WTI原油、雇用統計、ゴールデンクロス、FRB―トーキングポイント



米金利上昇も原油価格は堅調
ADP雇用報告など米国雇用指標は労働市場の力強さを示し、米国利上げ期待が高まり、米国金利が上昇した。金利上昇は景気下押し圧力となり、原油価格の下落要因となるが、米国金利上昇下でも原油価格は前日比で概ね横ばいであった。
背景として、米国(EIA)の原油及びガソリンの週次在庫量変化が挙げられる。ドライブシーズンに伴うガソリン需要等を背景に、在庫は減少した。加えて、原油はロシアとサウジアラビアが減産・原油価格安定に向けて協調姿勢を示していることも価格のサポート要因になっている。
原油・ガソリン在庫量変化


雇用統計では平均時給に注目
7日金曜日は米国雇用統計が公表される。金融市場では、昨日の底堅い雇用関連指標を受け、FRBによる利上げ織り込みが進んでいる。米国雇用統計は、失業率は3.6%に低下、非農業部門雇用者数は22万5000人増に減速、平均時給は4.2%に低下することが見込まれている。
特に平均時給(前年比)の動向が重要であろう。昨日のADP雇用報告でも民間雇用者数は増加したものの、賃金の鈍化が示された。本日の雇用統計でも平均時給の減速が確認できるかに注目。非農業部門雇用者数が増加した場合でも、平均時給が減速した場合は、賃金上昇に伴うインフレ圧力が緩和するとの見通しから、FRBの利上げ織り込みが後退する可能性がある。一方、雇用者数も予想より減速せず、平均時給も加速を示した場合、FRBが示唆する年内2回利上げに向け金融市場が一段と織り込みを進展させることを想定され(現在約1.5回)、米国雇用統計の動向が原油価格の動向を左右しよう。

原油価格見通し
原油価格は、4月以来初めて終値ベースで50日指数移動平均線を上抜け、上昇圧力が増している。9日指数移動平均線が20日指数移動平均線を上抜ける強気の「ゴールデンクロス」も成立している。また、50日指数移動平均線を上抜けたことで、下落トレンドからの反転を示唆する逆ヘッドアンドショルダー(逆三尊)が成立しており、テクニカル面では強気のシグナルが点灯している。
米国雇用統計にて平均時給の減速が確認された場合や、非農業部門雇用者数変化が概ね市場予想通りに減速した場合、FRBの利上げ織り込みが後退、水平レジスタンス73.21ドルへ向けて上昇することを見込む。
一方、平均時給が加速するなどFRBによる利上げ織り込みが一段と進展した場合、心理的節目である70ドルでサポートされるかに注目。下方ブレイクした場合、水平サポートライン67ドルが次の下値の目途となる。
WTI原油価格日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著