米国株は年初来安値に接近しており、反転の兆しはない。本節では、ダウ平均(DJIA)、S&P500、ナスダック総合指数の3つのベンチマーク指数を使って、以下のような問いを試みる。現在の下降トレンドはどの程度進んでいるのか?これ以上の下落はあるか?重要な問いとして、今後数カ月間のトレンドはどうなる可能性があるか?
しかし、その前に、2022年の下落の背景を整理しておこう。
ダウ平均の今後の見通し
今年の下落は極端な買われ過ぎからの「正常化」過程である。年初、価格と200ヶ月移動平均線との差は過去最大となった(MMA、チャート参照)。
ダウ平均月足チャート

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長期移動平均線は、より大きなトレンドを示す指標として機能する傾向がある。特に、買われすぎや売られすぎの要因が変化・逆転した場合、価格は極端な買われすぎや売られすぎの状態から移動平均線に戻る傾向がある。200ヶ月移動平均と指数の乖離を見ると、ITバブル、世界金融危機(GFC)、新型コロナウイルス感染症の暴落はすべて極端な買い越しが先行したものである。
これは、指数が200ヶ月移動平均に向かって戻らなければならないということを意味するものではなく、200ヶ月移動平均が追いつくまで横ばいで推移する可能性がある。MACDは、ある意味、年初のトレンドがどれだけ伸びたかを示す目安になるが、楽観/悲観の度合いを定量化するのは、この指標の数値が無制限であることを考えると難しいだろう(上図参照)。
S&P500の今後の見通し
S&P500の場合、潜在的な下値の目処としては、200週移動平均線(WMA、現在は約3,585)が最初のクッションとしてかなり強力に作用しそうだ。コロナ前の高値3,394が強力なサポートラインとなりそうだ。200週移動平均線が急上昇していることから、3,394~3,585付近を維持し、その付近から反発する確率が高いと思われる。
S&P500月足チャート

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というのも、過去に下降トレンドが長期化した場合、200週移動平均線の傾きや平均値そのものが目安になったことがあるからだ。指数は移動平均線付近から、上昇時には反発する傾向がある(チャートの青矢印)。しかし、上昇トレンドの反転は、200週移動平均線の平坦化にともなう移動平均線の下抜けが先行することが多い(チャートの赤矢印)。ある意味、長期の平均が横ばいになることは、トレンドの「終了」と解釈することもできる。
ナスダック総合指数の今後の見通し
現在の下降トレンドがどの程度進んでいるかを知るには、相対力指数(RSI)が目安になる。過去2つの事例、ITバブルや世界金融危機の時期が2022年の下落期間と類似していたことから、米国の株価指数は下落の進行段階にある確率が高い(図表参照)。14ヶ月RSIが30付近になった際に、指数は反発した。現在、RSIは42前後である。
仮に反発したとしても、月足チャートの方向性指数(DMI)とが上昇・下降ともに25を下回っており、レンジ相場であることを示唆しているので、2020〜2021年のようなトレンド相場であると結論づけるのは時期尚早であろう。レンジ内では、-DMIが+DMIを上回っているため、若干の下降バイアスがかかる可能性がある。
ナスダック総合指数月足チャート

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