株式指数 テクニカル見通し:中立
- 先週の米国株は、FRBが75ベーシスポイントの利上げを実施した後、米国の長期債利回りが低下したことを背景に上昇した。米国の2年債と10年債の利回り差の逆転が続いており、逆転幅は2000年11月以来最大となった。
- また、先週はアマゾンやアップルといったハイテク企業の好調な決算を受け、株価は総じて上昇した
- 本記事で提示される分析は、プライスアクション(値動き)とチャートパターンに基づいています。プライスアクションやチャートパターンについてもっと知りたい方は、DailyFX Education をご覧ください



先週27日に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを実施した後、株価は大きく動いた。米連邦公開市場委員会(FOMC)は75ベーシスポイント(bp)の利上げを実施し、S&P 500種株価指数は6週間ぶりの高値を付けた。この株価上昇の動きは28日、29日も続いた。27日午後にアマゾン、28日にアップルが決算を発表したことも追い風となった。
先週のS&P500種株価指数は26日の安値から29日の高値まで5%以上上昇し、ナスダック100指数は7.48%という驚異的な上昇率を記録した。この株価の動きを見て、多くの人が「もう底は打った」と言い、「景気後退は終わった」と主張する人さえいた。短い期間での値動きから大局的な判断をする際は注意しなければならないが、それでもこうした相場の激しい変動には注目する必要がある。
先々週のコラムでは、債券市場について、市場が発信している可能性のあるメッセージとともに紹介した。このテーマは先週も継続され、米国債の利回りはさらに低下し、10年債は3カ月以上ぶりの低水準となり、2.7%台を割り込んだ。10年国債の利回りがこれほど低水準となった前回以来、FRBは計200bpの利上げを実施したが、長期金利は下がり続けている。
5月以降の米10年債利回りの推移と利上げのタイミング

資料:Tradingview
利回り低下は株価上昇要因?
FRBが利上げを実施しても、米国の長期国債利回りは低下しており、しかもその動きにはバラつきがある。イールドカーブ上の右端にある長期債は、短期債よりも利回りの低下速度が速く、逆イールド現象につながっており、その現象は一般的に経済にとって弱気シグナルとされている。とはいえ、イールドカーブが生み出す歪みは経済の衰弱が近いことを示すのに最も適した指標というわけではなく、何かがおかしいことを知らせる指標と捉えるのが良いだろう。
現時点では、米国の2年債と10年債の利回り差の逆転が続いており、その逆転幅は2000年9月以来最大となっている。この逆イールド拡大を引き起こす要因を探ることが重要である。FRBが金利を引き上げ、短期債の利回り上昇に一役買っているにもかかわらず、長期債の利回りは低下している。なぜだろうか。
金利はFRBではなく、市場によって決定される。FRBが割引率(FRBが資金調達する市中銀行に対して課す借入金利)を引き上げても、投資家とファンドマネジャーはより長い期間の国債を買い、その需要の増加が国債利回りを低下させる要因となっているのだ。しかし、もっと重要なことは、金利が上昇しているのに、なぜファンドマネジャーは長期の国債を買うのかということである。債券価格と利回りは反比例するため、FRBによる利上げは債券価格の低下、特に金利差の影響をより大きく受ける期間の長い債券の価格低下につながるのではないだろうか?
通常はその通りだが、逆イールドの現象は通常時とは異なり、歪みが発生している状態である。これが面白いところである。
短期金利が上昇しても市場参加者が長期債を買っている場合、それは通常、金利がいずれ再び低下することを期待していることの表れである。そして、金利が下がれば、債券価格は上昇し、債券投資のリターンが増える可能性がある。つまり、投資家は、利子の受け取りを目的として10年物を買っているのではなく、FRBがいずれ再び利下げに転じるという期待に基づいて取引をしている可能性がある。
このような市場の動きは、市場参加者にメッセージを送ることは確かだが、逆イールド現象が経済動向を見極めるための優れた指標ではないことのもう一つの理由でもある。
米国の2年債/10年債のイールドスプレッド(月次)― 2000年以降で逆転幅は最大

