トレーダーがテクニカル分析の学習を進めていく際には、指標についても学ばなければなりません。指標は用途や目的によって、さまざまな種類があります。
トレーダーの目的によっては、ある指標が他の指標より優れているように見えるかもしれません。そのため、人気のある指標が利用されることが多いです。しかし、次の点を明確にする必要があります。
指標は、移動平均線の一形態にすぎないということです。確かに指標は、過去の価格の変動を用いて指標の値を算出するため、移動平均線とよく似ていると言えます。
ただし、過去の値動きは将来の価格変動を完全には予測できません。指標などから複雑な過去の変動を読み取ることは、トレーダーにとってどのように役立つのでしょうか。
指標は将来の価格変動を完全に予測するものではありませんが、トレーダーがマーケットから必要な情報を得ようとする際に、確率にもとづいた手法を構築するのに役立つことは間違いありません。
この記事では、テクニカル分析でよく用いられる指標の1つである、RSI(相対力指数)について解説します。
テクニカル分析入門
RSI(相対力指数)とは?
推薦者: James Stanley
RSIとは
RSIとは、過去X期間の価格変動を測定する指標のことです(Xは任意の設定値)。
例えば、RSIの期間を5に設定すると、過去4期間(過去5期間の合計)に対するローソク足の勢いの強さが測定されます。同様に、RSIの期間を55に設定すると、過去54期間に対するローソク足価格の強さ、または弱さを測定することになります。設定する期間が長いほど、直近の価格変動に対する指標の反応は遅くなります。
以下のチャートは、2つのRSIを示しています。上のRSIの期間は9に設定され、下は25に設定されています。期間を25に設定した方と比べて、期間を9に設定したRSIが不安定であることに注目してください。これは、指標の値の計算に用いられる入力値が少ないため、指標の値が非常に早く変化するためです。
RSI
上部:RSIの期間を25に設定
下部:RSIの期間を9に設定
RSIから得られる情報とは
RSIは、オシレーターとして、設定された期間に対して価格がどれだけ強いか、または弱いかを1から100までの値で表示します。例えば、RSIの値が30を下回る場合は、トレーダーは値動きが弱いと解釈し、チャートに表示されている資産は売られ過ぎていると予測できます。一方で、RSIの値が70を上回る場合は、値動きが強く、買われ過ぎている可能性があります。
ただし、RSIの値は、「可能性」にすぎないことに注意が必要です。なぜなら、さらに買われ過ぎる・売られ過ぎる可能性があるからです。売られ過ぎのマーケットは価格の上昇を保証するものではなく、買われ過ぎを示すRSIの値は必ずしも下落を示すものでもないことに気を付けてください。
RSIの売られ過ぎ・買われ過ぎを示す目安
チャート作成:ジェームズ・スタンリー
RSIの基本的な使用方法
RSIは、潜在的な買われ過ぎ、または売られ過ぎの可能性を示します。そのため、トレーダーは価格が反転する可能性を予測することに利用できます。
最も基本的な使い方は、RSIの値が30の水準を超えて上昇したときに「買い」の注文を入れることです。なぜなら、それ以前は価格が低すぎると判断されていたため、価格が買いの強さをともなって売られ過ぎの領域から出ている可能性があるからです。以下のチャートが、このパターンに該当します。
米ドル/カナダドル
米ドル/カナダドルの4時間足チャート(2022年3月―2022年5月):ジェームズ・スタンリー作成
RSIは複数のタイムフレームにわたるレンジを特定できる
RSIは、複数のタイムフレームに適用できます。過去の価格情報から算出される他の指標と同様に、RSIは将来の価格変動を完全には予測できません。しかし、適切なマーケットの環境と一致させた場合、RSIは複数のタイムフレームにおいてレンジ相場を特定できる優れたツールとなります。



以下の米ドル/カナダドルの1時間足チャートでは、この通貨ペアがレンジ相場の中に位置するときに、ロングとショートの両方のシグナルを多数確認できました。
米ドル/カナダドル
米ドル/カナダドルの1時間足チャート(2022年1月―2022年2月):ジェームズ・スタンリー作成
使えない時はいつ?RSIを用いたトレードの注意点
RSIはトレーダーに不利な状況をもたらす可能性があるため、注意しなければなりません。
RSIは、その性質上、価格の反転を探せる指標です。例えば、RSIの値が30を超えた場合、つまり「売られ過ぎ」のときに、トレーダーはすでに下落しているマーケットを買うことになります。このトレードは、トレンドとは逆の方向にトレードする逆張り戦略です。そして、RSIの値が70を下回る場合、マーケットは「買われ過ぎ」になるまで十分に上昇しており、トレーダーは売りポジションを保有することになります。
マーケットがレンジ相場を形成している場合、トレーダーはRSIを用いてレンジ相場でトレードを開始しようとすることが多いです。これは、RSIの理想的な使い方と言えます。しかし、マーケットがレンジ相場の場合、価格がトレンドの方向に動き続けると、逆張りでトレードしたトレーダーは不利な状況に置かれる可能性があります。この状況は、以下のチャートの右側で示されています。
英ポンド/米ドル 日足チャート
英ポンド/米ドルの日足チャート(2020年5月―2022年5月):ジェームズ・スタンリー作成
チャートの左側には、RSIによる4つの売りシグナルが確認でき、さらに中央には5番目の売りシグナルが発生していることがわかります。
しかし、チャートの右側の下落トレンドでは3つの買いシグナルが確認できますが、いずれも通貨ペアの強気の動きにはつながっていません。



トレーダーは常に価格の変化を予測していますが、価格の反転を完全に予測することは非常に困難と言えます。売られ過ぎや買われ過ぎの状況を発見することは、価格の反転を示す要因につながる可能性があります。ただし、RSIはより長期間な価格の上下、または価格の反転にもとづくトレード戦略を成功させるために重要な要素です。戦略の一部として組み込むためには、他の指標や分析など、より多くの情報が必要になるでしょう。
--- DailyFX.com シニアストラテジスト ジェームズ・スタンリー著