※2023年5月17日15時31分更新
金、金/ドル - 値動き
- 金相場は上昇一服の兆候が見える
- FRB当局者のタカ派発言により、今年の利下げ観測が見直されつつある
- 金/ドルの見通しと注目すべき重要な水準とは？
米国の債務上限交渉が明らかに進展し、米連邦準備制度理事会（FRB）当局者がタカ派的な発言をしたことで、金価格上昇の熱は少し冷めている。現在、焦点は主要なサポート水準に移っており、これを下方ブレイクすると、金先物相場の上昇がピークに達した可能性が高まる。
金/ドルは、米国債のデフォルト（債務不履行）に対する懸念と、FRBの利上げ停止期待から、ここ数週間、高値圏で推移している。しかし、これらの要因に対する市場の見方は変わりつつあるようだ。ジョー・バイデン米大統領は16日、ホワイトハウスで共和党のトップ議員らと連邦債務上限問題を巡る協議を行った後、「我々はデフォルトの回避と世界のリーダーとしての米国の責任を果たすため、今後も前進していくと確信している」と述べた。
金/ドル 日足チャート
チャート作成：マニッシュ・ジャラディ、資料：TradingView
FRB当局者のタカ派発言を受け、米国債利回りはここ数日、上昇している。リッチモンド地区連銀のトーマス・バーキン総裁は、インフレ率を下げるために必要であれば、さらに金利を引き上げることに「抵抗はない」と述べた。クリーブランド地区連銀のロレッタ・メスター総裁は、FRBはまだ金利を安定的に維持できる段階にはないとの考えを示した。先週には、ニューヨーク地区連銀のジョン・ウィリアムズ総裁が、FRBは利上げを終えていないかもしれないと発言している。
金/ドル 月足チャート
チャート作成：マニッシュ・ジャラディ、資料：TradingView
FRBは今月初め、予想通り25ベーシスポイント（bp）の利上げを実施したが、先行きに関して利上げ停止の可能性を示唆した。市場は現在、6月の米連邦公開市場委員会（FOMC）会合でさらに25bpの利上げが実施される確率を18％と見ている。CMEグループのフェドウォッチによると、年末までに75bpの利下げを実施する確率は、1週間前の42%から35%に低下している。
金/ドル 週足チャート
チャート作成：マニッシュ・ジャラディ、資料：TradingView
テクニカルチャートでは、ここ数カ月、長期の時間枠チャートでの勢いが気になるところである。3月28日、4月16日、4月24日、そして直近の5月10日の記事をご参照ください。しかし、ブレイクアウトの確認には至っておらず、つまり、日中チャートにおいても、金相場は重要なサポートを割り込んでいない。例えば、金/ドルは、240分足チャートにおいて、4月中旬の安値1,970と200期間移動平均線という重要なサポートを上回る水準を維持している。
金/ドル 240分足チャート
チャート作成：マニッシュ・ジャラディ、資料：TradingView
しかし、16日に移動平均線を割り込んだのは、相場の上昇に亀裂が入り始めていることを示している。これは、（トレンド/モメンタム指標に基づく）足の色分けされた240分のローソク足チャートでも確認でき、3月以来、初めて、赤いローソクが示現し始めた。つまり、弱気局面が到来している可能性が示唆されている。さらに、日足チャートで金/ドルは、もみ合い局面に入っている。5月初旬に高値2,072を付けたのはもみ合い局面での一時的な動きで、新たな上昇の始まりではないことに留意したい（その後の値動きで、それは確認された）。
金/ドル 日足チャート
チャート作成：マニッシュ・ジャラディ、資料：TradingView
公平に見て、1,970に位置するサポートを割り込まない限り、金/ドルはせいぜい横ばいの動きにとどまる可能性が高い。しかし、1,970を下方ブレイクすると、1,925に向けて下降するリスクが顕在化する可能性がある。
このチャートでは、青いローソク足は強気が優勢な局面、赤いローソク足は弱気が優勢な局面を示しています。黒いローソク足はもみ合い局面を表していますが、時にはトレンドの終焉を形成することもあります。
注：ローソクの色は予測ではなく、単にその時のトレンドを示しています。実際、ローソクの色は次のローソクの際に変化することがあります。200期間移動平均線付近やサポート/レジスタンス付近、もみ合い/不安定な値動きの際は、本来のトレンドとは異なる、騙しのパターンが発生する可能性もあります。筆者は情報の正確さを保証しかねます。また、過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスを示唆するものではありません。本情報のご利用は、自己責任にてお願いします。
--- DailyFX.com ストラテジスト マニッシュ・ジャラディ著
ジャラディ氏に連絡するには、Twitterで @JaradiManish までお願いいたします。
