リスク管理は、トレード戦略を成功させるために重要な要素ですが、見過ごされがちです。リスク管理手法を適用することで、負けトレードがポートフォリオの価値に与える悪影響を効果的に減らすことができます。



以下の点を中心に詳しく解説:
- リスク管理が重要である理由
- トレードにおけるリスク管理の方法
- トレードのリスク管理のためのツール
投資において、なぜリスク管理が重要なのか?
数多くのトレーダーが、トレードを儲けの機会としてとらえていますが、損失の可能性については見落としがちです。トレーダーはリスク管理戦略をおこなうことで、マーケットが逆方向に動いた場合の負けトレードによる悪影響を抑えることができます。
リスク管理をトレード戦略に組み込んだトレーダーは、ダウンサイドリスクを最小限に抑えつつ、上昇する動きから利益を得ることができます。これはストップ(逆指値)とリミット(指値)のようなツールの使用と、分散されたポートフォリオのトレードを通じて実現されます。
ストップを使用しないトレーダーは、マーケットが転換するとの希望を抱きながらポジションを長い間持ち続けるというリスクを冒しています。これはトレーダーが犯す最大の過ちとされていますが、成功するトレーダーの特徴を参考に全てのトレードに戦略を取り入れることで回避できます。
投資におけるリスク管理手法5選
以下はあらゆるレベルのトレーダーが考慮すべき、5つのリスク管理手法です。
- あらかじめリスクとリスク資産を特定する
- 最善のストップロス(損切り)水準を設定する
- ポートフォリオを分散させる:相関が低ければ低いほど、分散効果は高い
- リスクを一定に保ち、感情をコントロールする
- プラスのリスク・リワード比率を維持する
1) あらかじめリスクとリスク資産を特定する:
リスクは全てのトレードに内在するため、トレードを始める前にリスクを特定しておくことは必須です。一般的なルールとしては、常にひとつのポジションにつき口座資本の1%までをリスクとし、保有する全てのポジションの合計では5%以下にとどめるというものです。例えば、1万ドルある口座にその1%ルールを適用するなら、ひとつのポジションにつきリスクは100ドル以下にすべきです。そして、100ドルまたはそれ以下のリスクのためにストップをどの程度の位置に設定するかにもとづいて、トレードのポジションサイズを計算する必要があります。
この方法の利点は、上手くいかないトレードが続いても口座の資金を保護できるということです。また、さらなる利点としては、マーケットの新たなチャンスを生かすために利用可能な証拠金(マージン)を持てる可能性があることです。これは、既存のトレードで必要となる証拠金に縛られて、そういったチャンスをあきらめる必要がなくなるということです。
2) 最善のストップロス(損切り)水準を設定する
ストップを設定する位置を決めるために、利用できる様々な方法があります。
トレーダーは、以下のような方法によってストップを設定できます:
• 移動平均線 – ロング(またはショート)ポジションの場合、特定の移動平均線(MA)の上(または下)にストップを設定します。下のチャートは、移動平均線を動的なストップロスとしてどのように使うかを表しています。
- サポートゾーンとレジスタンスゾーン – ロング(またはショート)ポジションの場合、ストップをサポートゾーン(またはレジスタンスゾーン)より下(または上)に設定ます。下のチャートは、レンジ相場においてストップをサポートゾーンより下に設定したもので、大きな下落による損失を回避しつつ、トレードに十分な余裕を持たせています。

- アベレージ・トゥルー・レンジ(ATR) - ATRは一定期間における証券の平均ピップスまたはポイントの動きを測定し、ストップを設定するための最小の間隔を提示します。下のチャートでは、直近の値動きから読みとった最大ATRにしたがってストップの間隔を設定することで、ATRに対して慎重なアプローチをとっています。
*上級者向けヒント:通常のストップロスの代わりにトレーリングストップを使うことで、マーケットが有利に動いている時のリスクを軽減できます。トレーリングストップは、その名の通り、含み益が出ているポジションであれば、常に同じ間隔を保ちながらストップロスを上方へ移動させるというものです。
3) ポートフォリオを分散させる:相関が低ければ低いほど分散効果は高い
例え1%ルールにしたがうとしても、ポジションがどのように相関するのかを知っておくことは極めて重要です。例えば、ユーロ/ドル(EUR/USD)と英ポンド/ドル(GBP/USD)の通貨ペアは相関性が高く、これらは同じ方向に、互いに密接に動く傾向があります。高い相関性を持つマーケットでのトレードは、そのトレードが有利に働く動きの場合には良いですが、負けトレードの場合、ひとつのトレードの損失が相関するトレードにも当てはまるため問題となります。
