雇用統計、OPECプラス、債務上限、WTI原油、FRB、金融政策、テクニカル―トーキングポイント



米国債務上限停止法案が米国上下院で可決した。投資家のリスクセンチメントの重荷となっていた債務上限問題に対する懸念が解消したことは、リスク資産である原油価格にとってプラスである。
今週末はOPECプラス会合に加え、米国雇用統計が発表される。水曜日はJOLTs求人件数、木曜日はADP雇用統計、新規失業保険申請件数が発表され、米国労働市場の堅調さを示唆する内容であった。一方、FRB高官からは6月FOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げを一旦停止する発言が相次いでいる。
2日の米国雇用統計では、失業率は小幅に上昇、非農業部門雇用者数の伸びは減少が見込まれている。しかしながら、今週の米国雇用関連指標は労働市場の堅調さを示したため、米国雇用統計が市場予想を上ぶれることに対する警戒感は既に強くなっており、大きく上ぶれない限り、FRBの一段の金融引き締め観測は高まりにくいと見込む。金利の付かない資産である原油は、米国金利上昇時には相対的魅力度が低下することから米ドル建ての原油価格の低下要因になる。一方、米国金利低下時には相対的魅力度が上昇することから米ドル建ての原油価格が上昇要因になる。FRBの一段の金融引き締め観測、米国金利の上昇余地が限定的であることは、原油価格のサポート要因であろう。
米国雇用統計の事前予想値と前回値

OPECプラス会合では、ロシアとサウジアラビアの間で追加減産を巡って意見が分かれている。追加減産を4月のように決定した場合、原油価格の上昇要因になる一方、追加減産が見送られた場合、需給の緩みから原油価格の下落要因になりうる。
4月追加減産決定時のWTI原油価格の動き

資料:Trading View
原油価格のテクニカル分析:売られ過ぎからの調整
WTI原油価格の4時間足チャートで、一時RSIは売られ過ぎを示唆する30を下回り、21期間移動平均線からの乖離率も-5%を超過した後、売られ過ぎの水準から反転調整し、現在は70ドル前後で推移している。
WTI原油価格4時間足チャート




資料:Trading View
しかしながら、日足チャートで、9,20、50、200日指数移動平均線は下向きかつ、下から順に並ぶ弱気の「逆パーフェクトオーダー」が引き続き成立している。テクニカル面では、引き続き弱気であるが、本日の米国雇用統計及び週末のOPECプラス会合が、当面の原油の価格変動要因になろう。下落する場合、米エネルギー省から戦略石油備蓄(SPR)補充のための原油購入観測が高まる67ドルが水平サポートラインとして機能するかに注目。下方ブレイクした場合、3月以来の65ドル割れが視野に入る。一方、OPECプラス会合で追加減産が決定された場合や米国雇用統計にて労働市場の減速が示され、米国金利が低下した場合、原油価格が上昇する可能性がある。その場合、水平レジスタンスである73.21ドルへの上昇が視野に入る。
WTI原油価格日足チャート




資料:Trading View
-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著