米FRBによる利上げが最終局面に近付いている。FOMCにて、一段の利上げが強く示されなかった場合、金融市場はその先の利上げ停止、利下げを徐々に織り込みにいく可能性がある。FRBの利上げ停止は、投資家のリスクセンチメント改善を通してメキシコペソ(MXN)や南アフリカランド(ZAR)といった新興国通貨にプラスに働く可能性があるが、これらの通貨の見通しは?



サマリー
- FRBの利上げ停止が近付く
- FRB利上げ停止は、新興国通貨にプラス
- このような中、メキシコペソ、南アフリカランドの見通しは?
FRBの利上げ停止が近付く
米国の利上げが最終局面に入りつつある。25-26日開催の米FOMC(米連邦公開市場委員会)では、FRB(米連邦準備制度理事会、中央銀行に相当)は利上げを決定するものの、最後の利上げになるとの見方が強まっている。現在、金融市場では、今回の利上げ後、あと1回の利上げ予想は30%程度にとどまっている。インフレが鈍化しつつある中、FOMC後にFRBが追加の利上げを強く示唆しなかった場合、金融市場はFRBの利上げ停止、更にはその先の利下げを織り込む可能性がある。

資料:Bloomberg、OIS市場データよりDailyFXが作成。
利下げ実施時の新興国通貨
中央銀行(特にFRB)による利上げ、金融引き締めは、リスク資産である新興国通貨市場や株式市場からの資金流出を招く一方、FRBによる利上げ停止、そして利下げは、投資家のリスクセンチメントの改善等を背景に新興国通貨を含むリスク資産の追い風になる傾向がある。2000年以降、FRBが利下げを実施した年は計7年あり、その内、新興国通貨のパフォーマンスは5年でプラスになっている。FRBの利上げ停止が近付く中、過去同様、新興国通貨市場に資金が流入する可能性がある。
米国政策金利及び新興国通貨パフォーマンス

資料:BloombergよりDailyFXが作成。新興国通貨パフォーマンスは利回りの高い8つの新興国通貨を等ウェイトでロング、米ドルをショートし、新興国の3カ月国債に投資をした場合の米ドル建パフォーマンス。
メキシコペソ/円の見通し
メキシコペソの対円の日足チャートは、3月後半以降、連続する高値と安値が切り上がっており、上昇圧力が強いことを示唆している(ダウ理論)。また、9,20,50,200日指数移動平均線が上向きかつ、上から順に並ぶの強気の「パーフェクトオーダー」が成立している。FOMC(25-26日開催)にて今後の利上げ停止との思惑が広がった場合や、日銀金融政策決定会合(27-28日開催)にて当面の金融緩和環境維持が示された場合、リスクオンの流れが強くなり、7月5日高値8.511レベルを更新、更に上昇の勢いが衰えなかった場合、2014年11月高値8.7210レベルが視野に入る。
一方、FOMCで一段の利上げや、日銀会合で早期の大規模金融政策修正が示唆された場合、リスクオフの流れが強まり、50期間指数移動平均線(現在8.1505レベル)でサポートされるかに注目。下方ブレイクすると、3月以降のMXN高JPY安トレンドが終了した可能性が高まる。
MXNJPY日足チャート

資料:Trading View
南アフリカランド/円の見通し
南アフリカ経済は電力不足に伴う停電により経済活動が抑制され、南アランドの重荷になっていた。電力不足問題が最悪期を過ぎた可能性を南アの電力相は示唆しており、南アフリカ経済、通貨ZARにとってプラス要因である。テクニカル面でも、2022年12月末高値7.888レベルを上方ブレイクし、ZAR高トレンドが一段と強まっている。FRBの利上げ停止、その先の利下げが視野に入りつつある中、2022年6月から2023年5月の南アフリカランドの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント61.8%水準の8.085レベルをトライしよう
一方、リスクとして、ロシアへの武器供与疑惑に伴う制裁措置への懸念、主要貿易相手国である中国の景気減速、FRBの一段の利上げ、日銀の金融政策修正があげられる。これらのリスクが高まった場合、フィボナッチリトレースメント38.2%水準7.635、更に南アランドの下落の勢いが衰えなかった場合、7月7日安値7.432レベルへの下落が視野に入る。
ZARJPY日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著