ドル円、今週の見通しとテクニカルポイント
新たなサポートポイントを見極める局面にある
金融システム不安の連鎖を防ぐため、各国は週末に矢継ぎ早の対応策を講じた。日米欧の6中央銀行は19日、協調して市場への米ドル供給を強化することを表明した。同日、スイス政府は経営不振にあるクレディスイスがUBSに買収されると発表した。NY・コミュニティ・バンコープがシグネチャー銀行の預金を引き継ぐとの情報も流れている。
これら矢継ぎ早の対応は、金融システム不安の後退要因である。
しかし、今回の事態を受けパウエルFRBは難しい対応を迫られている。なぜなら、パウエルFRBのインフレ抑制は道半ばにあるからである。だが、同時に金融システム不安の連鎖とそれによる経済の先行きリスクも意識せざるを得ない状況に追い込まれている。後者の状況を意識しパウエルFRBが利下げや利上げの停止を示唆する場合、米債市場では利回りの低下が続くだろう。
米金利の低下は、外為市場での米ドル安が進行する要因となる。それゆえ、米金利と高い相関関係(順相関の関係)にあるドル円(USDJPY)は、新たなサポートポイントを見極める局面にある。通貨オプション市場では1ヶ月(1M)と3ヶ月(3M)のリスクリバーサルがドル・プットへ傾くトレンドが続いている。この点もドル円の地合いの弱さを示唆している。
ドル円と通貨オプション市場の動向
出所:ブルームバーグのデータをもとに作成 / 日足:年初来
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上下のテクニカルポイントについて
テクニカルの面でもドル円の地合いの弱さが指摘されている。
先週17日の市場では、大陰線で50日MA(132.53レベル)を完全に下方ブレイクした。MACDはゼロラインを下回る状況にある。
FOMCイベントで米ドルのショートカバー(買戻し)が見られても、50日MAが “レジタンス転換” となれば、市場参加者にドル円の地合いの弱さを印象付けよう。
ドル円が50日MAの突破に成功しても、21日MA(135.06レベル)の突破に失敗し続ければ、やはり地合いの弱さを市場参加者に印象付けるだろう。
一方、ドル円が下値を試す局面では、130円台の維持が焦点となろう。
ドル円がフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準131.84レベルを日足ローソク足の実体で完全にブレイクする場合は、76.4%の水準130.40を視野に下落幅の拡大を警戒しておきたい。後者のテクニカルポイント(130.40レベル)をも下方ブレイクすれば、節目の130.00トライが焦点として浮上しよう。
ドル円のチャート
TradingViewの日足チャート:年初来
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | -10% | -1% | -4% |
週次 | 3% | -7% | -4% |
ユーロドル、今週の見通しとテクニカルポイント
上昇局面での焦点
今週のユーロドル(EURUSD)は、FOMCイベントを受けて上下に大きく振れる展開が予想される。
上で述べたとおり、米欧は金融システム不安に対して迅速に対応している。この状況はユーロ相場のサポート要因である。この状況でパウエルFRB議長が定例記者会見で政策の転換(早期の利下げや利上げの停止)を示唆すれば、ユーロドルは米ドル安にサポートされ上値を試すことが予想される。
だが、“レジタンス転換” が確認されている1.08レベルの突破に成功しない限り、ユーロドルの下落リスクを警戒する状況が続くだろう。
ユーロドルが1.08をトライするシグナルとして、1.075レベルの攻防に注目したい。50日MA(1.0725レベル)の上方ブレイクは、1.075をトライするシグナルと想定しておきたい。
ユーロドルがこの水準(1.075レベル)を突破する場合は、1.08を視野に上昇幅の拡大を想定しておきたい。
米ドル安の進行でユーロドルが1.08台へ上昇し、かつその水準を維持する場合は、1.09のトライを想定しておきたい。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準1.0910レベルの攻防が焦点となろう。
下落局面での焦点
一方、ユーロドルの下落局面では、サポートラインとして意識されている100日MA(1.0575レベル)の攻防が焦点となろう。この移動平均線の下方ブレイクは、1.05トライのシグナルと想定しておきたい。
ユーロドルのチャート
TradingViewの日足チャート:年初来
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 11% | -21% | -3% |
週次 | 5% | -2% | 3% |