主要中央銀行トップが一堂に会するジャクソンホール会議が24-26日に開催。日米欧の金融政策の転換が近付く中、今年は特に注目度が高いが、今後のドル円、ユーロドルの見通しとは



サマリー
日米欧の金融政策転換点が近い
ジャクソンホール会議が8月24~26日に開催される。ジャクソンホール会議は、各国中央銀行総裁や経済学者が集う経済シンポジウムであるが、中銀トップからの今後の金融政策に関するコメントが金融市場の大きな変動要因となってきた。
特に、今年は市場の注目度が高い。米国では、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策転換点が近付いている。金融市場では年内利上げと据え置きで意見が分かれており、パウエルFRB議長の発言に注目が集まる。ECB(欧州中央銀行)は、景気減速懸念が高まる中、今後の利上げは「データ」次第としており、ラガルドECB総裁の発言に注目が集まる。欧米の中央銀行は、インフレ抑制に向けて積極的な利上げを実施し、金融市場の変動要因となってきたが、利上げサイクルの終了が視野に入っている。
日本銀行にも注目である。日銀は7月の会合でイールドカーブコントロール政策(YCC政策)の修正に踏み切った。植田日銀総裁が、今後の金融政策、そして長年のデフレからの脱却の兆しが見えつつある中、インフレ見通しについてどのような判断をしているかに注目が集まる。また、円安が進行する中、足元の為替市場に関する発言が見られるかに注目。日米欧の金融政策が転換点を迎えつつある中、ジャクソンホールに向けた各国金融政策に対する思惑、そしてジャクソンホールでの中央銀行総裁の発言が、これから8月末に向けて為替市場の変動要因になることが見込まれるが、ドル円及びユーロドルの見通しは?個人トレーダーのセンチメントはドル高円安、ユーロ高ドル安を示唆している。詳しく見てみたい。
ドル円の個人トレーダーセンチメント
逆張り指標として機能する傾向のあるIG顧客センチメント(IGCS)によると、USDJPYを取引する個人トレーダーの約22%がネットロング(USDJPYを買い持ち、ドルに強気)にしている。IGCSは逆張り指標として機能することを勘案すると、半分以上の持ち高はネットショート(ドルに弱気)に傾いているため、ドル高円安が進展する可能性が示唆されている。一方、昨日よりもネットショートのトレーダーの割合が増えている一方、先週からはネットショートのトレーダーの割合は減っており、まちまちである。このことを考えると、個人トレーダーのセンチメントはドル円に対して中立である。
IGCS:ドル円




資料:DailyFX.com IG顧客センチメント(IGCS)
米ドル円の見通し
ドル高円安が進展したものの、昨年10月から今年1月にかけてのドル円の値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント78.6%水準146.652レベルの上方ブレイクに失敗、145円台前半までドル安円高が進行している。日本の通貨当局からの為替介入や急速なドル高円安、そしてジャクソンホールを控えた警戒感等が背景にあろう。引き続き、ジャクソンホール会議のパウエルFRB議長や植田日銀総裁による発言への警戒感が為替市場の重荷となり、神経質な展開が継続、円高・円安どちらの展開も想定しておきたい。
ジャクソンホール会議が迫る中、金融市場がFRBの更なる利上げを織り込みにいく過程では、フィボナッチ78.6%146.652レベルの再トライ、上方ブレイクが視野に入る。
一方、FRBの利上げ終了との思惑が高まった場合や植田日銀総裁が金融政策の更なる修正の可能性について言及して場合、ドル安円高が進展する可能性がある。その場合、8月3日高値143.888レベルへのドル安円高の進行が視野に入る。
USDJPY日足チャート

資料:Trading View



ユーロドルの個人トレーダーセンチメント
逆張り指標として機能する傾向のあるIG顧客センチメント(IGCS)によると、EURUSDを取引する個人トレーダーの約59%がネットロング(EURUSDを買い持ち、ユーロに強気)にしている。IGCSは逆張り指標として機能することを勘案すると、半分以上の持ち高はネットロング(ユーロに強気)に傾いているため、ユーロ安ドル高が進展する可能性が示唆されている。また、昨日、先週と比べてネットロングのトレーダーの割合が増えている。このことを考えると、ユーロ安ドル高が進展する可能性がある。
IGCS:ユーロドル

資料:DailyFX.com IG顧客センチメント(IGCS)
ユーロドル(EURUSD)見通し
月末から7月18日までのユーロドルの値動きに基づいたフィボナッチリトレースメント61.8%水準1.088レベルを下方ブレイクし、ユーロ安ドル高圧力が強まっている。
テクニカル面の弱気シグナルに加え、ラガルドECB総裁の焦点はインフレから景気に徐々にシフトしており、ジャクソンホールを控える中、ユーロ安トレンドの継続を見込む。7月6日安値1.083レベルを下方ブレイクした場合や、フィボナッチ61.8%1.088レベルがレジスタンス転換したことが確認された場合、ユーロ安トレンドが一段と鮮明になろう。
ユーロドル(EURUSD)日足チャート




資料:Trading View
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--- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著