原油の需給引き締まりが示されたものの、米国債格下げによるリスクオフの動き、ADP雇用報告の結果を受け、FRBの利上げ終了が遠のいたとの思惑から、原油価格は下落した。米国債ショックの影響、そして4日米国雇用統計が原油価格の変動要因になることを見込むが、今後の見通しは?



サマリー
- 原油需給引き締まりも米国債格下げ・ADP雇用報告の結果を受け、原油価格下落
- 米国債ショック、米国雇用統計が原油価格の変動要因
- WTI原油の見通し
原油需給引き締まりも・・・
WTI原油価格は、米国原油在庫が大幅に減少したものの、大手格付機関フィッチ社による米国債の格下げを受け、安全資産を求める動きが強まったことから、リスク資産であるWTI原油は下落した。しかしながら、筆者は米国債の影響は短期的なものにとどまると見込んでいる(「米国債ショック!米国債が格下げ。金融市場の見通しは」参照)。

資料:Trading Economics
加えて、米国ADP雇用報告にて、民間雇用者数が大幅に増加、米国労働市場が底堅く推移していることを受け、FRBの利上げ停止が遠のいたとの見方から米ドルが上昇したことも、原油価格の下落要因となった。WTI原油価格は米ドル建てで決定されていることから、USDが安い(高い)ほど原油が多く(少なく)買えるため、USD下落(上昇)時には原油価格が上昇(下落)する傾向がある。
需給の引き締まりは原油価格のサポート要因であるが、当面は米国債格下げの影響及び、FRBの金融政策に対する思惑が原油価格の変動要因になろう。FRBの金融政策を占う上で、4日発表の米国雇用統計が重要である。
事前の市場予想は、非農業部門雇用者数は20万人増に減速(前月は20.9万人増)、平均時給の前年と比べた伸びは4.2%に鈍化(前月は4.4%増)である。事前予想通りに米国雇用市場が徐々に減速していることが示された場合、FRBによる利上げ終了が近いとの見方が一段と強まり、原油価格をサポートする可能性がある。

資料:Trading Economics
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 21% | -12% | -1% |
週次 | 8% | -11% | -4% |
原油価格見通し
WTI原油価格は、6月後半に67ドル台まで下落後反転し、80ドル台(1バレル当たり)に上昇した。しかしながら、米国債格下げ及び強いADP雇用報告の結果を受け、原油価格は79ドル台に下落している。ただし、6月28日を起点とする短期のサポートラインは下回っておらず、テクニカル面では原油価格の上昇トレンド継続を示唆している。
4日米国雇用統計にて、米国雇用市場の軟化が示された場合や米国債格下げのショックが和らいだ場合、80ドル台を回復、上昇圧力が強まり、昨年12月以降のレジスタンスである83.49ドルが視野に入る。
一方、米国雇用統計が事前予想を大幅に上回る結果であった場合や、米国債格下げが米国信用力低下、米国債金利一段高となった場合は注意が必要である。その場合、金利上昇に伴い景気減速懸念が高まり、原油価格は下落、現在78.9ドルにある短期サポートラインでサポートされるかに注目。下方ブレイクすると、上昇トレンド終了が明確になり、原油価格の4月から5月の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント61.8%水準77.54ドルへの下落が視野に入る。
WTI原油価格日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著