のトレンドが著しく変動する可能性があることを認識すべきでしょう。つまり、トレーダーはインプライド・ボラティリティ(資産価格の予想変動率)の高まりが明白に示しているように、激しい価格変動に備えてポジションを取るようになるのです。
一般の投資家にとって、企業の業績や株価への最終的な影響を正確に予測することは非常に困難であるため、決算発表の直前にポジションを構築すると、リスクとリターンは歪んだものになる可能性があります。選択した投資商品がインプライド・ボラティリティ(IV)の影響を受ける場合、ポジションへの影響は特に深刻になります。というのも、インプライド・ボラティリティは、決算が発表されるまでは高止まりしますが、その後はすぐに急低下し、「IVクラッシュ」と呼ばれる状態になるのが一般的だからです。
IVクラッシュとは、その名の通り、株式のインプライド・ボラティリティが大幅に低下することであり、通常は不確実性が解消されたことを意味します。インプライド・ボラティリティの急反転は、実現ボラティリティをともなうことが多いですが、必ずしもそうとは言えません。
インプライド・ボラティリティと実現ボラティリティの不一致によって、オプション契約の絶対ボラティリティを利用しようとするストラドルやストラングル、あるいはIVクラッシュを利用しようとするショート・ストラドルやショート・ストラングルのような、ユニークなトレード戦略を実行することができます。



ストラドル
ストラドルとは、同一の権利行使価格(オプションの保有者が売買できる固定価格)で、同一期日のコール(買い)とプット(売り)のオプションを同時に購入するトレードのことをいいます。これを決算に当てはめると、決算発表前にストラドルをおこない、株価が権利行使価格からプレミアムの総コスト以上に乖離していれば、株価が上昇しても下落しても利益を得ることができます。このため、トレーダーが絶対ボラティリティが高いと考えているものの、その方向性が定まっていない場合には、ストラドルが有効な選択肢となる可能性があります。
下のチャートは、アップルの2019年8月の決算発表を受けて、出来高と アベレージ・トゥルー・レンジの指標で示されているように、さらに多くのトレードが誘発されて絶対ボラティリティが高くなり、ストラドルにとって潜在的に有利な成果が生じた例

ショート・ストラドルは、同一の権利行使価格と期日のコール・オプションとプット・オプションの両方を売るトレードです。この動きは、トレーダーがオプション契約の期間中に価格があまり動かないと考えている「IVクラッシュ」の場合に適していることが多いのです。
ストラングル
ストラングルはストラドルと似ており、同様にロングとショートがあります。ストラドルはコール・オプションとプット・オプションの権利行使価格が同一であるのに対し、ストラングルは権利行使価格が異なります。ストラングルは、決算発表後に株価が一方向に動く可能性が高いと考えているケースで、それでもポジションが逆の変動にさらされた時のプロテクションを求めている場合に有効です。
決算発表シーズンのトレード:重要ポイント
決算発表シーズンにトレードする場合、不確実性が高く、非常に大きな変動が予想されます。そのため、この時期を計画通りに乗り切るためには、適切な銘柄選択、徹底したバックグラウンド調査、高度なリスク管理が不可欠であり、同様に適切なトレード戦略を実行する必要があります。そうすることで成功の可能性を最大限に高め、重要な知識・経験として次の決算シーズンに活かすことができるのです。また、日経・外資系企業の決算スケジュールはこちらからご覧ください無料で、ユーザーフレンドリーで、完全なカスタマイズが可能です。
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