米FRBによる利上げ終了が近いことは、リスク資産である新興国通貨(MXNやZAR)のサポート要因である。メキシコペソや南アフリカランドの通貨先物ポジションや実質金利の動向、そして、これらの通貨の見通しは?



サマリー
- FRBの利上げ停止は、MXNやZARといった新興国通貨にプラス
- MXNやZARの高い実質金利水準は通貨をサポート
- このような中、メキシコペソ、南アフリカランドの見通しは?
FRBの利上げ停止が近付く
FOMC(米連邦公開市場委員会)では利上げが決定され、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が更なる利上げを強く示唆しなかったことから、金融市場では、来年初めにかけて利下げを織り込んでいる。FRBの金融引き締め、利上げは新興国通貨を含むリスク資産からの資金流出を招くため、利上げ停止、利下げの可能性は新興国通貨のサポート要因である。

資料:Bloomberg、OIS市場データよりDailyFXが作成。
高い実質金利
実質金利(名目10年国債利回り―消費者物価)は為替の変動要因の一つである。メキシコや南アフリカでは、高インフレを背景に利上げを実施してきた結果、実質金利は魅力的な水準になっている。高い実質金利の水準は、メキシコペソや南アフリカランドをサポートする可能性がある。

資料:Trading EconomicsよりDailyFXが作成。実質金利は各国10年国債から消費者物価指数(前年比)を引いて算出。
メキシコペソ・南アランド:ヘッジファンドポジション
ヘッジファンド等(投機筋)のMXN及びZAR通貨先物ポジションでは、MXNの買い持ちが優勢(ネットロング、ロングの枚数>ショートの枚数)である。しかしながら、過去と比べてネットロングの水準は高くなく、一段とヘッジファンドがMXNに対して強気になり、ロングポジション(MXNの買い持ち)を積み増す余地がある。
ヘッジファンドはZARに対して極端に弱気である。ZAR通貨先物のネットショート(ロング<ショート)の水準は過去最高水準である。南アフリカ経済の低迷、ロシアに対する武器供与疑惑、主要貿易相手国である中国の景気低迷等が背景にあろう。しかしながら、小幅であるものの、ヘッジファンドはショートポジションを削減しており、ZARに対する見通しを強気に転じつつある。FRBの利上げ終了が視野に入り、投資家のリスクセンチメントが改善する中、高い実質金利水準を背景に一段とショートポジション(ZARの売り持ち)を削減し、ZAR高に寄与する可能性がある。

資料:BloombergよりDailyFXが作成
メキシコペソ/円の見通し
メキシコペソの対円の日足チャートは、3月後半以降、連続する高値と安値が切り上がっており、上昇圧力が強いことを示唆している(ダウ理論)。また、9,20,50,200日指数移動平均線が上向きかつ、上から順に並ぶの強気の「パーフェクトオーダー」が成立している。7月5日高値8.511レベルを再度更新しており、終値ベースで更新した場合、更に上昇の勢いが鮮明化することを見込む。
日米欧の中央銀行の利上げ終了/緩和環境継続が視野に入る中、8.511レベル更新後、2014年11月高値8.721レベルが視野に入る。
一方、メキシコペソの下値の目途として、50期間指数移動平均線(現在8.195レベル)でサポートされるかに注目。下方ブレイクすると、3月以降のMXN高JPY安トレンドが終了した可能性が高まる。
MXNJPY日足チャート

資料:Trading View
南アフリカランド/円の見通し
南アフリカ経済は電力不足に伴う停電により経済活動が抑制され、南アランドの重荷になっていた。電力不足問題が最悪期を過ぎた可能性を南アの電力相は示唆しており、南アフリカ経済、通貨ZARにとってプラス要因である。テクニカル面でも、2022年12月末高値7.888レベルを上方ブレイクし、ZAR高トレンドが一段と強まっている。また、ZAR高トレンドを示唆する「陽の包み足(抱き線)」が示現している。
主要中銀の金融引き締め終了が近付く中、高い実質金利水準を背景に、2022年6月から2023年5月の南アフリカランドの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント61.8%水準の8.085レベルをトライしよう
一方、リスクとして、ロシアへの武器供与疑惑に伴う制裁措置への懸念、主要貿易相手国である中国の景気減速があげられる。これらのリスクが高まった場合、フィボナッチリトレースメント38.2%水準7.635、更に南アランドの下落の勢いが衰えなかった場合、7月7日安値7.432レベルへの下落が視野に入る。
ZARJPY日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著