どの世界もそうですが、トレードには多くの業界用語があり、新しく学ぶ人にとっては難しく感じられます。本稿では、通貨ペアが買われ過ぎている、または売られ過ぎているとは何を意味するか、またこれらの状況からどのようなトレードの機会が生じるかについて解説します。



買われ過ぎと売られ過ぎについてのポイント:反転の確認にRSIを使う
RSIとは「Relative Strength Index」の略称で、日本では「相対力指数」と呼ばれることが多いです。RSIは直近のレートの変動幅に対する上昇幅の割合にもとづいて、相場の過熱感を計るシンプルなテクニカル指標です。
相場が過熱しているということは、つまり強いトレンドが発生していると考えることもできます。
とはいえ、RSIのようなオシレーター系の指標(相場の過熱感を計る指標)は、「買われ過ぎ」や「売られ過ぎ」の判断に非常に役立つため、主にレンジ相場にて逆張りでのトレードで用いられます。
RSIの見方
一般的な見方としては、RSIが70以上になると買われ過ぎで、反落の可能性があると判断します。また、RSIが30未満になると売られ過ぎで、反発の可能性があると判断します。

とはいえ、下のチャートが示すように、RSIは長期間にわたり買われ過ぎまたは売られ過ぎの状態を維持する場合があるため、RSIを使用してエントリーをする前にトレーダーには忍耐力が求められます。
なぜなら、トレーダーがよく犯す間違いは、買われ過ぎまたは売られ過ぎの領域へと進み続ける強力な動きの天井または底を拾おうとする試みだからです。つまり、RSIが70以下または30以上になるまでエントリーを遅らせることが重要になります。
RSIの買われ過ぎまたは売られ過ぎが長引いているときのシグナル

上のチャートが示しているように、RSIが明らかに70の水準を超え、買われ過ぎと読める状態となっても、経験あるトレーダーは、価格がどこまで動き続けるか不確かであるため、すぐには売りません。理想的にはRSIが70未満へ戻るまで待ち、それから売りでトレードを仕掛けます。これにより、よりよいエントリーとなり、より高い確率のトレードとなります。RSIが30未満になった場合も同じルールがあてはまります。
RSIの計算方法
RSIの具体的な計算方法は以下の通りです。
RSI(%)=(一定期間の上昇幅の合計÷(一定期間の上昇幅の合計+一定期間の下降幅の合計)×100
上記の計算における「一定期間」はトレーダーが自由に設定することができますが、通常は14期間が使われます。
つまり、デフォルトの設定ではRSIは
RSI(%)=(14期間の上昇幅の合計÷(14期間の上昇幅の合計+ 14期間の下降幅の合計)×100
といった計算式で計算されていることになるのです。
例えば、14日間の上昇幅の合計が100円、下落幅が50円とします。この数値を上記の計算式に当てはめると、『100÷「100+50」×100=66.6%』となり、RSIは66.6%と表示されることになります。
もし計算式を忘れてしまっても、FX業者が提供しているチャートを使えば自動的に計算されるため、自分で計算する必要はありません。RSIはグラフ化されてローソク足の下に表示されます。
RSIの期間設定方法
RSIの期間設定は14が一般的に使われています。この14という期間はRSIの考案者が最適とした期間です。14はほとんどの取引ツールでデフォルトの設定になっているため、設定を変更せずにそのまま使用できることになります。
明確な理由が無い限り、期間はデフォルトとして設定されている14を使用するのがおすすめです。なぜなら、多くのトレーダーが使用している期間が14だからです。つまり14を使えば、多くのトレーダーがRSIの特徴である買われ過ぎや売られ過ぎを判断するポイントを把握することができます。
14以外では7、9、22、30、42、52週足では9、13がよく使われます。それ以外の期間でも相場分析には役立つため、自分に合っていると感じた期間にするのもよいでしょう。
なお、RSIの30と70にラインを引くと、トレードのシグナルを判別しやすくなります。こちらも期間設定と同様に、ほとんどの取引ツールでデフォルトの設定になっているため、変更せずにそのまま使用することが可能です。



RSIの基本的な手法・使い方
RSIを含むオシレーター系のテクニカル指標は、レンジ相場での逆張りで使われることが多いです。しかし、トレンド相場でも使うことができます。
FXの相場は7割がレンジ相場と言われており、まずはトレードチャンスの多いレンジ相場で経験を積むとよいでしょう。「どうしてもトレンド相場で使いたい」という方はトレンド相場で使える手法もあるため、そちらを使ってみてください。
レンジ相場での売買シグナル
