米国債格下げに伴い、リスクオフの流れが強まっているものの、安全資産である金価格が下落している。背景には米国10年債利回りが関係。今後の米国10年債利回り及び金価格の見通しは?



サマリー
- 米金利上昇が金価格下落を主導
- 米国10年債利回りの見通し
- 金価格は「ダブルトップ」パターンが示現
米国債ショックでリスクオフも金価格下落
大手格付機関フィッチ社が、米国債を格下げし、リスクオフの流れが続いているものの、安全資産である金価格は下落している。金価格下落の背景として、米金利上昇、そして金利上昇に伴う米ドル高があげられる。金利が付かない金は、米国金利上昇局面で相対的な魅力度が低下し、金価格が下落する傾向がある。また、金の価格は米ドル建てで決定されていることから、USDが高いほど、金を買える量が少なくなるため、USD上昇時には金価格が下落する傾向がある。米金利上昇の背景として、米国債の発行増に加え、FRBの金融政策見通しがある。FRBは年内あと1回の利上げを示している一方、金融市場は据え置きと利上げで意見が分かれている(据え置きが優勢)。
米国金融政策、そして金価格にとって重要な米国雇用統計が4日発表された。非農業部門雇用者数は18.7万人増(事前予想20万人)、平均時給(前年比)は4.4%増(予想4.2%)となり、強弱入り混じる結果であった。非農業部門雇用者数が減少したことから、FRBの利上げ停止が近付いたとの見方が強まり、米国金利低下、金価格は上昇した。今後の米国10年債の動向が、金価格にとっても重要である。

資料:Trading Economics
米国10年債見通し
米国債の発行増、米国債格下げなどを背景に、米国10年債利回りが再び4%台に上昇している。FRBの金融政策に関して、金融市場は年内あと1回の利上げと据え置きで見方が分かれているものの、据え置きが優勢になっている。しかしながら、FRBは年内あと1回の利上げを示唆していることに加え、賃金は高止まりしており、FRBの利上げ織り込みが一段と剥落する余地は限定的と見込む。加えて、米国金利動向に敏感なヘッジファンド等(投機筋)は米国10年債利回りが上昇するとの見通しから、ショートポジションを積み上げている(米国10年債利回りの上昇要因)。金融市場の米国金融政策見通しやヘッジファンドの米国10年債先物ポジションは、米国10年債利回りが一段と上昇する可能性を示唆している。
米国10年債利回りと先物ネットポジション(2010年5月~)

資料:BloombergよりDailyFXが作成。
金価格見通し
金価格は、7月中旬に1,935ドル(1トロイオンス当り)のレジスタンスを上方ブレイクし、5月中旬~6月中旬の1,935ドル~1,985ドルのレンジ相場に回帰した。しかしながら、更なるレジスタンス1,985ドル突破をトライしたものの、上方ブレイクに失敗し、短期的な上昇トレンドの反転を示唆する「ダブルトップ」パターンが示現した。現在、レンジの下限1,935ドルで推移している。下限を下抜けると、下落圧力が一段と鮮明になる。また、MACDラインがシグナルラインを下抜ける弱気の「デッドクロス」が示現している。テクニカル面で弱気シグナルが点灯していることに加え、金価格と逆の動きをする傾向がある米国10年債利回りが一段と上昇する可能性があることから、1,935~1,985ドルから6月後半から7月前半のレンジ相場1,900~1,935ドルに移行することを見込む。
金価格(XAU/USD)日足チャート

資料:Trading View



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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著