下のチャートは、ユーロ/ドルと英ポンド/ドルに見られる高い相関性を表しています。二つの価格の線が、いかに密接に互いを追っているかに注目しましょう。
トレードをおこなうマーケットをよく理解することと、相関性の高い通貨を避けることは、リスクを軽減し、より分散的なポートフォリオを実現するために有用です。
4) リスクを一定に保ち、感情をコントロールする
トレーダーは勝ちトレードを何度か経験すると欲が出てきて、トレードのポジションサイズを増やしたいという誘惑にかられることがあります。これは、資金を使い果たし、取引口座を危険にさらす最も単純な方法です。より熟練したトレーダーにとっては既存の勝ちのポジションを追加することは問題ありませんが、リスクに関しては、一貫した枠組みを維持することが一般的な原則です。
恐怖心と欲望は、トレードの際に何度も頭をもたげます。トレード時の恐怖心と欲望の対処法を知っておきましょう。
5) プラスのリスク・リワード比率を維持する
リスク・リワード比率を適正に保つことは、長期的なリスク管理に非常に重要なことです。先に損失が出たとしても、リスク・リワード比率をプラスに保ち、各トレードで1%ルールを守れば、時間と共に取引口座の一貫性は大いに高まります。
リスク・リワード比率は、トレーダーが何ピップスのリスクを負っているかを、ターゲット(目標値)かリミット(指値)にヒットした時に受け取るピップス数との比較によって算出します。1:2のリスク・リワード比率とは、トレードが上手くいった場合には2ピップスの利益を出すために、トレーダーが1ピップのリスクを負っていることを表します。
リスク・リワード比率の魔法は、その反復使用です。IG証券は成功するトレーダーの特徴という調査において、プラスのリスク・リワード比率を使ったトレーダーは、マイナスの比率を使ったトレーダーと比較すると、利益の多い結果を示す傾向があることを発見しました(ガイドの7ページ)。トレーダーは例え50%のトレードしか勝てなくても、プラスのリスク・リワード比率を維持する限り、成功を収めることができるのです。
*上級者向けヒント:トレーダーは、トレードが正しい方向に動いているのに、マーケットが方向転換してストップの引き金を引くことにしばしば苛立つことがあります。この事態を避けるためのひとつの方法は、2ロットシステムを利用することです。この戦略は目標値の中間地点でポジションの半分を決済し、その後、残りのポジションのストップを損益分岐点に持ってくるという方法です。こうすることで、トレーダーはひとつのポジションからの利益を確保し、残りのポジションは本質的にリスクのないトレードとなります(ギャランティーストップを使っている場合)。
投資で使える3つのストップロス
1) 通常のストップロス:これは、ほとんどのFXブローカーが提供している標準的なストップです。それらはスリッページを起こしやすいため、ボラティリティの低いマーケットで最も有効となります。スリッページとは、マーケットにおいて指定された価格で実際にはトレードされない現象のことで、その価格に流動性がないため、またはマーケットに生まれた開きが原因で起こります。その結果、トレーダーは次善の策を取らなければなりませんが、以下の米ドル/ブラジルレアル(USD/BRL)のチャートに表されるように、大幅に悪い結果となる可能性もあります。
2) 保証付きのストップロス:ギャランティーストップは、スリッページの問題を完全に排除します。価格のずれが生じやすい変動の激しいマーケットであっても、ブローカーが指定のストップ水準を保証します。ただし、この機能はブローカーによるストップ水準の保証に対し、取引額の数パーセントの手数料がかかるため、そのコストが生じます。
3) トレーリングストップロス:トレーリングストップは、含み益が出ているポジションの場合、トレードの開始時点のストップの位置と同じ間隔を保ちながら、現在価格に近づいてストップが移動します。例として、下の英ポンド/ドル(GBP/USD)のチャートは、有利な方向に動くショートポジションのエントリーを示しています。マーケットが200ピップス動く度に、ストップは最初のストップが置かれた160ピップスの間隔を保ちながら、自動的にそのマーケットの動きに合わせて移動します。
リスク管理スキルをさらに向上させるには?
- レバレッジ、リスク・リワード比率、ストップ注文が、どのようにリスク管理に貢献するのか、また、なぜトレーダーにとってこれらの概念をしっかりと把握することが重要なのかについて知っておきましょう。