米国小売売上高が公表され、米国GDPの7割を占める個人消費が堅調に推移していることが明らかになった。米国債利回りの上昇、FRBの利上げ織り込みが進展する中、ナスダック100及びNYダウの今後の見通しとは



サマリー
- 底堅い労働市場を受け、米小売は力強い結果
- 米国金利上昇、米銀格下げリスク、軟調な中国景気を受け、米国株は下落
- NASDAQ100指数、NYダウ指数の見通し
FRBの利上げ織り込み進展
米国小売売上が公表され、前月比+0.7%と前月から伸びが加速した。また、米ホームセンター大手ホーム・デポの第2四半期決算が、売上高、1株利益共に事前の市場予想を上回り、小売売上同様、FRBの利上げを受けても、米国の個人消費が堅調に推移していることを示した。小売売上等の結果を受け、FRBの利上げ終了との見方が後退、利上げ織り込みの進展に伴い米国債利回りが上昇したことを受け、米国株は下落した。米国債利回りの上昇トレンドに衰えが見えない。加えて、大手格付機関フィッチ社が米銀の一部格下げリスクを警告したことを受け、金融株が大きく下落した。また、中国経済指標が軒並み低調であったことを受け、原油価格が下落したことから、エネルギーセクターを中心に米国株は下落した。
米国2,5,10,30年債利回り

資料:Trading View。8月9日以降の利回りの動き。
金融市場での米国の政策金利予想は概ねFRBと一致している。年内据え置きが優勢であるものの、年内あと1回の利上げを30%強織り込んでいる。米国労働市場は底堅く推移しており、今後も個人消費を中心に堅調に推移していく可能性がある。一方、最近の米国インフレ率上昇の主要因である家賃と関係の深い住宅価格は急減速しており、今後の家賃の鎮静化、そして米国のインフレ鈍化が継続することを見込む。そのため、金融市場における米国の政策金利の一段の利上げ織り込み余地は限定的であり、FRBの利上げ終了は近いと予想する。米国のGDPの7割を占める個人消費が堅調に推移する中、米国株の重荷であった利上げ終了が近付いていることは、中長期的な米国株のサポート要因となろう。

資料:Bloomberg、FREDよりDailyFXが作成。
ナスダック100指数の見通し
ナスダック100指数の日足チャートで、上昇トレンドからの反転を示唆する「ダブルトップ」パターンの示現後、20日指数移動平均線を下方ブレイクし、同移動平均線がレジスタンス転換している。RSIも弱気を示唆する50割れに転換している。米国の堅調な個人消費、インフレ鈍化、FRBの利上げ終了が近いことは、中長期なナスダック100指数のサポート要因になることを見込む。しかしながら、テクニカル面で弱気シグナルが点灯していることに加え、米国債利回り上昇に歯止めが掛からない中、ナスダック100指数の更なる下落が視野に入る。6月26日安値かつ75日指数移動平均線が位置する14,687ポイントでサポートされるかに注目。下抜けると、5月以降のナスダック100指数の連続する高値・安値の切り上がりが途絶え、上昇トレンド終了の可能性が一段と鮮明になる。
一方、20日指数移動平均線(現在15,286ポイント)がナスダック100指数の当面のレジスタンスになろう。上抜け、短期的な上昇圧力が強まり、弱気な「ダブルトップ」パターンの頭である15,932レベルを上方ブレイクすると、弱気パターンが無効となり、5月以降の上昇トレンド再開が視野に入る。
ナスダック100指数日足チャート

資料:Trading View
NYダウ指数の見通し
変動 | ロング | ショート | 建玉 |
日次 | 10% | -4% | 4% |
週次 | 49% | -24% | 7% |
NYダウ指数の日足チャートで、サポートラインとして機能してきた20日指数移動平均線を下方ブレイクし、下落圧力が鮮明になっている。また、RSIは下落圧力の強まりを示唆する50割れに転換している。テクニカル面の弱気シグナルに加え、米国金利の上昇トレンドに衰えが見えない中、NYダウ指数の更なる下落が視野に入る。8月頭にかけてのNYダウの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント38.2%水準34,498レベルへの下落が視野に入る。
一方、FRBの利上げ終了が近いとの見方が強まり、米国金利の上昇トレンドが終了した場合、米国景気が個人消費を中心に堅調に推移する中、20日指数移動平均線を上方ブレイクするかに注目。上方ブレイクすると、8月1日高値35,679ポイントをトライする可能性が高まる。
NYダウ日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著