主要中央銀行トップが集まるジャクソンホール会議の開催が迫っている。金融市場を揺るがすことが多い会議だが、恐怖指数とも言われるVIX指数の見通しとは。また、VIX指数と逆の動きをする傾向があるS&P500指数の見通しとは



サマリー
- ジャクソンホール会議、FRBの金融政策を見極める上で注目
- 恐怖指数:VIX指数は8月に上昇する傾向
- S&P500の今後の見通し
ジャクソンホール会議に注目
日米欧の中央銀行トップが一堂に会するジャクソンホール会議が8月24-26日に開催する。毎年開催されるジャクソンホール会議で、FRB(米連邦準備制度理事会)議長が金融政策について重要な情報を提供する場となっており、金融市場参加者の注目度が高い。パウエルFRB議長は25日に講演を行う。
2020年には、パウエルFRB議長は「新たな金融政策の枠組み」を同会議で説明した。FRBの利上げ終了が近付いているものの、金融市場では、年内の追加利上げがあるのか、それとも利上げは終了したのか、意見が分かれている。パウエルFRB議長からの今後の金融政策見通しに関する発言は、金融市場の大きな変動要因になろう。
VIX見通し
投資家心理を示すボラティリティ指数(VIX指数)は、8月に上昇する傾向がある。VIX指数は恐怖指数とも呼ばれ、同指数の上昇は、投資家の不安心理が高まっていることを意味する。8月にVIX指数が上昇する傾向がある背景として、①ジャクソンホール会議、②金融市場の参加者、この2点があげられる。
ジャクソンホール会議は、金融市場にとってサプライズとなる今後の金融政策に対する重要なヒントが与えられ、金融市場の変動を通して投資家の不安心理が高まることがある。
また、8月は、日本・海外の金融市場参加者が休暇シーズンのため、市場参加者が減っている。そのため、市場参加者の思惑と違う情報が発表されると、一気に価格が変動し、投資家の不安心理が高まりやすい。
過去10年のVIX指数の月間の変化率は、8月は平均18.6%上昇している。8月に入り今年もVIX指数が上昇傾向にあるものの、3月の金融不安時と比べて低い水準である。そのため、ジャクソンホール会議を控える中、更にVIX指数が上昇するシナリオも想定したい。
VIX指数が上昇した場合に、大きな影響を受ける資産としてS&P500指数がある。S&P500指数の動向を見極める上でも、VIX指数の動きに注目である。
VIX指数:月次変化率(過去10年平均、%)

資料:BloombergよりDailyFXが作成。

資料:BloombergよりDailyFXが作成。
S&P500指数の見通し
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 3% | -7% | -2% |
週次 | 30% | -17% | 2% |
VIX指数とS&P500は逆の動きをする傾向があり、VIX指数が上昇、投資家心理が悪化する局面では、S&P500指数は下落する可能性が高い。一方、FRBの利上げ終了観測が高まる等、VIX指数が低下した場合、S&P500指数が上昇することが見込まれる。
S&P500指数は、FRBの金融政策不透明感、米国債の需給悪化等を背景とした米国債利回りの上昇を受け、一時7月10日安値4,390レベルを下方ブレイクしたものの、その後反発している。
しかしながら、MACDラインは下向きかつシグナルラインを下回っており、S&P500の下落の勢いは衰えていない。テクニカル面では、S&P500指数の弱気シグナルが点灯している。
更にジャクソンホール会議に加え、中国不動産セクターを巡る不確実性が高まる中、S&P500指数の更なる下落が視野に入る。3月中旬から7月末までのS&P500指数の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント38.2%水準4,302レベルでサポートされるかに注目。
一方、FRBの利上げ終了の可能性が高まり、S&P500指数がレジスタンス転換している20日指数移動平均線(現在4,457レベル)を上方ブレイクするかに注目。ブレイクした場合、S&P500指数の下落トレンド終了の可能性が高まる。
S&P500日足チャート

資料:Trading View



新たなレポートの配信等はtwitterアカウント@DailyFXJapanで確認できます。
-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著