今日、世界は以前と比べ、「つながって」います。グローバルなつながりには利点も欠点もありますが、グローバル化は、協調の利益を得られるプラスの経済トレンドであると長い間考えられてきました。グローバルなつながりにより世界は、これまでにないほど多くの人々を貧困から救い、過去においては進展が見られなかった地域において教育や医療などの分野を進歩させることができました。先進国ではグローバルなつながりは、経済を工業化からサービスへとさらに進化させていく原動力となっています。その一方で新興市場では成長のための活動として工業化に取り組んでいます。

グローバルなつながりはまた、数々の成長機会をもたらし、トレーダー、投資家、資産運用者に多くの選択肢を与えてもいます。しかしそのような選択肢に手順通りのアプローチをおこなうことは間違っているかもしれません。なぜなら、そうすることで個々の地域や社会の微妙な違い、世界の中でその地域や社会をユニークにしている要素を考慮にいれることができないからです。これが、特に初心者トレーダーやアナリストにとって、グローバルマクロ投資の構想を困難にする点です。



グローバルマクロとは?マクロ経済学をどのように利用している?
グローバルマクロはグローバル経済におけるマクロ経済学に焦点を当てた投資または分析手法です。この手法はよくグローバル経済の一部に適用され、地域や国同士の関係や、お互いに与える影響の検討に利用されます。この良い例が、カナダ、メキシコと米国の関係です。これについては後に本サブモジュール内で詳しく説明します。
グローバルマクロ分析は、これらの主要経済地域におけるマクロ経済に焦点を当て、戦略を策定し予測を立てるのによく利用されます。この分析では、GDPやCPI、あるいは代表的な国の中央銀行による通貨政策などのファンダメンタルズのデータにも注目します。また、関係する他の経済において将来何が起こるかを予測する作業において、政治的背景やそれらの経済における潜在的シフトを検討することによる政策パラメーターについての見解ももたらします。
グローバルマクロの焦点または戦略において最も魅力的な部分はシステマティックリスクに焦点を当てるという点です。これはほとんどのトレード戦略に何らかの形で影響する、避けることのできない要因です。システマティックリスクに焦点を当てることにより、特に物事のリスク側を見ることになり、投資家やアナリストは注目するマーケットについてより包括的な見方をすることができるでしょう。
グローバルマクロ戦略とは?FX以外にも使える?
有名な資金運用会社であるダブルライン社が説明したように、マクロは「どこにでも行き、何でもする」ことを特徴とします。
マクロ戦略は非常に柔軟な戦略で、トレーダー、アナリスト、投資家にかなりの数の選択肢を与えます。一方、マーケット分野で見られるように、経済イベントはその国内の活動時間に限定されず文字通り毎日24時間発生するため、グローバルマクロについていくのはなかなか大変な作業ともなります。メキシコのレート決定がノルウェーに影響を与える可能性があるので、経済指標カレンダーを注視する必要があります。そのつながりはコモディティです。メキシコとノルウェーの両者においてはかなりの石油採掘活動がおこなわれています。
グローバルマクロの戦略は、株式指数、先物、コモディティ、FX、場合によっては個別の株式に至るまで幅広いアセットクラスに焦点を当てます。
グローバルマクロ: システマティックリスクが重要である理由
十分な分析と強力な理論にもとづいて株式を購入したのに、その後予想とは逆の反応が起き、株価は上がらずに下がってしまったという経験はありませんか?
これには多くの理由がありますが、環境が重要であるのは事実です。その国の株式が急落した場合、最強の企業でさえ無傷ではいられません。新型コロナウイルスのパンデミックが相場に影響した2020年の2月および3月初旬の下落相場を例として見ていきましょう。アマゾン、テスラ、アップルといった飛ぶ鳥を落とす勢いの企業でさえ、信じられないほどの打撃を受け、それぞれの下落幅は1か月ほどで20%を超えました。その時点ではアップルの収益予想がどうであるか、テスラが何台の車を売ることができると言っているかは、問題ではないのです。重要なのは、グローバルな株式マーケットが激しく急落していて、非常に良い業績の最強の企業の株式をも下落させたということです。(景気循環株やディフェンシブ株については、株式マーケットの解説をご覧ください。)
これがシステマティックリスクです。システティックリスクは、個々の投資にあまねく影響を与え、時には個別の株式の事情より優先されることさえあるマーケット全体のリスクです。アップルは収益予想を上方修正し、新型のiPhoneが発売予定であり、おそらくはまだ発表していない新製品も着々と用意されているだろうと思われます。でもそれは重要ではありません。マーケットが下落していると、これらのプラスの材料はいずれもアップルの株価を引き上げる手段とはなり得ないのです。
これが投資家がシステマティックリスクに警戒する理由です。株式マーケットは常に上向きとは限らないからです。