チャート作成:ジェームズ・スタンレー
S&P 500
先週のS&P 500種株価指数は、26日の安値から週末の高値まで上昇し、週間伸び率は5%超となった。同指数は4100の上値抵抗線近辺でもみ合った後、これを上回り、7週間ぶりの高値も更新した。先々週の見通しでは、この抵抗線の水準に注目し、3922を上回れば、その前週の強気相場が続く可能性があると言及した。
26日の下値サポートは、2022年の安値から形成されたフィボナッチリトレースメント23.6%の水準であり、2週間前のスイングハイでもある3915に位置していた。日足チャートではロウソク足のヒゲが3915に一瞬達し、3923で取引を終了しており、この水準がサポートとして機能していることが確認された。この水準は、その後、上昇の起点水準となった。
同じフィボナッチのリトレースメント38.2%は4085に位置し、4100付近のエリアに合流して、28日の高値圏の維持を支えた。通常、大きな動きの後に、このような水準が現れると、指数を引き下げる何らかの要素がある。これは、トレンド形成局面で通常見られる高値圏で高値と安値を切り上げる値動きのことだと言える。結局のところ、買い手は通常、そのような上昇局面が続けば、利益を得たいと思うのではないだろうか。この動きが起こらなかったということは、何か他のことが進行している可能性を示している。
このような動きは、筆者にはかなり極端な動きに見え、少なくとも一部は、ショートスクイーズ(市場が売り持ちに傾いている時に、大きく買いを仕掛けることで相場上昇を促すこと)に関連していると考えている。6月上旬に相場が下落するにつれ、センチメントはかなり弱気に傾いた。その後は金利が低下し、インフレが頂点に達したかもしれないとの観測が広がる中、今期の株式相場見通しで指摘した通り、市場では「押し目買い」の意欲が高まった。
筆者は、この強気な動きを、より大きな視野で見た弱気局面における調整と見ている。しかし、動きの力強さを鑑みると、指数にはまだ上値余地があるかもしれない。チャート上では、次の上値レジスタンスエリアは、4186から4223にかけての主要なフィボナッチレベルの水準で、後者は2022年の急落時から形成されたフィボナッチ50%の水準である。この水準を上回ったレベルを維持できれば、弱気トレンドに疑問符がつくだろう。しかし、下記チャートのレッドゾーン(赤い帯部分)にあるように、指数はこれまでで最も突破が難しいと見られる上値試しの水準が近づいている。



S&P500 日足チャート

資料:Tradingview
ナスダック 100
ナスダック100株価指数は、先週26日の安値から29日の高値まで7%以上上昇し、6月の安値からは累計16.73%の上昇率となった。これは大きな動きだが、弱気派が市場を再び支配する前である3月の後半2週間で記録した17.97%に比べると、やや低い数字である。3月に大きく上昇した後は再び弱気に転じ、4月には再び売り手が優勢となり、3月下旬の高値から6月の安値まで27.51%の大幅な下落となった。
この6月安値の後、下降ウェッジパターンが形成されたが、これらはしばしば反転を見極める際のブレイクアウトを探るために使用される。7月上旬にブレイクアウトが確認され、その1週間後には、以前の上値レジスタンスがサポート水準に転じた。
現在、ナスダック指数は、注目すべきフィボナッチ水準の間にある上値抵抗ゾーンを試す展開となっている。13,050には、2009年から2021年にかけての大きな動きのリトレースメント23.6%の水準があり、12,894には、2020年4月から2021年11月の動きから形成されるフィボナッチリのトレースメント38.2%の水準がある。このゾーンは、ようやく下げ止まった5月まで、2月から4月にかけて下値サポートとして機能した。そして現在は、上値レジスタンスに転じている。
今週前半に13,050を下回る水準を維持するような展開となれば、相場トレンド反転となる可能性がある。



ナスダック100 日足チャート

資料:Tradingview
ダウ平均
先週のダウ工業株30種平均は、上値レジスタンスが集中するゾーンにある32,400ドル付近を上回った。2つのフィボナッチレベルが近接しているこのゾーンは3月に、3月末に向けてFRBの利上げ政策がけん引した相場上昇の直前までは下値サポートとして意識されていた。
ダウ平均の次の注目すべき上値レジスタンスは33,236付近で、これは2022年の安値から形成されたフィボナッチ50%に相当する水準である。このエリアは、現在の年初来安値まで大きく下押される前に、5月下旬から6月上旬にかけて高値を更新した水準でもある。また、このエリアは売り手が主導権を握るまで、1週間半にわたって上値レジスタンスとなった経緯があり、上昇トレンドが続くなら、チャート上の重要なポイントとして意識されるだろう。
その先には、34,084から34,133にかけて、もう一つレジスタンスが集まっている合流エリアがあり、下降トレンドラインを引くためのフィボナッチの水準もいくつか存在する。



ダウ平均 日足チャート

資料:Tradingview
--- DailyFX.comシニア・ストラテジスト、ジェームズ・スタンレー著
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