レンジ相場ではRSIの買いシグナルや売りシグナルがはっきりと現れるため、FX初心者の方でもトレードしやすいでしょう。また、FXはレンジ相場が7割、トレンド相場が3割と言われており、レンジ相場で使える手法はトレードチャンスが多く訪れるというメリットもあるのでおすすめです。
レンジ相場ではRSIの売買シグナルは以下の通りです。
- RSIが30未満になった後に30を超える:買いシグナル
- RSIが70を超えた後に70未満へ戻る:売りシグナル
RSIの見方でも述べましたが、ポイントは売りシグナルなら70未満へ戻る動きを、買いシグナルなら30を超える動きを待つことになります。なぜかと言うと、よりよいエントリーとなり、より高い確率のトレードができるからです。
レンジ相場は一定の値幅を行ったり来たりするため、RSIで価格の反落や反発を予測しやすくなります。さらに、サポートラインやレジスタンスラインを越えた時点という、分かりやすい損切りポイントもあります。
そのため、RSIはまずレンジ相場で使ってみることをおすすめします。
トレンド相場での売買シグナル
レンジ相場で使われることの多いRSIですが、トレンド相場でも使うことができます。トレンド相場ではRSIをトレンド転換のシグナルとして使いましょう。
まずはRSIに水平なサポートラインやレジスタンスラインを引きます。ラインが引けたら以下のような売買シグナルでトレードをおこなってください。
要するに、RSIがサポートラインやレジスタンスラインを越えたら、トレンド転換のサインと判断するわけです。したがって、トレンドの転換点付近から新たなトレンドに乗り、大きな利益を狙うことができます。
または、さらにシンプルに50%ラインを基準と考え、以下のような売買シグナルでトレードすることも可能です。
- RSIが50を上向け:買いシグナル
- RSIが50を下抜け:売りシグナル
つまり、50を上向ければ上昇トレンド、下抜ければ下降トレンドが継続しやすいと判断します。
2つの手法はどちらもトレンド相場での順張りを狙うという共通点がある手法です。
FXでのRSIを使った手法の注意点
RSIは非常にシンプルな見方ができ、FX初心者の方でも使いやすいテクニカル指標ですが、FXでは万能な手法は無く、RSIを使った手法も例外ではありません。そのため、RSIの弱点と注意点を理解しておく必要があるのです。RSIが苦手とする状況やその回避方法をしっかりと抑え、トレードのタイミングを誤らないようにしておきましょう。
トレンド時のRSI単体は使えない
トレンド時にRSI単体でトレードすることはおすすめできません。なぜかと言うと、RSIは主にレンジ相場での逆張りで使用されますが、逆張り手法はトレンド相場での優位性が低く、損失を生みやすいからです。つまり、RSIを逆張り手法で使うのであれば、他のテクニカル指標と組み合わせることで、トレンド相場を避けることが重要になります。
例えば、移動平均線やMACD、ボリンジャーバンド、一目均衡表などのトレンドが発生しているかを判断できるトレンド系指標を組み合わせるとよいでしょう。
逆張り手法をトレンド相場で使ってしまった場合、含み損が膨らんでいき最終的には強制ロスカットされてしまうこともあります。そのため、他のテクニカル指標と組み合わせてトレンド相場を避けるようにしましょう。
だましの発生に注意する
RSIは逆張りのタイミングをつかむのに有効なテクニカル指標です。しかし、他のテクニカル指標と同様に売買シグナルの通りにならない、いわゆる「だまし」が発生するため注意が必要です。つまり、RSIを使って70以上で買われすぎ、30以下で売られすぎと判断しても、必ずそのポイントで反発するとは限らないのです。
例えば、強いトレンドが発生している場合はトレンドの勢いに飲み込まれてしまうことがあります。RSIが30未満になった後に30を超えたり、70を超えた後に70未満へ戻ったりしても反落や反発が起きないことはよくあるのです。
そのため、機械的にRSIが70以上で買われすぎ、30以下で売られすぎと判断してトレードすることはおすすめできません。
だましの見極めを完璧にすることは不可能ですが、成功する可能性を高めるためには、他のテクニカル指標を組み合わせて活用するとよいでしょう。
RSIを使った手法に組み合わせたいテクニカル指標
RSIは主にレンジ相場での逆張りで使われますが、他のテクニカル指標と組み合わせることで、レンジ相場でよりよいトレードをすることができます。さらに、トレンド相場でトレンドの転換点を狙う際に活用することも可能です。以下では、RSIを使った手法に組み合わせたい、RSIとの相性抜群のテクニカル指標を紹介します。
移動平均線
移動平均線は一定期間の平均価格を折れ線でグラフ化したテクニカル指標であり、世界で最も有名かつ人気のあるテクニカル指標です。移動平均線を使うことで、トレンドの方向性や強さが視覚化され、簡単に判断できるようになります。