FXのトレードにグローバルマクロを組み込む方法
FXのトレーダーなら、中央銀行の金利政策の影響を鑑みすでにかなりの注意をグローバルマクロに向けていることでしょう。しかしグローバルマクロの「グローバル」という部分が最も興味深い点で、これは投資家にポートフォリオをより細かく管理する追加の機会を提供するのです。
グローバル経済において地域の関係性は非常に重要です。そしてシステマティックリスクの例に戻ると、そこでも同様の要因が作用しています。メキシコを例に挙げます。メキシコは世界で15番目に大きな経済圏(IMF、2019年予想)であり、それ自体、大国です。しかし、同国は北方の隣国に大きく依存もしています。米国からの需要があるからこそ、メキシコは投資資本を輸入し、原材料と完成品を輸出することができるからです。
そのため米国が不況になれば、その原因を問わず、メキシコが無傷でいられる可能性は低くなります。実際問題、メキシコが受ける打撃は、彼らが頼ってきた貿易相手国としての米国が受ける打撃よりもずっと大きくなる場合があります。米国はメキシコ経済への投資資本の投下を継続できなくなる可能性があるためです。
このような関係は、多種多様な形で世界中において観察されます。ここでディミトリ・ザベリン氏の中心国-周辺国モデルが視野に入ってきます。

グローバルマクロ: 中心国-周辺国モデルとは?
ディミトリ・ザベリン氏はその中心国-周辺国モデルを以下のように説明しています。
米国、中国、EUの3つの経済大国が、グローバル経済の主たるけん引役です。この成長拠点それぞれを取り巻くのが周辺国経済で、これらの国々は中心国の業績に大きく依存しています。周辺国は通常輸出主導経済で、その富は中心国のそれよりも世界の景気やマーケットセンチメントの変化の頻度と規模により大きく変動します。
通常、これらの周辺諸国の国内資産はより高い利回りとなっており、そこに投資した場合に投資家が負う追加のリスクに対しより大きなリターンが提供されます。マーケットがグローバルな成長見通しについて全体的に楽観している環境では、トレーダーは安全性よりも利益を優先するため、通常は比較的リスクの高い、つまり、より景気変動に左右される資産へと向かう傾向があります。これは輸出主導経済への資本流入となり、中心国から周辺国へ資本が移動します。
しかし相場が下降しているときは、投資家は利益の最大化よりも資本を守ろう(または少なくとも損失を最小化しよう)とする意志に突き動かされます。この状況において、投資家は通常、利回りは低くてもリスクの低い資産へシフトします。これは一般的に、周辺国から中心国への資本の流入に反映され、資本は状況が改善するまで中心国にとどまります。
中心国-周辺国の枠組みは、経済大国とその周辺国の間のマクロファンダメンタルズの関係を理解することを可能にし、それらの関係性に組み込まれた資産のトレード方法について価値ある見識を提供してくれます。
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この後の5つの記事では、地域ごとに焦点を当てながら中心国-周辺国モデルについてより深く検討します。ザベリン氏はこの分析を5つに分割し、最初に欧州を貿易相手国のノルウェーとスウェーデンと共に扱い、それから中国および米国について述べています。それぞれDailyFX学習コンテンツにすべてリンクしています。ページ右側(または本ページの上部)のナビゲーションより本セクションの他の記事をお読みください。


