WTI原油先物 - トーキングポイント
- 先週、ニューヨーク原油先物相場は87.50ドルを下回る水準を試し、6カ月ぶりの安値を更新した
- 8日に反発したものの、9日朝は再び売り圧力が強まり、上値が抑えられた。今、注目すべき点は、目先にある、以前は下値支持線として機能した上値レジスタンスゾーンを上抜けられるかどうかである
- 本記事で提示される分析は、プライスアクション(値動き)とチャートパターンに基づいています。プライスアクションやチャートパターンについてもっと知りたい方は、DailyFX の学習コンテンツをご覧ください



2022年の原油先物相場は、ある重要性を帯びてきた。ロシアによるウクライナ侵攻という恐怖とともに年が明け、それもあって、WTI原油先物は2月に130まで一気に急騰した。これは、2020年4月にWTI原油先物の期近物の取引がゼロ以下のマイナス40.32まで値下がりしたことに象徴される原油先物相場の大暴落から、わずか2年足らずの出来事である。 2022年3月には、原油先物相場は単なる回復以上の強さを見せ、13年ぶりの高値を付けた。
テクニカルアナリストである筆者としては、ネガティブプライシング(原油価格がマイナスになること)は、今でも頭痛の種である。あれらのマイナス価格の原油先物は取引されたのだから、有効だ。しかし、それは供給関連の問題であり、原油先物の来月物が17.27(コード:CL2)で安値をつけたように、必ずしもその時の原油価格を示しているわけではない。また、ゼロを下回るような大きな値動きのトレンドがあったわけでもなく、それは契約満了時近くに価格が急落したことに大きく影響を受けた1日だけの出来事である。週足チャートでは、単に下ヒゲを伸ばしただけだった。しばらくは、そのCL2チャートの方が有効な気がして、それを頼りにしていた。しかし、CL1を分析するのであれば、CL2で代用するのは、特に短期的な視点については、適切とは言えない。
そこで、2020年4月のネガティブプライシングを鑑みて、より長期的な原油相場の分析がいかに有効であるかに焦点を当ててみたい。まずは、長期的な視点で見たチャートから始め、あの2020年4月の「事件」に遡るデータにあまり依存しない短期的な分析に落とし込んでいくことする。



下記の月足チャートには2つの注目すべき点がある。1つ目は、2011年10月から2013年5月にかけてのサポートゾーンである。このゾーンは、2014年第4四半期に原油先物相場が暴落するまでの間、かなりしっかりとしたサポートとして維持されていた。このゾーンの底値水準は、2018年10月には再び上値レジスタンスとして現れ、その後、下落して年初来安値を付けるまでは陰の包み足(抱き線)が示現していた。2つ目は2022年3月の高値であり、この水準は、その値下がりの動きから形成されたフィボナッチプロジェクション161.8%の水準からわずか64セントのところに位置している。これは、エクステンション127.2%が短期的に使用される可能性があるため、適切なものと言える。
WTI原油先物 月足チャート

資料:Tradingview
原油:地政学的な懸念から景気後退懸念まで
原油は世界の多くの地域で使用されているため、マクロ経済的に興味深い指針とも言える。2022年初頭、ロシアがウクライナに侵攻した際にも、その傾向は顕著に現れた。供給不足への懸念が高まり、原油先物相場は3月7日に13年ぶりの高値まで上昇した。その後は、ややこじつけとも言える攻めのレンジが形成され、95.00の心理的水準と注目すべきフィボナッチ水準が重なったフィボナッチエクステンション127.2%の水準付近が下値サポートとなっている。
12月安値と3月高値で形成されたフィボナッチのリトレースメントでは、96.47に50%の水準、また同フィボナッチのエクステンション127.2%より2ドル高い水準がある。
最近になって景気後退懸念が台頭し、原油先物相場に悪影響を及ぼし始めたが、これは供給問題というより、むしろ需要サイドの問題である。このサポートゾーンは下値の維持に役立ったが、景気後退懸念が大きくなるにつれ、原油先物相場はそれだけ下振れる動きになっていた。
このサポートゾーンは結局、7月に崩壊した。相場は7月後半に反発し、強気トレンドの復活になるかと思われたが、買いの動きはすぐに阻止されて下落に転じ、先週金曜には6カ月ぶりの安値を付けた。
下記の日足チャートに、もう一つ観察すべきポイントがある。それは、安値や支持線付近ではあまり積極的な売りの動きは見られないのに対し、高値またはレジスタンス近辺では、大きく激しく売られていた点である。このような値動きは下降ウェッジを形成する。



WTI原油先物 日足チャート

資料:Tradingview
WTI原油先物 (短期)
4時間足チャートで見ると、先週金曜に安値を更新した後、失速していることがわかる。強気派はまだ相場をけん引する主導権を握っておらず、反落の可能性が残されている。94.47から96.47にかけての以前、サポートとして機能したゾーンは、下値圏での抵抗を探るのに有効なエリアとなる。このため、当面の戦略は弱気が適切だろう。
しかし、このゾーンが突破され、そのすぐ上にある下降トレンドラインも上抜ければ、下降ウェッジが崩れ、上昇基調が始まる可能性がある。



WTI原油4時間足チャート

資料:Tradingview
--- DailyFX.comシニアストラテジスト、ジェームズ・スタンレー著
スタンレー氏に連絡するには、Twitter で @JStanleyFX までお願いいたします。