米国雇用統計の前に、米欧にてインフレ指標が31日に発表される。FRB、ECBともに利上げ停止が近付く中、今後の金融政策、為替市場の動向を占う上で重要であるが、今後のドル円、ユーロドルの見通しとは



サマリー
- 米欧インフレ指標が発表
- 個人トレーダーのセンチメントは、ドル円&ユーロドルの上昇を示唆
- ドル円&ユーロドルの見通し
欧米の金融政策転換迫る
8月31日に米国ではPCE物価指数、ユーロ圏では消費者物価指数が公表される(30日にドイツでさきがけて消費者物価が公表)。ジャクソンホール会議で、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長、ラガルドECB(欧州中央銀行)総裁ともに追加利上げを強く示唆しなかった。

資料:Trading Economics
ジャクソンホール会議を経て、金融市場では9月金融政策決定会合では政策金利据え置きが予想されているものの、その後のあと1回の利上げについては意見がわかれている。そのため、FRB、ECB(欧州中央銀行)ともに利上げ停止が近付く中、今後の金融政策、そして為替市場の動向を占う上で重要な経済指標である。
特に、ユーロ圏にてコアインフレ(CPI)に鈍化が見られるかに注目したい。米国と比べてコアインフレが高止まりしており、インフレ指標の結果次第で、今後の政策金利見通しが大きく変動し、通貨ユーロに対して影響が大きく出る可能性がある。
また、米国ではJOLTS求人件数が急減し、FRBの利上げ停止との思惑が強まっている。PCE物価指数が市場予想を下回った場合、FRBの利上げ停止との見方を一段と強め、米ドル安が進展する可能性がある。

資料:BloombergよりDailyFXが作成。
このよう中、個人トレーダーのセンチメントはドル高円安、ユーロ高ドル安を示唆している。詳しく見てみたい。
ドル円の個人トレーダーセンチメント
逆張り指標として機能する傾向のあるIG顧客センチメント(IGCS)によると、USDJPYを取引する個人トレーダーの約22%がネットロング(USDJPYを買い持ち、ドルに強気)にしている。IGCSは逆張り指標として機能することを勘案すると、ほとんどの持ち高はネットショート(USDショート円ロング、ドルに弱気)に傾いているため、ドル高円安が進展する可能性が示唆されている。
また、昨日、先週と比べてネットショートのトレーダー(ドルに弱気)の割合が増えている。このことを考えると、個人トレーダーのセンチメントはドル円に対して強気(ドル高円安)である。
IGCS:ドル円




資料:DailyFX.com IG顧客センチメント(IGCS)
米ドル円(USDJPY)の見通し



個人トレーダーセンチメントはドル高円安を示唆する中、ドル円の上昇が続いている。しかしながら、ドル円は、昨年10月から今年1月にかけてのドル円の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント78.6%水準146.652レベルを一時上抜けたものの、終値ベースでの上方ブレイクにいたっていない。
また、テクニカル面ではドル円の上昇圧力が衰えてきていることを示すシグナルが出始めている。RSIで「弱気の乖離(ダイバージェンス)」が示現しており、MACDラインはシグナルラインを下抜けるドル円に弱気の「デッドクロス」が示現している。終値ベースで146.652レベルを上抜けるかがドル円のトレンドを左右することを見込む。
個人トレーダーセンチメントがドル円の上昇を示唆する中、PCE物価指数が米国インフレ圧力の高まりを示した場合、FRBの年内追加利上げとの思惑からドル円の上昇を見込む。その場合、ドル円の強固なレジスタンスである146.652レベルを終値ベースで上方ブレイク、ドル高円安圧力が一段と強まり、147円台にドル円のレンジが切り上がることを見込む。
しかしながら、米国インフレ圧力の鈍化を示した場合、FRBの利上げ終了との見方が強まり、146.652レベルのブレイクに失敗しよう。その場合、ドル高円安トレンドの反転を示唆する小型の「三尊天井(ヘッドアンドショルダーパターン)」パターンが成立、7月中旬以降のドル高円安トレンドが終了した可能性が高まる。その場合、水平サポートラインである145.07レベルでサポートされるかに注目。
USDJPY日足チャート

資料:Trading View
ユーロドルの個人トレーダーセンチメント
逆張り指標として機能する傾向のあるIG顧客センチメント(IGCS)によると、EURUSDを取引する個人トレーダーの約56%がネットロング(EURUSDを買い持ち、ユーロに強気)にしている。IGCSは逆張り指標として機能することを勘案すると、半分以上の持ち高はネットロング(ユーロに強気)に傾いているため、ユーロ安ドル高が進展する可能性が示唆されている。
しかしながら、昨日、先週と比べてネットロングのトレーダー(ユーロに強気)の割合が低下している。このことを考えると、ユーロ高ドル安が進展する可能性がある。
IGCS:ユーロドル




資料:DailyFX.com IG顧客センチメント(IGCS)
ユーロドル(EURUSD)見通し



5月末から7月18日までのユーロドルの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント78.6%水準1.077レベルがサポートラインとして機能し反発している。フィボナッチ61.8%水準1.088レベルの上方ブレイクをトライしている。MACDラインはシグナルラインを上抜けるユーロ安圧力が衰えていることを示唆する「ゴールデンクロス」が成立する寸前である。
テクニカル面では、ユーロ安トレンドからの転換を示唆するシグナルが出始めているものの、当面のユーロドル相場は欧米の金融政策見通し、欧米のインフレ動向に大きな影響を受けよう。
欧州コアインフレが高止まりを示した場合や米国PCE物価指数が事前の市場予想を下回る伸びであった場合、欧米の金融政策格差拡大との思惑から、フィボナッチ61.8%水準1.088を終値ベースで上抜け、ユーロドルの下落(ユーロ安米ドル高)トレンドが終了した可能性が高まる。その場合、5月末から7月18日のユーロドルの上昇の半値戻しの水準である1.096レベルへの上昇を見込む。
一方、欧州インフレ圧力の鎮静化や米国インフレ圧力の高止まりを示した場合、ユーロドルは下落しよう。7月6日安値1.083レベルでサポートされるかに注目。下方ブレイクした場合、フィボナッチ78.6%水準1.077レベルへの下落が視野に入る。
ユーロドル(EURUSD)日足チャート

資料:Trading View

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--- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著