金銀比価は異なる二種類の貴金属の動きを知るためにとても重要なものです。トレーダーはこの比率を参考にしてマーケットの売買シグナルを見極めることができるでしょう。また、金銀比価を活用したトレード方法を知ることで商品トレード戦略を最大化することができます。



金銀比価とは
金銀比価の考え方はシンプルです。現在のマーケット価格で1オンスの金を得るために取引する必要がある銀の量(オンス)を示しています。例えば、金価格が1オンスあたり1000ドル、銀価格が1オンスあたり16.67ドルで取引されている場合、金銀比価は60に相当します。

- 銀比価は2001年から2017年までは平均60前後で推移しています。高値は80(金1オンスに対して銀1オンス)を超え、安値は40前後まで下落しています。
- この比率は経済的に困難な時期に高くなる傾向があります。不況時は一般的に金が銀の価格を上回り比率が上昇するからです。
- この比率は銀価格が極端に下落した1991年にはピーク値の100を記録しています。
金銀比価のしくみとチャート
- 金価格が銀価格よりも速く上昇すると、比率は高くなる。
- 銀価格が金価格よりも速く上昇すると、比率は低くなる。
- 金価格が銀価格よりも速く下降すると、比率は低くなる。
- 銀価格が金価格よりも速く下降すると、比率は高くなる。

出典:Bloomberg
上のチャートは過去数十年間の金銀比価を示しています。1991年には銀価格が極端に下落して金銀比価のピークを迎えました(青丸箇所)。
また、2008年のサブプライムローン問題では金価格が高騰して銀のパフォーマンスが低下したために比価が急上昇しています(赤丸箇所)。
金銀比価を活用したトレード方法:チャートを使ってみよう
金銀比価を有効に活用する方法は数多くあります。ここでは金銀比価トレードで最も頻繁に使われている2つの戦略を紹介します。
(1)金銀比価から強い方のトレンドを判断してトレードする:
トレーダーは金銀比価を用いて、どちらの金属がアウトパフォームするかを判断し、その分析に応じたトレードをおこないます。
次の5つのステップを経ることで、金または銀の比価に応じたトレードができます。
1) 金銀比価のチャートにトレンドラインを加えてトレンドを判断する。DailyFXのチャートにある検索バーに「XAUUSD/XAGUSD」と入力すると金銀比価が表示されます。

2)自身のタイムフレームを活用して金と銀のトレンドを判断する。
3) 下の表を参考にしてバイアスをかける。
金銀比価のトレンド | 金と銀のトレンド | トレードシグナル |
金銀比価が上昇トレンド | 金と銀が上昇トレンド | 金のロング |
金銀比価が上昇トレンド | 金と銀が下降トレンド | 銀のショート |
金銀比価が下降トレンド | 金と銀が上昇トレンド | 銀のロング |
金銀比価が下降トレンド | 金と銀が下降トレンド | 金のショート |
4)値動きやテクニカル指標を用いてトレードの機会を特定し、トレンドの方向に沿ってエントリーするタイミングを計る。
5)投資余力に適したトレードサイズを決め、ストップロスと利益確定を設定してトレードをおこなう。
事例を使ってその5つのステップを具体的にみていきます。
1)2016年2月8日の金銀比価チャートを開いてみます。トレンドラインを引いてみると、タイムフレーム4時間の下図チャートにおける金銀比価は上昇トレンドにあることがわかります。

2)次に、金と銀の個別トレンドを見極めます。チャートを表示してトレンドラインを引いてみると下図チャートのように金と銀の双方が上昇トレンドにあることがわかります。

3)金銀比価が上昇傾向で、金と銀の双方が上昇トレンドにあるので金を買うべきであることが分かります。それは金が銀に対してアウトパフォームしているからです。
金銀比価が上昇トレンド | 金と銀が上昇トレンド | 金を買う |
4)2月に入ってから金価格が急上昇しています。このような状況でマーケットに参入するときは適度なプルバックを待つ必要があります。エントリーした後はストップロスをトレンドラインの下に、利益確定を前回の高値の上に置くことでポジティブなリスクリワードレシオを設定することができます。
5)投資余力に対して適切なトレードサイズを決めてストップロスと利益確定を考慮したトレードをおこないます。
(2)金銀比価の数値を利用した逆張りトレード:
金銀比価がまれに見る極端な数値に達するケースがあるかもしれません。そのような場合は比率が反転するリスクがあります。例えば、金銀比価が歴史的な高値(80から100)に達すれば金は銀に比べて割高となります。また、金銀比価が歴史的な低水準(60 から40 )に達すれば金は銀に比べて割安であると見なされます。
それぞれ異なる要因で動いていますが、相関関係にあるため、金銀比価が80~100を超えた場合や、60~40を下回った場合においても、その上昇や下降がさらに進もうとする力は限られる傾向にあります。これらの極端な比率はマーケットで急激な変化が起こる可能性が高いポイントと考えられているので、ターニングポイントになる傾向が強いのです。
下のチャートでは金銀比価の最高値(赤丸)と最低値(青丸)を示しています。

金銀比価の反転リスクがあるときは、以下の表を参考にしてください。
金銀比価の偏り | 金と銀のトレンド | トレードシグナル |
金銀比価の歴史的高値 | 金と銀が上昇トレンド | 銀のロング |
金銀比価の歴史的高値 | 金と銀が下降トレンド | 金のショート |
金銀比価の歴史的安値 | 金と銀が下降トレンド | 銀のショート |
金銀比価の歴史的安値 | 金と銀が上昇トレンド | 金のロング |
金銀比価が歴史的な高値や安値になることはめったにありませんが、そうなれば絶好のトレードチャンスになる可能性があります。ただし、その歴史的な数値を超えてしまったときに備えてリスク管理がますます重要になってきます。



金銀比価を活用したトレード:重要なポイント
- 金銀比価は投資家の安全資産への投資意欲を表していることがあります。金銀比価がピークの状態は、投資家のリスク回避姿勢が強まっていることを示していると言えるでしょう。
- 金銀比価は、世界経済の状況を示すことがあります。この比率が低ければ世界経済が成長期にある可能性があります。
- 金銀比価と個々の価格トレンドを併せて見ることで、トレードのタイミングとなる強いトレンドを判断しましょう。
- 比価がこれまでの最高値(100)や最安値(40)に近づくと、トレンドが反転するリスクがあります。
- トレードの際にはポジティブなリスクリワードレシオを取り入れるなどの習慣を身につけましょう。
- 金価格の予測がつかない場合はDailyFXの四半期予想を確認してみましょう。