移動平均線はトレンド相場であるかを判断できるため、RSIで逆張り手法をおこなう際にトレンド相場を避けることが可能です。トレンド相場でRSIを使って逆張りをすると、反落や反発が起きずに大きな含み損を抱えてしまうことが多くなりますが、移動平均線を組み合わせることによってそういった事態を減らすことができます。
移動平均線の期間は、世界的に使われることの多い20期間がちょうどよいでしょう。20期間の移動平均線が横ばいになったらレンジ相場と判断し、RSIで逆張りを狙います。
具体的な手法は以下の通りです。
- 移動平均線が横ばいかつRSIが30未満になった後に30を超える:買いシグナル
- 移動平均線が横ばいかつRSIが70を超えた後に70未満へ戻る:売りシグナル
レンジ相場でのトレードになるため、利益確定や損切りを早めにするのがこの手法のコツになります。
ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドはバンド幅の変化や中心線の傾き、ローソク足とバンドの位置関係などから、視覚的にわかりやすく分析ができるテクニカル指標です。加えて、ボラティリティを示す標準偏差を利用し、逆張りと順張りどちらにも対応できることも特徴です。
ボリンジャーバンドの標準偏差は±1σ、±2σ、±3σの中から設定でき、価格がバンドの中に収まる確率は下記の通りです。
- ±1σに収まる確率:68.26%
- ±2σに収まる確率:95.44%
- ±3σに収まる確率:99.74%
また、RSIと組み合わせる際の、ボリンジャーバンドの設定は以下の通りになります。
- 期間:20(デフォルト)
- 偏差:2.0(±2σ)
具体的な手法としては
- RSIが30%以下かつボリンジャーバンド-2σにローソク足がタッチ:買いシグナル
- RSIが70%以上かつボリンジャーバンド+2σにローソク足がタッチ:売り注文シグナル
となります。
RSIとボリンジャーバンドを組み合わせた手法はトレンドの転換点を狙う手法であり、トレンドの最初から乗ることで大きな利益が期待できます。
ストキャスティクス
ストキャスティクスはRSIと同じく、主に相場の買われすぎや売られすぎを判断するために使われるオシレーター系のテクニカル指標です。ストキャスティクスは「%K」と「%D」の2本のラインを利用したファーストストキャスティクスと、「%D」と「Slow%D」の2本のラインを利用したスローストキャスティクスの2種類があります。
一般的にはスローストキャスティクスが利用されることの方が多いのですが、RSIとの組み合わせでは、より相場の動きに素早く反応し、サインが出やすいファーストストキャスティクスがおすすめです。
RSIと組み合わせる際の、ストキャスティクスの設定は以下の通りです。多くの場合でデフォルトの設定になっています
- %K期間:5
- %D期間:3
- スローイング:3
売買シグナルは以下のようになります。
- RSIが30以下かつストキャスティクスがゴールデンクロス(%Kが%Dを上抜け):買いシグナル
- RSIが70以上かつストキャスティクスがデッドクロス(%Kが%Dを下抜け):売りシグナル
RSIをストキャスティクスと組み合わせることで、トレードを厳選し、よりよいトレードができます。
よくある質問(FAQ)
単独のシグナルとしてのシグナルはどれほど信頼できますか?
単独のシグナルとしての買われ過ぎと売られ過ぎのシグナルは、完全には信頼できるものではありません。家を建てる場合を考えてみてください。建設者はハンマーに頼りますが、家全体を建てるにはハンマー単独では価値がありません。ハンマーと組み合わせる、のこぎりやドリルなどのその他のツールが必要です。買われ過ぎと売られ過ぎのシグナルについても同じことが当てはまります。シグナルを強化し、最終的にトレーダーが堅実なトレードの判断をおこなうことができるような補助的なツールが必要です。たとえば、トレンド分析、リスク管理、センチメント分析は、買われ過ぎと売られ過ぎのシグナルを補足する上で役立つツールです。
- トレンド分析 – トレンドを見極めることにより、トレーダーは買われ過ぎと売られ過ぎのシグナルを使用してエントリーポイントを選ぶことができます。たとえば、上昇トレンドでは売られ過ぎのシグナルをトレンドの方向に一致する「買いのエントリー」ポイントとして選ぶことができます。反対のことが下降トレンドにもあてはまります。
- リスク管理 – 適切なリスクリターンレシオの使用は、維持すべきストップとリミットの水準に関係します。
- センチメント分析 – クライアントセンチメントのデータを利用して買われ過ぎと売られ過ぎのシグナルを検証します。
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