オーストラリアからの液化天然ガス(LNG)の供給リスクが意識され、天然ガス先物価格が急騰した。当面の天然ガス価格の動向は米国インフレ指標に左右されることが見込まれるが、天然ガス価格の見通しとは



サマリー
- 供給リスクの高まりを受け、天然ガス価格急騰
- ヘッジファンドポジションは、一段と天然ガス価格が上昇する可能性
- 原油に対する天然ガスの割安感継続
- 天然ガス価格の見通し
天然ガス、供給リスク高まる
天然ガス先物価格が急上昇している。オーストラリアで最大規模の液化天然ガス(LNG)生産施設にて労働者がストライキを起こす可能性が高まったことが背景にある。これらの施設(シェブロン、ウッドサイド・エナジー・グループ)からのLNGの月間輸出量は世界全体の11%に相当する可能性があると言われている。天然ガスの供給リスクが意識され、米国の天然ガス先物価格(NG1)は前日比6.5%を超える上昇となった。欧州の天然ガス先物価格は一時40%近く上昇した。
米国インフレ指標に注目
当面の天然ガス価格の動向は、10日米国消費者物価指数、11日米国生産者物価指数に注目が集まる。インフレ鈍化が確認された場合、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ終了との見方が強まり、天然ガス価格のサポート要因となる可能性がある。世界景気の重荷となってきたFRBによる利上げ終了は、世界景気の減速懸念を和らげ、天然ガスに対する需要が増大するとの思惑から価格の上昇要因となる傾向がある。
天然ガスのヘッジファンドポジション動向
昨年後半から今年3月にかけての天然ガス価格の急落に合わせてヘッジファンド等(投機筋)は天然ガスのショートポジション(天然ガス先物の売り持ち、価格の下落要因)を急速に積み上げた。4月以降、ショートポジションの削減(天然ガス価格の上昇要因)を行っているものの、依然として大規模なショートポジションが蓄積している。ヘッジファンドが天然ガス価格の先行きに強気になり、ショートポジションを一段と削減(天然ガス先物の売り持ち解消)、もしくはロングポジションを積み増し(天然ガス先物の買い持ち)、天然ガス価格が上昇する可能性を示唆している。

資料:BloombergよりDailyFX.comが作成。
原油対比の割安感継続
天然ガス価格は4月以降緩やかに上昇しているものの、同じエネルギー源である原油も7月以降上昇しており、天然ガスと原油価格の乖離は依然として大きい。天然ガス価格の水準は原油価格と比べて低く、原油に対して天然ガスが割安であることを示唆しており、天然ガス価格が上昇する可能性がある。
WTI原油&天然ガス(NG1)日足チャート

資料:Trading View
天然ガス価格見通し
天然ガス価格(NG1)は、6月後半以降レンジ相場で推移していたが、レンジの上限2.793レベルを上方ブレイクし、上昇トレンドへ転換した可能性が高まっている。MACDラインもシグナルラインを上抜け、強気の「ゴールデンクロス」が成立している。
10日米国消費者物価、11日米国生産者物価指数を受け、FRBの利上げ終了の可能性が高まった場合、3月高値3.03レベルを上抜け、上昇トレンドへの転換が一段と明確になることを見込む。その場合、2022年12月から2023年2月までの天然ガス価格の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント23.6%水準の3.180レベルが視野に入る。
米国インフレ指標がインフレの高止まりを示し、FRBの更なる利上げの可能性が高まった場合、レンジの上限であった2.793レベルがサポート転換したかに注目。サポートされた場合、天然ガス価格の相場の地合いが強いことを投資家に印象付けよう。
天然ガス価格(NG1)日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著